さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

作品掲載資料一覧

ボランティアの方々にご協力いただき、大西民子について掲載されている雑誌等資料を調査しております。
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書名 発行年 発行月 号数 著者 項目 掲載
おおみや 1966(昭和41)年 2月 創刊号 26-27 大西民子 2.エッセイ ふるさとの歌 001
おおみや 1966(昭和41)年 4月 No.2 40-41 大西民子 2.エッセイ むらさきと古代住居 ふるさとの歌 002
おおみや 1966(昭和41)年 6月 No.3 36-37 大西民子 2.エッセイ ふるさとの歌 国鉄大宮工場の歌人たち 003
おおみや 1966(昭和41)年 8月 No.4 24-25 大西民子 2.エッセイ 埴輪・勾玉 ふるさとの歌 004
おおみや 1966(昭和41)年 12月 No.6 34-35 大野誠夫 3.評論 「無数の耳」の抒情 大野民子さんの人と文学 005
おおみや 1967(昭和42)年 4月 No.8 23 大西民子 1.短歌 (形成大宮歌会作品)キヌバリと呼ばるる魚のすきとほり何の気配に身をひるがえす 006
おおみや 1967(昭和42)年 4月 No.8 26-27 大西民子 2.エッセイ 女ともだち 007
おおみや 1967(昭和42)年 12月 No.12 40-41 大西民子 4.その他 リレー・ルポ駅伝競争④ 広場で 東武・大宮公園駅周辺 008
おおみや 1968(昭和43)年 2月 No.13 46 大西民子 1.短歌 春の帽子 ものの香のまつはるごとき日の夕べ街へ出でゆく用を作りて 009
おおみや 1968(昭和43)年 2月 No.13 46 大西民子 1.短歌 雪の日のためのストール選ばむに身に添ふ色の今は少なし 010
おおみや 1968(昭和43)年 2月 No.13 46 大西民子 1.短歌 伝言板のわが名すばやく拭き消して駅を出づれば木枯らしの街 011
おおみや 1968(昭和43)年 2月 No.13 46 大西民子 1.短歌 夕焼けの空より雪の降り出でて虹よりも遠くわれをいざなふ 012
おおみや 1968(昭和43)年 2月 No.13 46 大西民子 1.短歌 時刻表の文字板あはくともりゐて雪に遅れて来る夜汽車待つ 013
おおみや 1968(昭和43)年 2月 No.13 46 大西民子 1.短歌 霧の夜の街を人らの行き交へり魚のごとくすれちがひつつ 014
おおみや 1968(昭和43)年 2月 No.13 46 大西民子 1.短歌 こだはりを持ち歩く身と気づきたりポケットの右手汗ばみてゆく 015
おおみや 1968(昭和43)年 2月 No.13 46 大西民子 1.短歌 青木の実葉がくれに照ることを言ひとりとめのなき別れをしたり 016
おおみや 1968(昭和43)年 2月 No.13 46 大西民子 1.短歌 道に会ひつれだちて帰る妹のいだく荷のなかセロリが匂う 017
おおみや 1968(昭和43)年 2月 No.13 46 大西民子 1.短歌 かぶり見て人は買ひゆく純白の羽毛のそよぐ春の帽子を 018
おおみや 1968(昭和43)年 10月 No.17 34-35 大西民子 2.エッセイ 堀の内は昔の沼 019
おおみや 1969(昭和44)年 2月 No.19 43 大西民子 1.短歌 芝川早春 花咲けるうちに知りたき木々の名と仰ぎつつ森のほとりをかよふ  020
おおみや 1969(昭和44)年 2月 No.19 43 大西民子 1.短歌 林のなかにしづもれる家日曜の今朝はたれかがゐて釘を打つ 021
おおみや 1969(昭和44)年 2月 No.19 43 大西民子 1.短歌 水位計の立つあたりまで今日は行き牛小屋のあることも知りたり 022
おおみや 1969(昭和44)年 2月 No.19 43 大西民子 1.短歌 カスタネット鳴らしつつ行く少年も次第に溶けて夕もやのなか 023
おおみや 1969(昭和44)年 2月 No.19 43 大西民子 1.短歌 美しき拘束と言へる言葉あり妹のルージュ買ひゐて思ふ 024
おおみや 1969(昭和44)年 2月 No.19 43 大西民子 1.短歌 川霧のいつしか沈み見慣れたる灯りをちりばめて暮れてゆく街 025
おおみや 1969(昭和44)年 2月 No.19 43 大西民子 1.短歌 指先の痛み忘れて目ざめたし明日読む本を本を枕べに置く 026
おおみや 1969(昭和44)年 2月 No.19 43 大西民子 1.短歌 秒針がしきりにわれの髪に触れ廻ると思ひつつ眠りたり 027
おおみや 1969(昭和44)年 2月 No.19 43 大西民子 1.短歌 褐炭の山のごとき超えゆけり身をいろどらむ鱗ももたず 028
おおみや 1969(昭和44)年 2月 No.19 43 大西民子 1.短歌 毛糸の玉はやさしく膝へ帰りつつ妹に編む春のスカーフ 029
おおみや 1969(昭和44)年 8月 No.22 40-41 大西民子 2.エッセイ にぎやかだった婦人短歌教室 030
おおみや 1969(昭和44)年 12月 No.24 50 大西民子 3.評論 髪ゆれて-大宮短歌抄-大西民子選 031
おおみや 1970(昭和45)年 4月 No.26 20 大西民子 2.エッセイ 大宮びと 032
おおみや 1970(昭和45)年 10月 No.29 50 大西民子 1.短歌 硝子の天使 フラメンコの踊り手らしき少女らの過ぎて再び落ち葉降る坂 033
おおみや 1970(昭和45)年 10月 No.29 50 大西民子 1.短歌 人一人忘れ得べしや濃みどりの服地探して街を行く日も 034
おおみや 1970(昭和45)年 10月 No.29 50 大西民子 1.短歌 工事場のかたはら過ぎて声高になりゐたる身をひきもどしゆく 035
おおみや 1970(昭和45)年 10月 No.29 50 大西民子 1.短歌 複製のモナ・リザ仰ぎつつ待ちいかなる人に会ふわれならむ 036
おおみや 1970(昭和45)年 10月 No.29 50 大西民子 1.短歌 方角を占はれゐる椅子の上まぶた閉ぢてもいづこも寒し 037
おおみや 1970(昭和45)年 10月 No.29 50 大西民子 1.短歌 バザールにガラスの翼張りゐたる小さき天使も運び去られぬ 038
おおみや 1970(昭和45)年 10月 No.29 50 大西民子 1.短歌 対岸の暗き木の間はたれかゐてフニクリ・フニクラ口笛に吹く 039
おおみや 1970(昭和45)年 10月 No.29 50 大西民子 1.短歌 葉脈のやうに途切るる物語閉館を告くるチャイムひびきて 040
おおみや 1970(昭和45)年 10月 No.29 50 大西民子 1.短歌 貝合わせの貝もウインドウに見えずなりわが楽しみの一つ失ふ 041
おおみや 1970(昭和45)年 10月 No.29 50 大西民子 1.短歌 いづこまで帰るや硝子の指環して夜毎のバスに落ちあふ少女 042
おおみや 1971(昭和46)年 2月 No.31 45 大西民子 3.評論 晴着の娘らー大宮短歌抄ー大西民子選 043
おおみや 1971(昭和46)年 4月 No.29 46 大西民子 2.エッセイ 西角井先生の思い出 044
おおみや 1971(昭和46)年 8月 No.34 24 大西民子 1.短歌 歌集 花溢れゐき ものの香のまつはるごとき日のゆふべ街へ出でゆく用を作りて  045
おおみや 1971(昭和46)年 8月 No.34 24 大西民子 1.短歌 鳴くこともあらず超えゆく沼の上鳥となりてもさびしきわれか 046
おおみや 1971(昭和46)年 8月 No.34 24 大西民子 1.短歌 桃の木は葉をけむらせて雨のなか共に見し日は花溢れゐき 047
おおみや 1972(昭和47)年 2月 No.37 23 大西民子 1.短歌 あとかたもなく 巻き貝の芯まで今朝は明るしと思へることもながく続かず 048
おおみや 1972(昭和47)年 2月 No.37 23 大西民子 1.短歌 いつのまに小さき蜂の数増して白梅の花のめぐり賑はふ 049
おおみや 1972(昭和47)年 2月 No.37 23 大西民子 1.短歌 航跡雲あとかたもなく消えてをり思ひかくまで澄む日のありや 050
おおみや 1972(昭和47)年 2月 No.37 23 大西民子 1.短歌 ゆくりなく窓に映りてわが見しはみづからの待つ行きずりの顔 051
おおみや 1972(昭和47)年 2月 No.37 23 大西民子 1.短歌 ここにゐる限りは見えて足折れしガラスの鹿の再び立たず 052
おおみや 1972(昭和47)年 2月 No.37 23 大西民子 1.短歌 ものを食む現し身のふと生臭し灯ともりて咲くギヤマンの花 053
おおみや 1972(昭和47)年 2月 No.37 23 大西民子 1.短歌 駅までを連れだちてゐて身の左庇はれて歩むことのやさしさ 054
おおみや 1972(昭和47)年 2月 No.37 23 大西民子 1.短歌 街灯のうるむ夜霧のなかを来て鳩時計鳴るはいづこの家か 055
おおみや 1972(昭和47)年 2月 No.37 23 大西民子 1.短歌 手首より襟回りよりほどかれて混沌と積もるまだらの毛糸 056
おおみや 1972(昭和47)年 2月 No.37 23 大西民子 1.短歌 雪柳の花のこまごま散りそめぬ帰ることなき犬の名を呼ぶ 057
おおみや 1972(昭和47)年 10月 No.41 23 大西民子 1.短歌 風の凪ぐとき 雲を映す日の多くなりし水の上風は渡らふバリウム色に 058
おおみや 1972(昭和47)年 10月 No.41 23 大西民子 1.短歌 クレバスは青のみとなり吹く風も野も真っ青に塗るほかあらず 059
おおみや 1972(昭和47)年 10月 No.41 23 大西民子 1.短歌 電車待つあひだしばらく話しゐて表裏ある声を待ちあふ 060
おおみや 1972(昭和47)年 10月 No.41 23 大西民子 1.短歌 階段から改札口へ殺気だちときに静けし人の流れは 061
おおみや 1972(昭和47)年 10月 No.41 23 大西民子 1.短歌 花びらのゆるみゐし薔薇カーテンの襞に触れたるのみに崩るる 062
おおみや 1972(昭和47)年 10月 No.41 23 大西民子 1.短歌 口径のかすかに一つ一つ違ふカットグラスを並べゆくとき 063
おおみや 1972(昭和47)年 10月 No.41 23 大西民子 1.短歌 うずくまるいづこもわれの流刑地草抜けば草の匂ひがのぼる 064
おおみや 1972(昭和47)年 10月 No.41 23 大西民子 1.短歌 襟あしの荒れたる感じ身に残る楡のこずゑの風凪ぐときに 065
おおみや 1972(昭和47)年 10月 No.41 23 大西民子 1.短歌 動くともなくただ薄く運命のかげりのような雲が見えゐる 066
おおみや 1972(昭和47)年 10月 No.41 23 大西民子 1.短歌 思ひゐて驚きやすしグラスのなかの氷の一つ不意にくつがへる 067
おおみや 1973(昭和48)年 6月 No.45 25 大西民子 3.評論 南の風ー大宮短歌会作品抄ー大西民子選 068
おおみや 1973(昭和48)年 12月 No.47 24 大西民子 2.エッセイ 私の愛蔵品 縫いぐるみ 069
おおみや 1974(昭和49)年 4月 No.50 46 大西民子 2.エッセイ 春の星座 070
おおみや 1975(昭和50)年 2月 No.55 49 大西民子 3.評論 歌集『曲見』のこと 071
おおみや 1975(昭和50)年 8月 No.58 46 大西民子 2.エッセイ 九官鳥の九ちゃんー岩本医院のマスコットー 072
おおみや 1977(昭和52)年 6月 No.69 16-17 大西民子 3.評論 大宮生れの歌人 平野万里の生き方 073
おおみや 1977(昭和52)年 6月 No.69 49 大西民子 3.評論 祝婚の壺ー大宮短歌会作品抄ー大西民子選 074
おおみや 1978(昭和53)年 10月 No.77 47 大西民子 1.短歌 沙羅の花ー大宮短歌会作品抄ー大西民子選 075
おおみや 1979(昭和54)年 2月 No.79 46 大西民子 2.エッセイ 女性随筆コーナー 宮野先生の思い出 076
おおみや 1979(昭和54)年 10月 No.83 30 大西民子 4.その他 大西民子歌集、短歌研究文庫に 077
おおみや 1980(昭和55)年 4月 No.86 45 大西民子 1.短歌 小さき耳ー大宮短歌会作品抄ー大西民子選 078
おおみや 1981(昭和56)年 6月 No.93 47 大西民子 1.短歌 金色の花 裁ち屑を掃きよせをればひとかたに集まるごとしわれの思ひも 079
おおみや 1981(昭和56)年 6月 No.93 47 大西民子 1.短歌 逝きしより八年を経ておもかげもいつしか写真の顔に定まる 080
おおみや 1981(昭和56)年 6月 No.93 47 大西民子 1.短歌 前を行く一人の帯に浮き出でし金糸の花もいつしかあらず 081
おおみや 1981(昭和56)年 6月 No.93 47 大西民子 1.短歌 思い来しことのくさぐさ相会ひて言葉となして何ぞはかなき 082
おおみや 1981(昭和56)年 6月 No.93 47 大西民子 1.短歌 時かけて語りあひつつ男ゆゑ女ゆゑ執することの違へる 083
おおみや 1981(昭和56)年 6月 No.93 47 大西民子 1.短歌 兵たりし昔を言ひて飲食を急ぐ習ひをみづから笑ふ 084
おおみや 1981(昭和56)年 6月 No.93 47 大西民子 1.短歌 さりげなく聞きたることのまだらなす胸と思へり別れむとして 085
おおみや 1981(昭和56)年 6月 No.93 47 大西民子 1.短歌 その母に返して胸のさびしけれあたたかかえいしみどり児の嵩 086
おおみや 1981(昭和56)年 6月 No.93 47 大西民子 1.短歌 思ひたるのみに罪する掟あらばいくたびわれの死にたむならむ 087
おおみや 1981(昭和56)年 6月 No.93 47 大西民子 1.短歌 一つ一つ壊しつつ生きて来しならむチョコの硝子の灰皿も失す 088
