花明り


10519
掃き寄せて砂のまじれる葉を燃せば森の匂ひをたててくすぶる
ハキヨセテ スナノマジレル ハヲモセバ モリノニオヒヲ タテテクスブル

『埼玉風景』(埼玉風景同人会 1981.2) p.


10520
ルワンダのコーヒー匂ふゐながらにたのしむことの限界として
ルワンダノ コーヒーニオフ ヰナガラニ タノシムコトノ ゲンカイトシテ

『埼玉風景』(埼玉風景同人会 1981.2) p.


10521
あきらめて忘れて今は眠らむにおもたき腕を両脇に置く
アキラメテ ワスレテイマハ ネムラムニ オモタキウデヲ リョウワキニオク

『埼玉風景』(埼玉風景同人会 1981.2) p.


10522
きれぎれになりても生きむなど思ひ眠りしのちはゆくへ知られず
キレギレニ ナリテモイキム ナドオモヒ ネムリシノチハ ユクヘシラレズ

『埼玉風景』(埼玉風景同人会 1981.2) p.


10523
すきとほるガラス見をれば裏と表に分れしのちの遠き月日よ
スキトホル ガラスミヲレバ ウラトオモテニ ワカレシノチノ トオキツキヒヨ

『埼玉風景』(埼玉風景同人会 1981.2) p.


10524
なしがたき旅を思へばゆるやかにくだる煉瓦の道など見え来
ナシガタキ タビヲオモヘバ ユルヤカニ クダルレンガノ ミチナドミエク

『埼玉風景』(埼玉風景同人会 1981.2) p.


10525
方角のなき闇のなか昼間見し白梅ならむ花明りする
ホウガクノ ナキヤミノナカ ヒルマミシ シラウメナラム ハナアカリスル

『埼玉風景』(埼玉風景同人会 1981.2) p.