来春


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ユトリロの街歩み来しごとくして霧にしめれるシヨールをたたむ
ユトリロノ マチアユミコシ ゴトクシテ キリニシメレル シヨールヲタタム

『林鐘』(林鐘短歌會 1957.6) p.11


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おもだかの花の水漬くと思へるに溝またぎゆきて振り返らざる
オモダカノ ハナノミヅクト オモヘルニ ミゾマタギユキテ フリカエラザル

『林鐘』(林鐘短歌會 1957.6) p.11


10572
帆をおろして闇に漂へるヨット見き霧はれゆけば朝凪ぎの海
ホヲオロシテ ヤミニタダヨヘル ヨットミキ キリハレユケバ アサナギノウミ

『林鐘』(林鐘短歌會 1957.6) p.11


10573
手をのべてたたしめくれき夢なればそのままいだきよせられゐたり
テヲノベテ タタシメクレキ ユメナレバ ソノママイダキ ヨセラレヰタリ

『林鐘』(林鐘短歌會 1957.6) p.11