おおみや 1982(昭和57)年 3月 No.97 18-19 北沢郁子 2.エッセイ 人生の慰藉ー大西民子さんのことー 089
おおみや 1982(昭和57)年 11月 No.101 49 大西民子 3.評論 静かなる木々ー大宮短歌会作品抄ー大西民子選 090
おおみや 1986(昭和61)年 4月 No.120 47 大西民子 4.その他 インタビュー 大宮のここがスキ!ここがキライ! 091
おおみや 1994(平成6)年 3月 No.165 52 高橋喜種 4.その他 歌人大西民子さんを偲ぶ 高橋喜種 092
埼玉・人とこころ 1973(昭和48)年 5月 創刊号 8-9 大西民子 2.エッセイ 「おきぬさま」のこと 093
埼玉・人とこころ 1973(昭和48)年 6月 第二号 12-13 大西民子 2.エッセイ ふしぎなこと 094
埼玉・人とこころ 1973(昭和48)年 7月 第三号 3 大西民子 2.エッセイ 女の歳月 095
埼玉・人とこころ 1973(昭和48)年 8月 第四号 8-9 大西民子 2.エッセイ 「おきぬさま」その後 096
埼玉・人とこころ 1973(昭和48)年 10月 第六号 5-6 大西民子 2.エッセイ 少女の日の夢 097
埼玉・人とこころ 1973(昭和48)年 11月 第七号 6 大西民子 2.エッセイ 母の思い出 098
埼玉・人とこころ 1973(昭和48)年 12月 第八号 6 大西民子 2.エッセイ 女歌の系譜 099
埼玉・人とこころ 1974(昭和49)年 1月 第九号 13 大西民子 3.評論 歌壇 100
埼玉・人とこころ 1974(昭和49)年 2月 第十号 16 大西民子 3.評論 歌壇 101
埼玉・人とこころ 1974(昭和49)年 3月 第十一号 15 大西民子 3.評論 歌壇 102
埼玉・人とこころ 1974(昭和49)年 6月 六月号 10 大西民子 2.エッセイ 犬木徳翁氏の文学 103
武州路 1973(昭和48)年 9月 No.2 39-40 大西民子 2.エッセイ 武蔵野のハイウエー 104
武州路 1976(昭和51)年 8月 No.36 26-28 大西民子 2.エッセイ 埼玉の祭り 氷川神社大祭(大宮) 105
武州路 1981(昭和56)年 2月 No.90 44-46 大西民子 2.エッセイ ビルマの寝釈迦 106
武州路 1988(昭和63)年 8月 No.180 33 大西民子 4.その他 今 活躍中の埼玉の女性30人 107
埼玉歌集 1964(昭和39)年 4月 50 大西民子 1.短歌 「雪のしづく」宿り木の青みわたれる森を行くつめたき陶の卵を持ちて 108
埼玉歌集 1964(昭和39)年 4月 50 大西民子 1.短歌 「雪のしづく」枕木に雪積もりゐし夜の別れ呼び戻されむことを願ひき 109
埼玉歌集 1964(昭和39)年 4月 50 大西民子 1.短歌 「雪のしづく」一枚のてのひらをもて蔽はむに溢れて思ふことも少なし 110
埼玉歌集 1964(昭和39)年 4月 50 大西民子 1.短歌 「雪のしづく」煽られし楽譜を拾ふ時の間にドビュッシーもわれは逃がしてしまふ 111
埼玉歌集 1964(昭和39)年 4月 50 大西民子 1.短歌 「雪のしづく」街にて不意に逢はむ日などを恋ふのみに白木蓮の花も畢(をは)りぬ 112
埼玉歌集 1964(昭和39)年 4月 50 大西民子 1.短歌 「雪のしづく」前髪に雪のしづくを光らせて訪はむ未知の女のごとく 113
埼玉歌集 1964(昭和39)年 4月 50 大西民子 1.短歌 「雪のしづく」指貫をはめしままなる夜の眠り夫の記憶もはるかになりぬ 114
埼玉歌集 1964(昭和39)年 4月 50 大西民子 1.短歌 「雪のしづく」音を忍ぶ夜の雨よかの石仏も苔の匂ひをまとめ始めむ 115
埼玉歌集 1969(昭和44)年 6月 51 大西民子 1.短歌 「蜘蛛の糸」ひとすぢの金属音を曳くごとし翅持つ種子の空を飛びゆく 116
埼玉歌集 1969(昭和44)年 6月 51 大西民子 1.短歌 「蜘蛛の糸」胸もとに梢の影の落ちて来て目を病むことの不意に寂しさ 117
埼玉歌集 1969(昭和44)年 6月 51 大西民子 1.短歌 「蜘蛛の糸」埋めたての人ら去りゆきパレットのかたちに白く暮れ残る沼 118
埼玉歌集 1969(昭和44)年 6月 51 大西民子 1.短歌 「蜘蛛の糸」あたためしミルクがあましいづくにか最後の朝餉食む人もゐむ 119
埼玉歌集 1969(昭和44)年 6月 51 大西民子 1.短歌 「蜘蛛の糸」降りやまぬ雨の奥よりよみがへり挙手の礼などなすにあらずや 120
埼玉歌集 1969(昭和44)年 6月 51 大西民子 1.短歌 「蜘蛛の糸」虹の線雲の切れめに光りゐて行かむと思ふいづこも遠し 121
埼玉歌集 1969(昭和44)年 6月 51 大西民子 1.短歌 「蜘蛛の糸」巻貝の先かたむけて目に見えぬ螺旋の糸をひきのばしゆく 122
埼玉歌集 1969(昭和44)年 6月 51 大西民子 1.短歌 「蜘蛛の糸」避けがたき結末としてつね思ふ雨に打たるる波止場の木椅子 123
埼玉歌集 1974(昭和49)年 9月 76 大西民子 1.短歌 「いづこにて」雪の日の沼のやうなるさびしさと思ひてゐしがいつしか眠る 124
埼玉歌集 1974(昭和49)年 9月 76 大西民子 1.短歌 「いづこにて」音のして闇に目ざむる驚きは野に棲む兎もわれもかはらむ 125
埼玉歌集 1974(昭和49)年 9月 76 大西民子 1.短歌 「いづこにて」堪へかねて手を放しなばばらばらにほどけて落ちてゆくわれならむ 126
埼玉歌集 1974(昭和49)年 9月 76 大西民子 1.短歌 「いづこにて」思ふさまくつがえらねば越えられず闇の遠くに耳二つ置く 127
埼玉歌集 1974(昭和49)年 9月 76 大西民子 1.短歌 「いづこにて」足音の家をめぐると聴きてをりわが歩みたる音かも知れず 128
埼玉歌集 1974(昭和49)年 9月 76 大西民子 1.短歌 「いづこにて」山の端の低くかすかに染みてをり西へ向へる歩みと気づく 129
埼玉歌集 1974(昭和49)年 9月 76 大西民子 1.短歌 「いづこにて」いづこにて焼かれむわれか金冠の小さき一つ奥歯に持ちて 130
埼玉歌集 1974(昭和49)年 9月 76 大西民子 1.短歌 「いづこにて」地図などに無き道を奪はれゆきたきに道標は指すわが住む町を 131
埼玉歌集 1979(昭和54)年 10月 131 大西民子 1.短歌 「方角」道のべの紫苑の花も過ぎむとしたれの決めたる高さに揃ふ 132
埼玉歌集 1979(昭和54)年 10月 131 大西民子 1.短歌 「方角」すきとほるガラス見をれば裏と表に分れしのちの遠き月日よ 133
埼玉歌集 1979(昭和54)年 10月 131 大西民子 1.短歌 「方角」逃げ水の光のごとき素早さになべて過ぎつつ春ならむとす 134
埼玉歌集 1979(昭和54)年 10月 131 大西民子 1.短歌 「方角」虎杖のたけゆく道を通ひつつ流離のごとし職場移るは 135
埼玉歌集 1979(昭和54)年 10月 131 大西民子 1.短歌 「方角」避けがたく通る道なり雪よりもしろじろと舞う梨の落花は 136
埼玉歌集 1979(昭和54)年 10月 131 大西民子 1.短歌 「方角」シャッターのあがる前よりわれの目にさだかに見えてゐたる壺あり 137
埼玉歌集 1979(昭和54)年 10月 131 大西民子 1.短歌 「方角」思ひ知るために寄せゆき引き返す波の如しもわが月日は 138
埼玉歌集 1979(昭和54)年 10月 131 大西民子 1.短歌 「方角」方角のなき闇のなか昼間見し白梅ならむ花明りすうる 139
埼玉歌集 1984(昭和59)年 11月 117 大西民子 1.短歌 「今朝の雀」みそなはすすべなきものを喪の花の蘭は白磁のさまにしづるも 140
埼玉歌集 1984(昭和59)年 11月 117 大西民子 1.短歌 「今朝の雀」霊柩車を先立ててゆくバスのなか不意に時刻を問ひし人あり 141
埼玉歌集 1984(昭和59)年 11月 117 大西民子 1.短歌 「今朝の雀」踏み絵踏む足の次々あらはるる夢醒めて寒しわれのあなうら 142
埼玉歌集 1984(昭和59)年 11月 117 大西民子 1.短歌 「今朝の雀」惑はしの言葉のごとく大津絵にほつつり赤し椿の花は 143
埼玉歌集 1984(昭和59)年 11月 117 大西民子 1.短歌 「今朝の雀」おり立ちてよしなき反故を燃しゐるに今朝の雀はみなよく啼けり 144
埼玉歌集 1984(昭和59)年 11月 117 大西民子 1.短歌 「今朝の雀」洗ひたる皿のたちまち冷えゆくは死にたる人の冷えゆくに似る 145
埼玉歌集 1984(昭和59)年 11月 117 大西民子 1.短歌 「今朝の雀」眠られぬままに思へばみどり児の金無垢といふ重さも知らぬ 146
埼玉歌集 1984(昭和59)年 11月 117 大西民子 1.短歌 「今朝の雀」大粒の涙のごとき電線のしづくにいきなり髪を打たれつ 147
埼玉歌集 1989(平成元)年 6月 123 大西民子 1.短歌 「多年草」多年草の黄菊うらうら照れれども来年の秋はいかになりゐむ 148
埼玉歌集 1989(平成元)年 6月 123 大西民子 1.短歌 「多年草」じっとして沈める緋鯉堪へ切れず動くと如く身をよぢりたり 149
埼玉歌集 1989(平成元)年 6月 123 大西民子 1.短歌 「多年草」おのづから意識遠のき豆電球のごとくになりてしまうときあり 150
埼玉歌集 1989(平成元)年 6月 123 大西民子 1.短歌 「多年草」出でて行く農園があるにあらねども百米までといふコードレス電話 151
埼玉歌集 1989(平成元)年 6月 123 大西民子 1.短歌 「多年草」時ならず別離の言葉叫びたる籠の鸚鵡はみじろがずゐる 152
埼玉歌集 1989(平成元)年 6月 123 大西民子 1.短歌 「多年草」騒立てる日々なりにしが川岸の学校園は枯草の藪 153
埼玉歌集 1989(平成元)年 6月 123 大西民子 1.短歌 「多年草」塩分を除かば無限に水はありと幼くて何を思ひ詰めけむ 154
埼玉歌集 1989(平成元)年 6月 123 大西民子 1.短歌 「多年草」おとなびてやさしかりしよメリンスより銘仙に移りし元禄の袖 155
大宮文芸 1976(昭和51)年 3月 第3号 86 大西民子 3.評論 短歌講評 156
大宮文芸 1977(昭和52)年 3月 第4号 88 大西民子 3.評論 短歌講評 157
大宮文芸 1978(昭和53)年 4月 第5号 100 大西民子 3.評論 短歌講評 158
大宮文芸 1979(昭和54)年 3月 第6号 90 大西民子 3.評論 短歌講評 159
大宮文芸 1980(昭和55)年 3月 第7号 98 大西民子 3.評論 短歌講評 160
大宮文芸 1980(昭和55)年 11月 第8号 10 大西民子 1.短歌 「なべて終れる」たれの吹くフルートならむ光りつつ亀裂を伝ふ水を思はす 161
大宮文芸 1980(昭和55)年 11月 第8号 10 大西民子 1.短歌 「なべて終れる」錯覚にすぎさりしことのよみがへる曇る眼鏡を拭きつつをれば 162
大宮文芸 1980(昭和55)年 11月 第8号 10 大西民子 1.短歌 「なべて終れる」さまざまに願ひたゆたひ木の如く豊かに立つといふ日もあらず 163
大宮文芸 1980(昭和55)年 11月 第8号 10 大西民子 1.短歌 「なべて終れる」体ごと傾けて何を聴く人かをりをり翳る表情を見ず 164
大宮文芸 1980(昭和55)年 11月 第8号 10 大西民子 1.短歌 「なべて終れる」との曇る空のいづくに月ありて背筋光らせ犬の集まる 165
大宮文芸 1980(昭和55)年 11月 第8号 10 大西民子 1.短歌 「なべて終れる」砂などの濡れて詰まれる重さかと晴れぬ思ひを運びて帰る 166
大宮文芸 1980(昭和55)年 11月 第8号 10 大西民子 1.短歌 「なべて終れる」全きを願ふならねど築きてはまた崩す塔の如き仕事よ 167
大宮文芸 1980(昭和55)年 11月 第8号 10 大西民子 1.短歌 「なべて終れる」かなたなる海の入り日にきはだちて大き寝釈迦の如し砂丘は 168
大宮文芸 1980(昭和55)年 11月 第8号 10 大西民子 1.短歌 「なべて終れる」三歳の子の父といへりねたましきまでにかがよひサーブを打てり 169
大宮文芸 1980(昭和55)年 11月 第8号 10 大西民子 1.短歌 「なべて終れる」用の済みほとりと受話器置きたればなべて終れる如きしずけさ 170
大宮文芸 1980(昭和55)年 11月 第9号 10 大西民子 1.短歌 「自画像」からくりの人形は箱にしまはれて人形もわれもくらやみのなか 171
大宮文芸 1980(昭和55)年 11月 第9号 10 大西民子 1.短歌 「自画像」面壁とはおのれに向かふことならむおのれといふも単純ならず 172
大宮文芸 1980(昭和55)年 11月 第9号 10 大西民子 1.短歌 「自画像」タクシーの窓のガラスの幅だけの帯のやうなる枯れ野を行けり 173
大宮文芸 1980(昭和55)年 11月 第9号 10 大西民子 1.短歌 「自画像」自画像の頬をこの夜もそぎゐつつ極道と呼ぶ生き方に似む 174
大宮文芸 1980(昭和55)年 11月 第9号 10 大西民子 1.短歌 「自画像」夢に見て夢と知りつつあざむけり欺くことのふとこころよく 175
大宮文芸 1980(昭和55)年 11月 第9号 10 大西民子 1.短歌 「自画像」幼な子の声などしたることなくて積みおく本を見回す日あり 176
大宮文芸 1980(昭和55)年 11月 第9号 10 大西民子 1.短歌 「自画像」絨毯に音を吸はせて何事をなし来し人か歩み去りたり 177
大宮文芸 1980(昭和55)年 11月 第9号 10 大西民子 1.短歌 「自画像」春の雲のふくらむ見れば錯誤さへ身に華やげる日のありにけり 178
大宮文芸 1980(昭和55)年 11月 第9号 10 大西民子 1.短歌 「自画像」雨あとは虫の祭りの日ならむか蛾も蝶も出でてはたはたと飛ぶ 179
