水中花


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窓にさす陽をカーテンにやはらげて何か吊りあふ思ひにゐたり
マドニサス ヒヲカーテンニ ヤハラゲテ ナニカツリアフ オモヒニヰタリ

『埼玉風景』(埼玉風景同人会 1982.2) p.


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音の無き時間ながれて石蕗を離れし蝶のいづくへ帰る
オトノナキ ジカンナガレテ ツワブキヲ ハナレシチョウノ イヅクヘカエル

『埼玉風景』(埼玉風景同人会 1982.2) p.


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等身の人形が笑ひし声かとも驚きやすく地下街をゆく
トウシンノ ニンギョウガワラヒシ コエカトモ オドロキヤスク チカガイヲユク

『埼玉風景』(埼玉風景同人会 1982.2) p.


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駅前の放置自転車神々に見放されたる病のごとし
エキマエノ ホウチジテンシャ カミガミニ ミハナサレタル ヤマイノゴトシ

『埼玉風景』(埼玉風景同人会 1982.2) p.


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スカーフの風によぢれてどこまでもつきて来るもの影のみならぬ
スカーフノ カゼニヨヂレテ ドコマデモ ツキテクルモノ カゲノミナラヌ

『埼玉風景』(埼玉風景同人会 1982.2) p.


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乱るるはわれのこころと思ふまで収穫終へしキャベツの畑
ミダルルハ ワレノココロト オモフマデ シュウカクオヘシ キャベツノハタケ

『埼玉風景』(埼玉風景同人会 1982.2) p.


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たれの手に作りたがへし水中花いつまでも咲かぬつぼみが青し
タレノテニ ツクリタガヘシ スイチュウカ イツマデモサカヌ ツボミガアオシ

『埼玉風景』(埼玉風景同人会 1982.2) p.