季春


10564
唆さるればたやすく動く君を知り才あることは寂しと思ふ
ソソノカサルレバ タヤスクウゴク キミヲシリ サイアルコトハ サビシトオモフ

『林鐘』(林鐘短歌會 1957.6) p.11


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何時来ても水無き川よ草深き橋をふたたび渡りて帰る
イツキテモ ミズナキカワヨ クサフカキ ハシヲフタタビ ワタリテカエル

『林鐘』(林鐘短歌會 1957.6) p.11


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保姆となりて豫後を働くといふ便り茶目な生徒なりしかば身に沁む
ホボトナリテ ヨゴヲハタラクト イフタヨリ チャメナセイトナリ シカバミニシム

『林鐘』(林鐘短歌會 1957.6) p.11


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幾日か咲き保ちたる紅椿あきらめし如く落ちはじめたり
イクニチカ サキタモチタル ベニツバキ アキラメシゴトク オチハジメタリ

『林鐘』(林鐘短歌會 1957.6) p.11


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夕立の晴れてひとしきり明るめりそのまま昏れむ今日と思ひし
ユウダチノ ハレテヒトシキリ アカルメリ ソノママクレム キョウトオモヒシ

『林鐘』(林鐘短歌會 1957.6) p.11


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水光り流るる澤の夕じめり今は帰らむ河口の街へ
ミズヒカリ ナガルルサワノ ユウジメリ イマハカエラム カコウノマチヘ

『林鐘』(林鐘短歌會 1957.6) p.11