大宮文芸 1980(昭和55)年 11月 第9号 10 大西民子 1.短歌 「自画像」はるばると幟なびけて虫送りの行列などはいづち行きけむ 180
大宮文芸 1980(昭和55)年 11月 第10号 10 大西民子 1.短歌 「人形のこゑ」行き着かぬ思ひにをれば昼過ぎて煙のごとき雨の降りいづ 181
大宮文芸 1980(昭和55)年 11月 第10号 10 大西民子 1.短歌 「人形のこゑ」槇の葉を打つ雨だれを見てゐしがまして乱るる犬蓼の葉は 182
大宮文芸 1980(昭和55)年 11月 第10号 10 大西民子 1.短歌 「人形のこゑ」妻を得てユトレヒトに今は住むというユトレヒトにも雨降るらむか 183
大宮文芸 1980(昭和55)年 11月 第10号 10 大西民子 1.短歌 「人形のこゑ」ヒロインの異国へのがるる場面にて船腹を打つ波の荒れたり 184
大宮文芸 1980(昭和55)年 11月 第10号 10 大西民子 1.短歌 「人形のこゑ」それぞれの闇をまとひて立つ木々にまじりて立たばわれは何の木 185
大宮文芸 1980(昭和55)年 11月 第10号 10 大西民子 1.短歌 「人形のこゑ」荷となるを恐れて置ける土の鈴ことばやさしき人に買はれよ 186
大宮文芸 1980(昭和55)年 11月 第10号 10 大西民子 1.短歌 「人形のこゑ」等身の人形の笑ひし声かもと驚き易く地下街をゆく 187
大宮文芸 1980(昭和55)年 11月 第10号 10 大西民子 1.短歌 「人形のこゑ」駅前の放置自転車神々に見放されたる病のごとし 188
大宮文芸 1980(昭和55)年 11月 第10号 10 大西民子 1.短歌 「人形のこゑ」黄の花の多き季節よ人は去りまばらに墓の取り残されぬ 189
大宮文芸 1980(昭和55)年 11月 第10号 10 大西民子 1.短歌 「人形のこゑ」われの道蝶の道目に見えねども古地図に江戸の街路ととのふ 190
大宮文芸 1980(昭和55)年 11月 第10号 206 大西民子 3.評論 短歌講評 191
大宮文芸 1980(昭和55)年 11月 第12号 10 大西民子 1.短歌 「歳月」日本は如何なる国かフルートを吹ける異人のをとめに思ふ 192
大宮文芸 1980(昭和55)年 11月 第12号 10 大西民子 1.短歌 「歳月」水玉を小さく上げて沈みたり薔薇のかたちの砂糖二粒 193
大宮文芸 1980(昭和55)年 11月 第12号 10 大西民子 1.短歌 「歳月」行き違いになりにしのみと知るまでにまた重ねたる歳月ありき 194
大宮文芸 1980(昭和55)年 11月 第12号 10 大西民子 1.短歌 「歳月」門をしめに出で来て不意に亡き父母の知らざる家に住むを思へり 195
大宮文芸 1980(昭和55)年 11月 第12号 10 大西民子 1.短歌 「歳月」ふるさとの野山思へばいづこにも落ち葉の浮かぶ水ありにけり 196
大宮文芸 1980(昭和55)年 11月 第12号 196 大西民子 1.短歌 短歌講評 197
大宮文芸 1986(昭和61)年 11月 第14号 10 大西民子 1.短歌 「春深みたり」メントールの匂ひをさせてゐることの負いめに列のうしろにつけり 198
大宮文芸 1986(昭和61)年 11月 第14号 10 大西民子 1.短歌 「春深みたり」はりつきてゐたる桜の花びらも奪ひて去りぬ黒の自転車 199
大宮文芸 1986(昭和61)年 11月 第14号 10 大西民子 1.短歌 「春深みたり」遠くより会釈したるはたれなりし喪服に角を曲りてゆけり 200
大宮文芸 1986(昭和61)年 11月 第14号 10 大西民子 1.短歌 「春深みたり」宇治十帖読み返しつつ流離めく夜毎のありて春深みたり 201
大宮文芸 1986(昭和61)年 11月 第14号 10 大西民子 1.短歌 「春深みたり」ふるさとの山のふもとの畑なかの立葵にはいつも日が差す 202
大宮文芸 1986(昭和61)年 11月 第14号 232 大西民子 3.評論 短歌講評 203
大宮文芸 1987(昭和62)年 11月 第15号 10 大西民子 1.短歌 「地底の音」麦畑わづかに熟れてこの町に雲水などは見かけずなりぬ 204
大宮文芸 1987(昭和62)年 11月 第15号 10 大西民子 1.短歌 「地底の音」行きどまりの垣にからみて鉄線の大き紫かかよりゐたり 205
大宮文芸 1987(昭和62)年 11月 第15号 10 大西民子 1.短歌 「地底の音」バス停の標識白くともるころラマ僧二人いづこへ帰る 206
大宮文芸 1987(昭和62)年 11月 第15号 10 大西民子 1.短歌 「地底の音」むじな偏の貌といふ字を書きをれば人間といふ不可解のもの 207
大宮文芸 1987(昭和62)年 11月 第15号 10 大西民子 1.短歌 「地底の音」ひしひしと人の増えくる夢なりき石筍などの立つさまに似て 208
大宮文芸 1987(昭和62)年 11月 第15号 10 大西民子 1.短歌 「地底の音」わがめぐり目に見えて荒れてゆく日あり供華の黄菊は葉から衰ふ 209
大宮文芸 1987(昭和62)年 11月 第15号 10 大西民子 1.短歌 「地底の音」ゆく末をまた見失ふごとき日に軒を鳴らして孤雨降る 210
大宮文芸 1987(昭和62)年 11月 第15号 10 大西民子 1.短歌 「地底の音」手すさびに拾ひたれども石は石の重さに土の匂ひをまとふ 211
大宮文芸 1987(昭和62)年 11月 第15号 10 大西民子 1.短歌 「地底の音」われの目もけものの如く光らむか自転車のライトまともに浴びて 212
大宮文芸 1987(昭和62)年 11月 第15号 10 大西民子 1.短歌 「地底の音」温水器の音と気づけどなほしばし地底の音のごとく続けり 213
大宮文芸 1989(平成元)年 11月 第17号 10 大西民子 1.短歌 「落ち葉籠」甲斐へ抜くる道がひとすぢありといふ片栗の咲くころには思ふ 214
大宮文芸 1989(平成元)年 11月 第17号 10 大西民子 1.短歌 「落ち葉籠」無数の手が今し動きて灯をともす刻限ならめ暮れて来にけり 215
大宮文芸 1989(平成元)年 11月 第17号 10 大西民子 1.短歌 「落ち葉籠」何もかも詰め込むやうに詰め込みて運び去られつ落ち葉の籠は 216
大宮文芸 1989(平成元)年 11月 第17号 10 大西民子 1.短歌 「落ち葉籠」木の椅子に待たされをればときじくの何か言葉のごとき風花 217
大宮文芸 1989(平成元)年 11月 第17号 10 大西民子 1.短歌 「落ち葉籠」ただの岩の円錐形と見てをれど水を引き寄せまた引き離す 218
大宮文芸 1989(平成元)年 11月 第17号 10 大西民子 1.短歌 「落ち葉籠」扇状地といへる地形は黒板にえがかれし図のままに忘れず 219
大宮文芸 1989(平成元)年 11月 第17号 10 大西民子 1.短歌 「落ち葉籠」白梅のはじけそめたる寒さにて振り返らずに犬は行きけり 220
大宮文芸 1989(平成元)年 11月 第17号 10 大西民子 1.短歌 「落ち葉籠」とどめなくくらがりを飛ぶ蝙蝠を仰ぎて飛べぬ蝙蝠われは 221
大宮文芸 1989(平成元)年 11月 第17号 10 大西民子 1.短歌 「落ち葉籠」冬の陽に清められたる蓮沼のただ黒々と干潟なしたり 222
大宮文芸 1989(平成元)年 11月 第17号 10 大西民子 1.短歌 「落ち葉籠」山桜花の散りしく明るさに白拍子など出でて舞はずや 223
大宮文芸 1989(平成元)年 11月 第17号 236 大西民子 3.評論 短歌講評 224
大宮文芸 1990(平成2)年 11月 第18号 10 大西民子 1.短歌 「散華ひとひら」音のして皿にこぼれて昔々ルビーのやうなドロップありき 225
大宮文芸 1990(平成2)年 11月 第18号 10 大西民子 1.短歌 「散華ひとひら」見しこともなき「まさかり」を知りてをり童話の挿絵に大きかりけり 226
大宮文芸 1990(平成2)年 11月 第18号 10 大西民子 1.短歌 「散華ひとひら」疑わず軍手と呼びて使ひ来ぬ今もそのまま洗へば白し 227
大宮文芸 1990(平成2)年 11月 第18号 10 大西民子 1.短歌 「散華ひとひら」あをあをと茹でし春菊を賜ひたり木枯らしすさぶ巷より来て 228
大宮文芸 1990(平成2)年 11月 第18号 10 大西民子 1.短歌 「散華ひとひら」どの家の犬も啼かずて午前二時団地二百戸しづまりかへる 229
大宮文芸 1990(平成2)年 11月 第18号 10 大西民子 1.短歌 「散華ひとひら」わが星を四緑木製と知りてよりめぐりに星の夜々にひしめく 230
大宮文芸 1990(平成2)年 11月 第18号 10 大西民子 1.短歌 「散華ひとひら」かをかをと空向きて鳴くどの鶴も胸のまろみの相似形なす 231
大宮文芸 1990(平成2)年 11月 第18号 10 大西民子 1.短歌 「散華ひとひら」西国へ病みて参れぬわれのため散華ひとひら送りたまひぬ 232
大宮文芸 1990(平成2)年 11月 第18号 10 大西民子 1.短歌 「散華ひとひら」まれまれに立てる厨にラップして花のごとしもサーモンの朱は 233
大宮文芸 1990(平成2)年 11月 第18号 10 大西民子 1.短歌 「散華ひとひら」さまざまに迷ひたれども光源を遠ざけてゆくごとく眠りぬ 234
大宮文芸 1991(平成3)年 11月 第19号 10 大西民子 1.短歌 「光の粒」ときじくのまなかひに降る日照り雨光の粒を撒くごとく降る 235
大宮文芸 1991(平成3)年 11月 第19号 10 大西民子 1.短歌 「光の粒」どのやうにおろされにけむかの大き薬種問屋の看板などは 236
大宮文芸 1991(平成3)年 11月 第19号 10 大西民子 1.短歌 「光の粒」幾人も住むかのやうに灯をともすフランスパンを抱き帰り来て 237
大宮文芸 1991(平成3)年 11月 第19号 10 大西民子 1.短歌 「光の粒」なかで何か起こりゐるとも知らぬまま持ち歩く箱のごとし体は 238
大宮文芸 1991(平成3)年 11月 第19号 10 大西民子 1.短歌 「光の粒」スカートのひだをたたみて寝押しすと余念なかりし夜毎の少女 239
大宮文芸 1991(平成3)年 11月 第19号 10 大西民子 1.短歌 「光の粒」近づけば眼鏡光りてからしいろの秋のスーツがよく似合ひたり 240
大宮文芸 1991(平成3)年 11月 第19号 10 大西民子 1.短歌 「光の粒」園児らの三分の一ほど残されて踏切の手前しばし振はふ 241
大宮文芸 1991(平成3)年 11月 第19号 10 大西民子 1.短歌 「光の粒」ひきだしに沈めし鍵を探しゐて鍵のみを探しゐるにもあらず 242
大宮文芸 1991(平成3)年 11月 第19号 10 大西民子 1.短歌 「光の粒」婉曲に言ひたりしかば伝はらず伝はらざりとことに安らふ 243
大宮文芸 1991(平成3)年 11月 第19号 10 大西民子 1.短歌 「光の粒」見しことの無しと言ひたるわれのため十指を寄せて百合の木の花 244
大宮文芸 1991(平成3)年 11月 第19号 248 大西民子 1.短歌 短歌講評 245
大宮文芸 1992(平成4)年 11月 第20号 14 大西民子 1.短歌 「牧歌」牧草も雨に育つと告げ来れば牛の匂ひのふと立つごとし 246
大宮文芸 1992(平成4)年 11月 第20号 14 大西民子 1.短歌 「牧歌」クローバーの丘に少女は連れゆきて犬にも首輪を編みやりしとぞ 247
大宮文芸 1992(平成4)年 11月 第20号 14 大西民子 1.短歌 「牧歌」うしろより花の香のする風が来て返り咲きせる黄の薔薇に逢ふ 248
大宮文芸 1992(平成4)年 11月 第20号 14 大西民子 1.短歌 「牧歌」くくと啼き岸に寄りくる一列に混じりてあらばわれはどの鴨 249
大宮文芸 1992(平成4)年 11月 第20号 14 大西民子 1.短歌 「牧歌」縫ひ針を撒きたるごとく光りつつ消えつつ雑魚は水にちらばる 250
大宮文芸 1992(平成4)年 11月 第20号 14 大西民子 1.短歌 「牧歌」つながりて咲く曼珠沙華はればれともう一本が離れて咲けり 251
大宮文芸 1992(平成4)年 11月 第20号 14 大西民子 1.短歌 「牧歌」軍用馬にとられむ憂ひも今は無く姿やさしきジョッキーが乗る 252
大宮文芸 1992(平成4)年 11月 第20号 14 大西民子 1.短歌 「牧歌」ぼかしたる絵がこのごろは多しとぞ嗅げばアネモネは生臭き花 253
大宮文芸 1992(平成4)年 11月 第20号 14 大西民子 1.短歌 「牧歌」幼子の描きし村は夜に入りてどの窓も黄のあかりをともす 254
大宮文芸 1992(平成4)年 11月 第20号 14 大西民子 1.短歌 「牧歌」みどりごは見えぬもの見て泣くといふ噴水の秀(ほ)に冬の日が差す 255
大宮文芸 1993(平成5)年 11月 第21号 10 大西民子 1.短歌 「銀の箔」朝々に活け直しをれば菜の花とわれといつしかいのちを競ふ 256
大宮文芸 1993(平成5)年 11月 第21号 10 大西民子 1.短歌 「銀の箔」日を選ぶ習ひのわれに残りゐて古き傘のままマートまで行く 257
大宮文芸 1993(平成5)年 11月 第21号 10 大西民子 1.短歌 「銀の箔」横隊に水を浮かべる六羽ゐて振り向けばもうちりぢりの鴨 258
大宮文芸 1993(平成5)年 11月 第21号 10 大西民子 1.短歌 「銀の箔」甲虫にある裏表裏側はリモコンか何かのやうに混みあふ 259
大宮文芸 1993(平成5)年 11月 第21号 10 大西民子 1.短歌 「銀の箔」ゲレンデの人工雪とぞ山腹に雪型のやうに残る模様は 260
大宮文芸 1993(平成5)年 11月 第21号 10 大西民子 1.短歌 「銀の箔」かがまれる後姿のままにゐてわかさぎ釣りは声を発せず 261
大宮文芸 1993(平成5)年 11月 第21号 10 大西民子 1.短歌 「銀の箔」たれも居なくなりても咲かむ糸桜雌蕊雄蕊のひそとととのふ 262
大宮文芸 1993(平成5)年 11月 第21号 10 大西民子 1.短歌 「銀の箔」睡蓮の鉢に緋目高を飼ふといふ生きものの死はかなしきものを 263
大宮文芸 1993(平成5)年 11月 第21号 10 大西民子 1.短歌 「銀の箔」桃山のこころの雲よと屏風絵を見をれば銀の箔がまたたく 264
大宮文芸 1993(平成5)年 11月 第21号 10 大西民子 1.短歌 「銀の箔」そののちに降りにし雪に消されたる足跡のありとたれの言ひけむ 265
大宮文芸 1993(平成5)年 11月 第21号 264 大西民子 1.短歌 短歌講評 266
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 4.その他 大西民子先生を偲ぶ 267
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 6 大西民子 1.短歌 第一歌集「まぼろしの椅子」帰らざる幾月ドアの合鍵の一つを今も君は持ちゐるらむか 268
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 6 大西民子 1.短歌 「まぼろしの椅子」今は誰にも見することなきわが素顔霧笛は鳴れり夜の海原に 269
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 6 大西民子 1.短歌 「まぼろしの椅子」ドラマの中の女ならば如何にか哭(な)きたらむ灯を消してわれの眠らむとする 270
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 6 大西民子 1.短歌 「まぼろしの椅子」殻とぢて竦(すく)める如き日のわれを不意に来し母に見せてしまひぬ 271
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 6 大西民子 1.短歌 「まぼろしの椅子」かたはらにおく幻の椅子一つあくがれて待つ夜もなし今は 272
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 6 大西民子 1.短歌 「まぼろしの椅子」山の彼方に雲ゆく見れば訪ひがたきわがみどり児の墓辺思ほゆ 273
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 6 大西民子 1.短歌 「まぼろしの椅子」そらんじてゐし花言葉つぎつぎに置き忘れ来し月日と思ふ 274
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 6 大西民子 1.短歌 第二歌集「不文の掟」前髪に雪のしづくを光らせて訪(おとな)はむ未知の女の如く 275
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 6 大西民子 1.短歌 「不文の掟」いつのまに東京を去りし友ならむ風のなかに麦踏む日々と告げ来ぬ 276
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 6 大西民子 1.短歌 「不文の掟」完きは一つとてなき阿羅漢のわらわらと起(た)ちあがる夜無きや 277
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 6 大西民子 1.短歌 「不文の掟」流亡の相と言はれし中指の渦紋(かもん)も夏の手袋に秘む 278
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 6 大西民子 1.短歌 「不文の掟」夢のなかといへども髪をふりみだし人を追ひゐきながく忘れず 279
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 6 大西民子 1.短歌 「不文の掟」手に重き埴輪の馬の耳ひとつ片耳の馬はいづくにをらむ 280
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 6 大西民子 1.短歌 「不文の掟」身を逼(せ)むる不文(ふぶん)の掟(おきて)思ふ夜もミモザがこぼす黄なる花びら 281
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 6 大西民子 1.短歌 「不文の掟」月の夜の墓より犬が曳き帰る或いは母の見余せし夢 282
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 6 大西民子 1.短歌 第三歌集「無数の耳」煽(あお)られし楽譜を拾ふ時の間にドビュッシーもわれは逃がしてしまふ 283
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 7 大西民子 1.短歌 「無数の耳」亡き母は混りてゐずや坂下の野菜車を人らのかこむ 284
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 7 大西民子 1.短歌 「無数の耳」ひび入りて伏せおく大き甕(かめ)ひとつみどり児の声漏(も)るる夜無きか 285
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 7 大西民子 1.短歌 「無数の耳」石臼のずれてかさなりゐし不安よみがへりつつ遠きふるさと 286
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 7 大西民子 1.短歌 「無数の耳」てのひらをくぼめて待てば青空の見えぬ傷より花こぼれ来る 287
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 7 大西民子 1.短歌 第四歌集「花溢れゐき」報復は神がし給ふと決めをれど日に幾たびも手をわが洗ふ 288
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 7 大西民子 1.短歌 「花溢れゐき」眠られぬ夜々に思へばみづからの羽根抜きて紡ぐよろこびも無し 289
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 7 大西民子 1.短歌 「花溢れゐき」降りやまぬ雨の奥よりよみがへり挙手(きょしゅ)の礼などなすにあらずや 290
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 7 大西民子 1.短歌 「花溢れゐき」ひとすぢの光の縄のわれを巻きまたゆるやかに戻りてゆけり 291
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 7 大西民子 1.短歌 「花溢れゐき」桃の木は葉をけむらせて雨のなか共に見し日は花溢れゐき 292
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 7 大西民子 1.短歌 第五歌集「雲の地図」円柱は何れも太く妹をしばしばわれの視野から奪ふ 293
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 7 大西民子 1.短歌 「雲の地図」まだ何か奇蹟を待ちてゐるわれにをりかさなりて弔電は来る 294
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 7 大西民子 1.短歌 「雲の地図」水道をとめて思へばかなしみは叩き割りたき塊(かたまり)をなす 295
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 7 大西民子 1.短歌 「雲の地図」われの死を見ずにすみたる妹とくり返し思ひなぐさまむとす 296
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 7 大西民子 1.短歌 「雲の地図」亡き人のショールをかけて街行くにかなしみはふと背にやはらかし 297
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 7 大西民子 1.短歌 「雲の地図」青みさす雪のあけぼのきぬぎぬのあはれといふも知らで終らむ 298
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 7 大西民子 1.短歌 第六歌集「野分の章」道のべの紫苑の花も過ぎむとしたれの決めたる高さに揃ふ 299
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 7 大西民子 1.短歌 「野分の章」留守のまになりと来りて漕ぎゆけよ在りし日のままに揺り椅子を置く 300
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 7 大西民子 1.短歌 「野分の章」引力のやさしき日なり黒土に輪をひろげゆく銀杏(いちょう)の落ち葉 301
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 7 大西民子 1.短歌 「野分の章」地下深く何祝(ほ)ぎごとのあらむ日か花サフランの湧き出でて咲く 302
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 7 大西民子 1.短歌 第七歌集「風水」つながれしままに眠れりはじめより犬のかたちに生れしのみに 303
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 7 大西民子 1.短歌 「風水」亡き人のたれとも知れず夢にきて菊人形のごとく立ちゐき 304
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 7 大西民子 1.短歌 「風水」一本の木となりてあれゆさぶりて過ぎにしものを風と呼ぶべく 305
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 7 大西民子 1.短歌 「風水」地球ごと滅(ほろ)ぶるは何時砂をゑぐる駱駝(らくだ)の足を画面は捉(とら)ふ 306
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 7 大西民子 1.短歌 「風水」まろまろと昇る月見て戻り来ぬ狂ふことなく生くるも悲劇 307
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 7 大西民子 1.短歌 第八歌集「印度の果実」妻を得てユトレヒトに今は住むといふユトレヒトにも雨降るらむか 308
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 7 大西民子 1.短歌 「印度の果実」立ちどまり捨てし煙草を踏み消して去りゆくさまの映画めきたる 309
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 7 大西民子 1.短歌 「印度の果実」目に見ゆるこころの如くナプキンのかたちやさしくたたまれゐたり 310
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 7 大西民子 1.短歌 「印度の果実」五百枚の原稿用紙買ひ持ちていまだ紙なる重さを運ぶ 311
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 7 大西民子 1.短歌 第9歌集「風の曼陀羅」オルゴールを閉づれば戻るしじまありよはいは既に乱を好まず 312
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 7 大西民子 1.短歌 「風の曼陀羅」子をなさば付けむと思ふ名のありき幾つもありき少女のわれに 313
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 7 大西民子 1.短歌 「風の曼陀羅」無数の手が今し動きて灯をともす刻限ならめ暮れて来にけり 314
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 7 大西民子 1.短歌 「風の曼陀羅」白骨(しらほね)となりても遂げむことありや水に押されて水動きけり 315
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 7 大西民子 1.短歌 「風の曼陀羅」どのやうにおろされにけむかの大き薬種問屋の看板などは 316
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 7 大西民子 1.短歌 「風の曼陀羅」送り火の灯籠はいつかちりぢりに漁り火の咲く沖へ去りたり 317
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 8 松島美映 2.エッセイ ひとこま        318
大宮文芸 1994(平成6)年 11月 第22号 8 大塚千都枝 2.エッセイ なつかしき思い出    319
文芸埼玉 1968(昭和43)年 11月 創刊号 69 大西民子 1.短歌 「鳥となりても」出で入りのはげしくなれるドアが見ゆ次第に何の迫らむとして 320
文芸埼玉 1968(昭和43)年 11月 創刊号 69 大西民子 1.短歌 「鳥となりても」胸もとに梢の影の落ちて来て目を病むことの不意に寂しき 321
文芸埼玉 1968(昭和43)年 11月 創刊号 69 大西民子 1.短歌 「鳥となりても」ゆらめきて紙などの泳ぐ水のなかどのあたりまでわれは行きしや 322
文芸埼玉 1968(昭和43)年 11月 創刊号 69 大西民子 1.短歌 「鳥となりても」あくる日の職務に問へど夜の更けに降りゐたる雨を知れる人なし 323
文芸埼玉 1968(昭和43)年 11月 創刊号 69 大西民子 1.短歌 「鳥となりても」鳴くこともあらず超えゆく沼の上鳥となりてもさびしきわれか 324
文芸埼玉 1968(昭和43)年 11月 創刊号 69 大西民子 1.短歌 「鳥となりても」ひろげたる五指かざすとき遠のきて芽ぐむ梢のごとくうるほふ 325
文芸埼玉 1968(昭和43)年 11月 創刊号 69 大西民子 1.短歌 「鳥となりても」長雨にべにばなも摘まず終りたり瞼を押せば涙出で来る 326
文芸埼玉 1968(昭和43)年 11月 創刊号 69 大西民子 1.短歌 「鳥となりても」事務室のガラス拭かれゐながらに見ゆる枯れ野のまぶしくなりぬ 327
文芸埼玉 1968(昭和43)年 11月 創刊号 69 大西民子 1.短歌 「鳥となりても」かさかさと鳴る藁の束街の灯も駅も隠れてしまふまで積む 328
文芸埼玉 1968(昭和43)年 11月 創刊号 69 大西民子 1.短歌 「鳥となりても」蛇いちごの花黄に湧ける野を行きてともなへる人を俄かに怖る 329
文芸埼玉 1970(昭和45)年 11月 第4号 91 大西民子 1.短歌 「ひとのこゑ」散歩路に灯のともる見つつ帰りゆくたのむ思ひもかそかになりて 330
文芸埼玉 1970(昭和45)年 11月 第4号 91 大西民子 1.短歌 「ひとのこゑ」失ふに惜しく残れる何あらむすり抜けてゆく夜の人ごみを 331
文芸埼玉 1970(昭和45)年 11月 第4号 91 大西民子 1.短歌 「ひとのこゑ」押すこともあらず押されて歩む身をわれと笑ひて改札を出づ 332
文芸埼玉 1970(昭和45)年 11月 第4号 91 大西民子 1.短歌 「ひとのこゑ」ミシン踏めばミシンの音に紛れゆき憎まるるほどの事もなし得ぬ 333
文芸埼玉 1970(昭和45)年 11月 第4号 91 大西民子 1.短歌 「ひとのこゑ」肘痛むときに思へりスヰフトは予言してつひに人を死なしめき 334
文芸埼玉 1970(昭和45)年 11月 第4号 91 大西民子 1.短歌 「ひとのこゑ」機械音くぐもる地下の書庫にゐて人のこゑよりわれは乱れず 335
文芸埼玉 1970(昭和45)年 11月 第4号 91 大西民子 1.短歌 「ひとのこゑ」十年目のわが犬のため朱の色の首輪サイズを確かめて買ふ 336
文芸埼玉 1970(昭和45)年 11月 第4号 91 大西民子 1.短歌 「ひとのこゑ」隣より洩れくる議事のはげしきに一人のこゑを聞き分けてゐつ 337
文芸埼玉 1970(昭和45)年 11月 第4号 91 大西民子 1.短歌 「ひとのこゑ」発車待つバスにゐたれば対岸の日あたるビルは窓暗く見ゆ 338
文芸埼玉 1970(昭和45)年 11月 第4号 91 大西民子 1.短歌 「ひとのこゑ」屋上にしづまりゐたる旗一枚不意によぢれて降ろされゆけり 339
文芸埼玉 1971(昭和46)年 3月 第5号 102 大西民子 2.エッセイ 「花の名」 340
文芸埼玉 1973(昭和48)年 11月 第9号 126 大西民子 1.短歌 「力湧き来よ」坐りても立ちても雨の音あふれ今年は犬も妹もゐず 341
文芸埼玉 1973(昭和48)年 11月 第9号 126 大西民子 1.短歌 「力湧き来よ」狼煙あがる空はいづこかわざはひは怖るるものにのみ来るといふ 342
文芸埼玉 1973(昭和48)年 11月 第9号 126 大西民子 1.短歌 「力湧き来よ」遅れゐるバスを待ちつつ悲しみは不意に怒りのやうに噴き上ぐ 343
文芸埼玉 1973(昭和48)年 11月 第9号 126 大西民子 1.短歌 「力湧き来よ」してやらむこと何もなく名を呼びて水を替へたる花籠を置く 344
文芸埼玉 1973(昭和48)年 11月 第9号 126 大西民子 1.短歌 「力湧き来よ」われを離れしわれのもろ手はたおやかに黒と銀との水引を結ぶ 345
文芸埼玉 1973(昭和48)年 11月 第9号 126 大西民子 1.短歌 「力湧き来よ」歩むことをやめて見をれば万象の音を吸ひ込むやうな没り日よ 346
文芸埼玉 1973(昭和48)年 11月 第9号 126 大西民子 1.短歌 「力湧き来よ」位置かへて鳴き続へゐる虫のこゑ木の立ててゐる声かと思ふ 347
文芸埼玉 1973(昭和48)年 11月 第9号 126 大西民子 1.短歌 「力湧き来よ」雨あとのしづくを落とす松を見て指の先までほほけて坐る 348
文芸埼玉 1973(昭和48)年 11月 第9号 126 大西民子 1.短歌 「力湧き来よ」生まれかはることのありとも物陰をうそうそ這ふ虫などにはなるな 349
文芸埼玉 1973(昭和48)年 11月 第9号 126 大西民子 1.短歌 「力湧き来よ」これ以上失ふものは残りゐず腕力のごとき力湧き来よ 350
文芸埼玉 1974(昭和49)年 11月 第12号 79 大西民子 1.短歌 「木槿は白から」童話のやくなやさしき会話して醒めてあたたかかりし仔山羊もをらず 351
文芸埼玉 1974(昭和49)年 11月 第12号 79 大西民子 1.短歌 「木槿は白から」痛きまで胸締めて出づる朝々に木槿は白からほころびそめつ 352
文芸埼玉 1974(昭和49)年 11月 第12号 79 大西民子 1.短歌 「木槿は白から」黒板に字を書く背後ひそまりて石の顔など並ぶならずや 353
文芸埼玉 1974(昭和49)年 11月 第12号 79 大西民子 1.短歌 「木槿は白から」はなやかに角をひらける鹿の絵にゑがきし人のかなしみは見ゆ 354
文芸埼玉 1974(昭和49)年 11月 第12号 79 大西民子 1.短歌 「木槿は白から」ガラス窓の模様を白く光らせて夏も終りと思ふ雨降る 355
文芸埼玉 1975(昭和50)年 3月 第13号 54 大西民子 3.評論 第六回埼玉文芸賞選評(短歌部門) 356
文芸埼玉 1975(昭和50)年 11月 第14号 109 大西民子 3.評論 昭和五十年度「文芸埼玉」応募作品選評(短歌部門) 357
文芸埼玉 1976(昭和51)年 3月 第15号 50 大西民子 3.評論 第七回埼玉文芸賞選評(短歌部門) 358
文芸埼玉 1976(昭和51)年 3月 第15号 95 大西民子 4.その他 「埼玉文学会の一年(昭和五十年)」著者の刊行 大西民子歌集「雲の地図」(短歌新聞社)四月刊 359
文芸埼玉 1976(昭和51)年 3月 第15号 96 大西民子 4.その他 「埼玉文学会の一年(昭和五十年)」著者の刊行 大西民子歌集「石の船」(短歌新聞社)八月刊 360
文芸埼玉 1977(昭和52)年 3月 第17号 68 大西民子 3.評論 第八回埼玉文芸賞選評(短歌部門) 361
文芸埼玉 1977(昭和52)年 12月 第18号 170 大西民子 3.評論 昭和五十二年度「文芸埼玉」応募作品選評(短歌部門) 362
文芸埼玉 1979(昭和54)年 3月 第21号 82 大西民子 3.評論 第十回埼玉文芸賞選評(短歌部門) 363
文芸埼玉 1979(昭和54)年 3月 第21号 90 大西民子 1.短歌 「馬の数のみ」怖るるを知るはいつの日幼な子は蛇のかたちをゑがきて倦まず 364
文芸埼玉 1979(昭和54)年 3月 第21号 90 大西民子 1.短歌 「馬の数のみ」四肢高き馬のほとりにゐし夢の馬の数のみ殖えてゆきたり 365
文芸埼玉 1979(昭和54)年 3月 第21号 90 大西民子 1.短歌 「馬の数のみ」雨乞ひの太鼓の音の響きゐし故郷はあらずどの地図見ても 366
文芸埼玉 1979(昭和54)年 3月 第21号 90 大西民子 1.短歌 「馬の数のみ」遠くにてサイレン鳴れり忘れゐし欲望を呼び醒ますごとくに 367
文芸埼玉 1979(昭和54)年 3月 第21号 90 大西民子 1.短歌 「馬の数のみ」ガラス戸の桟に足首切られたるわが映像を見て立ち尽くす 368
文芸埼玉 1979(昭和54)年 3月 第21号 90 大西民子 1.短歌 「馬の数のみ」音もなくクレーンの鉤の垂りて来て路上のたれを奪はむとする 369
文芸埼玉 1979(昭和54)年 3月 第21号 90 大西民子 1.短歌 「馬の数のみ」うるほいて固まる砂と思ふまで鎮まりてありこよひのわれは 370
文芸埼玉 1979(昭和54)年 3月 第21号 90 大西民子 1.短歌 「馬の数のみ」菜の花の穂先まで咲きて咲き終へぬ思ひ遂ぐるといふやさしさに 371
文芸埼玉 1979(昭和54)年 3月 第21号 90 大西民子 1.短歌 「馬の数のみ」コップのなかの嵐と思ひ至るまで時間をかけて苦しむあはれ 372
文芸埼玉 1979(昭和54)年 3月 第21号 90 大西民子 1.短歌 「馬の数のみ」ぬけ出でていづくへ行かむ月明にひとすぢ光る水路のあらば 373
文芸埼玉 1979(昭和54)年 3月 第21号 126 大西民子 4.その他 著書の刊行 <十一月>大西民子歌集「野分の章」牧羊社刊 374
文芸埼玉 1979(昭和54)年 11月 第22号 186 大西民子 3.評論 応募作品選評(短歌部門) 375
文芸埼玉 1980(昭和55)年 3月 第23号 84 大西民子 3.評論 応募作品選評(短歌部門) 376
文芸埼玉 1980(昭和55)年 3月 第23号 131 大西民子 4.その他 著書の刊行 <七月>大西民子歌集「短歌研究文庫ー大西民子歌集」短歌研究社刊 377
文芸埼玉 1982(昭和57)年 6月 第27号 154 大西民子 3.評論 応募作品選評(短歌部門) 378
文芸埼玉 1983(昭和58)年 3月 第30号 見返しの遊び 大西民子 4.その他 歴代編集委員・近影 379
文芸埼玉 1985(昭和60)年 6月 第33号 192 大西民子 3.評論 応募作品選評(短歌部門) 380
文芸埼玉 1987(昭和62)年 6月 第37号 188 大西民子 3.評論 応募作品選評(短歌部門) 381
文芸埼玉 1988(昭和63)年 12月 第40号 見返しの遊び 大西民子 4.その他 歴代編集委員(写真) 382
文芸埼玉 1990(平成2)年 6月 第43号 191 大西民子 3.評論 応募作品選評(短歌部門) 383
文芸埼玉 1992(平成4)年 6月 第47号 151 大西民子 3.評論 応募作品選評(短歌部門) 384
文芸埼玉 1993(平成5)年 12月 第50号 見返しの遊び 大西民子 4.その他 歴代編集委員(写真) 385
歌壇 1987(昭和62)年 9月 第4号 18-21 大西民子 1.短歌 「いつか失ふ」麦畑わづかに熟れてこの町に雲水などは見かけずなりぬ 386
歌壇 1987(昭和62)年 9月 第4号 18-21 大西民子 1.短歌 「いつか失ふ」昨日までトラックの来てゐしあたり松の花粉に染まる水あり 387
歌壇 1987(昭和62)年 9月 第4号 18-21 大西民子 1.短歌 「いつか失ふ」最短距離を知りゐるごとく音もなく渡ゆきたり小さき蛇は 388
歌壇 1987(昭和62)年 9月 第4号 18-21 大西民子 1.短歌 「いつか失ふ」春紫苑隙なく咲きて底無しの沼といへども陽に凪ぎわたる 389
歌壇 1987(昭和62)年 9月 第4号 18-21 大西民子 1.短歌 「いつか失ふ」思はざる視角に入りて弓なりに胴を伸ばしてゐる猫を見つ 390
歌壇 1987(昭和62)年 9月 第4号 18-21 大西民子 1.短歌 「いつか失ふ」行く雲は捲き毛のやうにほぐれつつ一触即発のときも過ぎたり 391
歌壇 1987(昭和62)年 9月 第4号 18-21 大西民子 1.短歌 「いつか失ふ」紺いろの被膜となれる夜の空に飛び火のごとし白の水木は 392
歌壇 1987(昭和62)年 9月 第4号 18-21 大西民子 1.短歌 「いつか失ふ」われの目もけものの如く光らむかまともに自転車のライトを浴びて 393
歌壇 1987(昭和62)年 9月 第4号 18-21 大西民子 1.短歌 「いつか失ふ」ひしひしと人の増えくる夢なりき石筒などの立つさまにに似て 394
歌壇 1987(昭和62)年 9月 第4号 18-21 大西民子 1.短歌 「いつか失ふ」手袋を濡らして寒く従(つ)きゆきし雪の一夜のありし忘れず 395
歌壇 1987(昭和62)年 9月 第4号 18-21 大西民子 1.短歌 「いつか失ふ」さまざまの物を載せ来してのひらにカリフォルニアのさくらんぼ置く 396
歌壇 1987(昭和62)年 9月 第4号 18-21 大西民子 1.短歌 「いつか失ふ」松葉杖は投げ出されゐて病み長き人の乱れを見し思ひせり 397
歌壇 1987(昭和62)年 9月 第4号 18-21 大西民子 1.短歌 「いつか失ふ」ペチュニアの目を射る赤さ見て過ぎて思へることのふと遠ざかる 398
歌壇 1987(昭和62)年 9月 第4号 18-21 大西民子 1.短歌 「いつか失ふ」茹でし菜の根元そろへて泳がする鉢の真水の冷たさも良き 399
歌壇 1987(昭和62)年 9月 第4号 18-21 大西民子 1.短歌 「いつか失ふ」絹針をはこびて裾を絎(く)けてゆくたのしみなどもいつか失ふ 400
歌壇 1987(昭和62)年 9月 第4号 18-21 大西民子 1.短歌 「いつか失ふ」口少しあけて振り向く顔一つ絵巻のなかにありてあざむく 401
歌壇 1987(昭和62)年 9月 第4号 18-21 大西民子 1.短歌 「いつか失ふ」軍手せる大き手うごき白炭は骨の音してか寄せられぬ 402
歌壇 1987(昭和62)年 9月 第4号 18-21 大西民子 1.短歌 「いつか失ふ」色褪せてたるみゐにしが直立し青葱はみな花を揚げたり 403
歌壇 1987(昭和62)年 9月 第4号 18-21 大西民子 1.短歌 「いつか失ふ」温水器の音と気づけどなほしばし地底の音のごとく続けり 404
歌壇 1987(昭和62)年 9月 第4号 18-21 大西民子 1.短歌 「いつか失ふ」喉元まで水を満たして芍薬を活けて重たき壺となりたり 405
歌壇 1987(昭和62)年 10月 第5号 136-137 大西民子 2.エッセイ 追悼 三国玲子 没後の自注歌集 406
歌壇 1988(昭和63)年 12月 第二巻第12号 158-163 岩田 正 3.評論 作家の顔・作品の力10 大西民子 ―ある挽歌に至る歩み― 407
歌壇 1988(昭和63)年 4月 第二巻第4号 49 大西民子 1.短歌 「鼎談 今、女歌は」の中の一首 そのままを告げよとならば声あげてきゅんと鳴きたき思ひと言はむ 408
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 8 大西民子 4.その他 写真 409
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 104-107 大西民子 1.短歌 「雨の音する」ヘッドライトに照らし出さるる夜の坂往きに見ざりし木が立ちあがる 410
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 104-107 大西民子 1.短歌 「雨の音する」屋上の灯のともりゐるところまで昇りつめたる目をひき戻す 411
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 104-107 大西民子 1.短歌 「雨の音する」みづからの肩に清めの塩を振るいまだ生なる身を帰り来て 412
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 104-107 大西民子 1.短歌 「雨の音する」病みがちに指美しき人なりきその指を組みて旅立ちましぬ 413
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 104-107 大西民子 1.短歌 「雨の音する」竹似草刈られて広き川堤胸のあばらも透くごとき日よ 414
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 104-107 大西民子 1.短歌 「雨の音する」廃線のレールのほとり散りそむるあり咲き出づるありて白梅 415
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 104-107 大西民子 1.短歌 「雨の音する」散らばれる親馬仔馬子供らのゑがく仔馬はいたく小さし 416
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 104-107 大西民子 1.短歌 「雨の音する」発掘のあとをそのまま霜枯れて風に打たるる目じるしの旗 417
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 104-107 大西民子 1.短歌 「雨の音する」稲藁を焚きゐる塚はひとしきりのろしの如き煙あげたり 418
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 104-107 大西民子 1.短歌 「雨の音する」こだまにも遅速のありてはるかなる雑木の山も芽ぐむころか 419
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 104-107 大西民子 1.短歌 「雨の音する」梅園をくぐりて来れば絵馬堂の絵馬は木の音立てて吹かるる 420
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 104-107 大西民子 1.短歌 「雨の音する」耐へ切れず垂るると如く中天を墝めてゆけり航跡雲は 421
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 104-107 大西民子 1.短歌 「雨の音する」雪どけに濁れるを見て去らむとす澄みゆくまでの時間も知らず 422
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 104-107 大西民子 1.短歌 「雨の音する」県境の村はたちまち暮れゆきて夜に見る梅はつぶつぶの白 423
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 104-107 大西民子 1.短歌 「雨の音する」瓶の形をそのまま包める持ちものを横にして膝に置けり少女は 424
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 104-107 大西民子 1.短歌 「雨の音する」日だまりの斑雪を掻きてゐたりしが首立てて鳴く牡鶏一羽 425
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 104-107 大西民子 1.短歌 「雨の音する」種を採る菜のみひと畝残されて匂ふばかりの黒土となる 426
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 104-107 大西民子 1.短歌 「雨の音する」学用品の広告が今朝も配られぬ太郎も次郎もあらぬわが家に 427
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 104-107 大西民子 1.短歌 「雨の音する」犬を曳く少年が行き夕刊の薄きが届き冬の日暮れぬ 428
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 104-107 大西民子 1.短歌 「雨の音する」膝つきてボタンつけをればいつの日の夕べにか似て雨の音する 429
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 108 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」かたはらにおく幻の椅子一つあくがれて待つ夜もなし今は 『まぼろしの椅子』 430
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 108 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」神々も渇く夜あらむわがひとり夜更くればまた眠るほかなく 431
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 108 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」帰らざる幾月ドアの合鍵の一つを今も君は持ちゐるるらむか 432
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 108 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」別れ住む間さへ苛(さいな)まれゐる身よ落ち葉に埋もれてしまひたくなる 433
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 108 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」巣ごもれる幾組のインコ夜の貨車の音にめざめてひとしきり鳴く 434
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 108 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」コートなど縫ふに紛れてゐるさまを見届けて母は帰りゆきたり 435
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 108 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」ただ一人朴訥にわれに同意せし蓬髪を思ふ会終えて来て 436
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 108 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」完(まった)きは一つとてなき阿羅漢のわたわらと起(た)ちあがる夜無きや 『不文の掟』 437
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 108 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」いつのまに東京を去りし友ならむ風の中に麦踏む日々と告げ来ぬ 438
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 108 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」夢のなかといへども髪をふりみだし人を追ひゐきながく忘れず 439
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 108 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」感情を押し殺し来てはや二年夫と住む女性は見たることなし 440
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 108 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」手に重き埴輪の馬の耳ひとつ片耳の馬はいずくにをらむ 441
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 108 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」はばたきて降(お)り来しは雲のモザイクの鳩なりしかば愕きれ醒む 442
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 108 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」流亡の相(そう)と言はれし中指の渦紋も夏の手袋に秘む 443
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 108 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」前髪に雪のしづくを光らせて訪(おとな)はむ未知の女のごとく 444
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 108 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」父に似し妹と母に似るわれと水そそぎあふ父母の墓に 445
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 108 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」噴水の元栓をとめて人去れば森より早くこころかげりぬ 『無数の耳』 446
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 108 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」木耳(きくらげ)を剥ぎゆく魔物見し日より日毎に烈し林の落ち葉 447
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 108 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」石臼のずれてかさなりゐし不安よみがへりつつ遠きふるさと 448
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 108 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」切株につまずきたればくらがりに無数の耳のごとき木の葉ら 449
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 108 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」短かりし家妻の日々よみがへり菜漬けの石のぬめりを洗ふ 450
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 108 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」枕木に雪積もりゐし夜の別れ呼び戻されむことを願ひき 451
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 108 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」宿り木の青みわたれる森を行くつめたき陶(たう)の卵を持ちて 452
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 108 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」煽られし楽譜を拾ふ時の間(ま)にドビュッシーもわれは逃してしまふ 453
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 108 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」丈長く切り来し菖蒲(あやめ)手向けつつ人に知られぬゆかりも過ぎぬ 454
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 109 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」バス降りし闇に思へば若者は蛇象(かたど)れる指環してゐき 455
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 109 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」骨格のどこかゆがむと見て来し絵かの馬などが夜々に殖えゆく 456
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 109 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」持ちて得しもの幾ばくぞ十年目白髪のめだつ君を見しのみ 457
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 109 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」てのひらをくぼめて待てば青空の見えぬ傷より花こぼれ来る 458
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 109 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」ガソリンを地下の倉庫に充たしたる給油所成りて日々に賑はふ 459
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 109 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」切り株にもとの榎の立ちそそり次第に深き眠りを誘ふ 460
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 109 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」マラソンの少年一人音もなく夜更けの坂を下りてゆきぬ 461
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 109 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」きららかについばむ鳥の去りしあと長くかかりて水はしずまる 462
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 109 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」葱の花しろじろと風に揺れあへり戻るほかなき道となりつつ 『花溢れゐき』 463
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 109 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」伝言板のわが名すばやく拭き消して駅を出づれば木枯らしの町 464
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 109 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」妹とくらす月日に梟の時計も古りて鳴かずなりたり 465
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 109 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」みどり児の墓は根雪にうもれゐむ遠き河原に餅草を摘む 466
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 109 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」鑿の音風の切れ目によみがへり石の舟など刻むならずや 467
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 109 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」噴水に濡るる塑像をふり仰ぐするどき骨をわが身に持ちて 468
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 109 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」眠られぬ夜々に思へばみずからの羽根抜きて紡ぐよろこびも無し 469
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 109 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」亡き父のマントの裾にかくまはれ歩みきいつの雪の夜ならむ 470
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 109 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」降りやまぬ雨の奥よりよみがへり挙手の礼などなすにあらずや 471
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 109 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」あたためしミルクがあましいづくにか最後の朝餉食(は)む人もゐむ 472
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 109 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」いづこにも風は吹きゐず花の香に乱されて醒めしまどろみのあと 473
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 109 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」ひとすぢの光の縄のわれを巻きまたゆるやかに戻りてゆけり 474
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 109 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」桃の木は葉をけむらせて雨のなか共に見し日は花溢れゐき 475
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 109 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」仰向けの髪つくづくと梳かれゐて地軸といふはどの方角か 476
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 109 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」報復は神がし給ふと決めをれど日に幾たびも手をわが洗ふ 477
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 109 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」円柱は何れも太く妹をしばしばわれの視野から奪ふ 478
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 109 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」青胡桃握りてをれば生涯のたった一つの獲物ならずや 479
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 110 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」遠き雲の地図を探さむこの町をのがれむといふ妹のため 480
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 110 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」黒鍵のエチュードに今日より入(い)らむとしいたく小さし妹の手は 481
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 110 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」雪柳の花のこまごま散りそめぬ帰ることなき犬の名を呼ぶ 482
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 110 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」水道をとめて思へばかなしみは叩き割りたき塊(かたまり)をなす 483
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 110 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」われの死を見ずにすみたる妹とくり返し思ひなぐさまむとす 484
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 110 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」亡き人のショールをかけて街行くにかなしみはふと背にやはらかし 485
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 110 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」草むらの底にみひらくこの春のたんぽぽの花も妹は見ず 486
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 110 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」もし馬となりゐるならばたてだみを風になびけて疾(と)く帰り来よ 487
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 110 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」栗の花の匂へば雨になるといふ雨の日曜はさびしきものを 488
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 110 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」雪の日の沼のやうなるさびしさと思ひてゐしがいつしか眠る 489
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 110 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」玉虫をあまた集めき玉虫をなべて逃がしきこの白き手に 490
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 110 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」青みさす雪のあけぼのきぬぎぬのあはれといふも知らで終はらむ 491
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 110 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」道のべの紫苑の花も過ぎむとしたれの決めたる高さに揃ふ 『野分の章』 492
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 110 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」すきまなく青葉となれる山が見ゆ山の笑ふはいかなる朝か 493
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 110 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」巻くときの機械の力一瞬に解けて螺旋をなすカタン糸 494
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 110 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」招きたるわざはひにして夜を渡るしぐれの音のごとく過ぎにき 495
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 110 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」新しき塩を鞠ふべき手と思ふほとばしる水に打たせつつゐて 496
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 110 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」引力のやさしき日なり黒土に輪をひろげゆく銀杏の落ち葉 497
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 110 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」妹の分も生きよと言われしが墓碑をうづめて春の雪降る 498
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 110 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」彷徨ひて盲ひのゆゑにときのまの世に会ひ得たる二人なりしか 499
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 110 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」喪の服を雨に濡らして帰り来ぬ水を吸ひたる絹のおもたさ 500
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 110 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」地下深く何祝(ほ)ぎごとのあらむ日か花サフランの湧き出でて咲く 501
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 110 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」菜の花も穂先まで咲きて咲き終へぬ思ひ遂ぐるといふやさしさに 『風水』 502
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 110 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」ぬけ出でていづくへ行かむ月明にひとすぢ光る水路のあらば 503
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 110 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」一本の木となりてあれゆさぶりて過ぎにしものを風と呼ぶべく 504
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 111 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」ガラスのビルを仰ぎてをれば吸盤を持たざる不意の怖れはきざす 505
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 111 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」うち揃ひ夕餉なしたる日のありき小さき額の絵のごとく見ゆ 506
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 111 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」降りやまぬ雨を見をればわが茎の芦より青く立つことのあり 507
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 111 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」琴を弾く埴輪見をればわが指に届かぬ玄(げん)のあるごとき日よ 508
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 111 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」夕刊を取りこみドアの鍵一つかけてしまへば夜の檻のなか 509
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 111 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」茫々と吹かるるは尾花のみならず足首寒しバスを待つとき 510
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 111 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」亡き人のたれとも知れず夢に来て菊人形のごとく立ちゐき 511
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 111 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」どのやうに生きてもひと世繭なさぬ糸を吐きつぐひと世もあらむ 512
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 111 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」截ち屑を掃きよせをればひとかたに集まるごとしわれの思ひも 513
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 111 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」デッサンのやうにそばだちゐしビルの光の塔となりて暮れゆく 514
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 111 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」まろまろと昇る月見てもどり来ぬ狂ふことなく生くるも悲劇 515
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 111 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」どのやうに身を刻むとも恋ふるともあめつちにただひとしずくなる 516
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 111 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」妻を得てユトレヒトに今は住むといふユトレヒトにも雨降るらむか 『印度の果実』 517
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 111 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」トランプのうらなひをして夜にをれば隣の部屋はくらやみの箱 518
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 111 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」青銅の像を見をれば胸板のつめたかりにし夜を忘れず 519
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 111 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」山茶花の散りしくあたり用のなき鶏のごとく歩めりわれは 520
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 111 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」白百合の絵にまだ青きつぼみ見ゆつぼみも咲きて花終へにけむ 521
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 111 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」梵鐘はただにしづもりゐたりしが中世の冬のごとき日ざしよ 522
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 111 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」家づとに絵蝋燭買ひバス待てば何かかなしみを持ちたる如し 523
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 111 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」電話のベル鳴りつぎゐるはどの家かよしうなき耳を持ちて歩めり 524
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 111 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」み柩に黄菊白菊入れまつるこの世の顔をよせあひにつつ 525
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 111 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」みそなはすすべなきものを喪の花の蘭は白磁のさまにしづもる 526
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 111 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」そのままを告げよとならば声あげてきゆんと泣きたき思ひと言はむ 527
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 111 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」霊柩車を先立ててゆくバスのなか不意に時刻を問ひし人あり 528
歌壇 1988(昭和63)年 5月 第二巻第5号 111 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」洗ひたる皿のたちまち冷えてゆくは死にたる人の冷えゆくに似る 529
歌壇 1989(平成元)年 7月 第三巻第7号 93 大西民子 1.短歌 1989(平成元)年上期秀歌(富小路禎子選)無数の手が今し動きて灯をともす刻限ならめ暮れて来にけり 530
歌壇 1989(平成元)年 8月 第三巻第8号 153 大西民子 1.短歌 入門講座「生きた短歌のつくり方」見るということ そして旅のうた②(高瀬一誌選)地球ごと滅ぶるは何時砂をゑぐる駱駝の足を画面は捉う『風水』大西民子 531
歌壇 1990(平成2)年 1月 第四巻第1号 97 大西民子 1.短歌 1989(平成元)年下半期の秀歌(大越一男選)沐浴をすませて匂ふ女童が隣にゐたる日のある如し 大西民子 532
歌壇 1990(平成2)年 4月 第四巻第4号 37 大西民子 1.短歌 桜古今百歌(馬場あき子選)てのひらをくぼめて待てば青空の見えぬ傷より花こぼれ来る(大西民子『無数の耳』) 533
歌壇 1990(平成2)年 5月 第四巻第5号 14-17 大西民子 1.短歌 「北に千里」毛の国も春ならむとす大き孤をゑがきつつ啼く鳶一羽ゐて 534
歌壇 1990(平成2)年 5月 第四巻第5号 14-17 大西民子 1.短歌 「北に千里」中空にちりじりにゐる椋鳥ら今年は殖えて何狙ふらむ 535
歌壇 1990(平成2)年 5月 第四巻第5号 14-17 大西民子 1.短歌 「北に千里」高校に何のありしや次々に黒の制服たむろして来る 536
歌壇 1990(平成2)年 5月 第四巻第5号 14-17 大西民子 1.短歌 「北に千里」手相といひ人相といひ変へ難く苦しきものを人は持ちあふ 537
歌壇 1990(平成2)年 5月 第四巻第5号 14-17 大西民子 1.短歌 「北に千里」青竹のいたく太きを五、六本載せしトラック右折しゆけり 538
歌壇 1990(平成2)年 5月 第四巻第5号 14-17 大西民子 1.短歌 「北に千里」雨のなき数日すぎて葉牡丹のふちのレースのうすくよごれぬ 539
歌壇 1990(平成2)年 5月 第四巻第5号 14-17 大西民子 1.短歌 「北に千里」何事かみちびく声に今日の鴉八咫の鳥のごとく飛ぶなり 540
歌壇 1990(平成2)年 5月 第四巻第5号 14-17 大西民子 1.短歌 「北に千里」起死回生のカードの未だ残りゐる思ひにをりふしポストをのぞく 541
歌壇 1990(平成2)年 5月 第四巻第5号 14-17 大西民子 1.短歌 「北に千里」逆算してやうやくわかる支出ありまれに紙幣をそろへむとして 542
歌壇 1990(平成2)年 5月 第四巻第5号 14-17 大西民子 1.短歌 「北に千里」思ひ立つはいつも夜にて五年前の雑誌はいづこに潜みてあらむ 543
歌壇 1990(平成2)年 5月 第四巻第5号 14-17 大西民子 1.短歌 「北に千里」仇を討つごとき思ひにむきになりて仕事をしたる年月ありき 544
歌壇 1990(平成2)年 5月 第四巻第5号 14-17 大西民子 1.短歌 「北に千里」アイロンのコードにつまづきたりしつつげに動かせぬものばかりなる 545
歌壇 1990(平成2)年 5月 第四巻第5号 14-17 大西民子 1.短歌 「北に千里」見つからざりし巻尺が今出でて来て一メートル五〇まで伸びて見す 546
歌壇 1990(平成2)年 5月 第四巻第5号 14-17 大西民子 1.短歌 「北に千里」あした着る衣服確かめ眠らむに夜空は遠く風の音する 547
歌壇 1990(平成2)年 5月 第四巻第5号 14-17 大西民子 1.短歌 「北に千里」雪の日のアーケード街亡き歌手の尾を曳くやうな唄を流せり 548
歌壇 1990(平成2)年 5月 第四巻第5号 14-17 大西民子 1.短歌 「北に千里」停止せる時間のごとし大小の白磁の皿がセットされゐて 549
歌壇 1990(平成2)年 5月 第四巻第5号 14-17 大西民子 1.短歌 「北に千里」シャーベットを卓上に置き二人ゐても三人ゐてもさびしき齢 550
歌壇 1990(平成2)年 5月 第四巻第5号 14-17 大西民子 1.短歌 「北に千里」くらがりを怖るるとにもあらねども未だなまなる部分持ちあふ 551
歌壇 1990(平成2)年 5月 第四巻第5号 14-17 大西民子 1.短歌 「北に千里」界隈の子らみな育ち二十糎ほどなる雪のそのまましづか 552
歌壇 1990(平成2)年 5月 第四巻第5号 14-17 大西民子 1.短歌 「北に千里」東京は春一番が吹けりとぞ北に十里のここはしづけき 553
歌壇 1990(平成2)年 8月 第四巻第8号 66 大西民子 1.短歌 戦後百首選(島田修二選)『まぼろしの椅子』かたはらにおく幻の椅子一つあくがれて待つ夜もなし今は 554
歌壇 1990(平成2)年 8月 第四巻第8号 88 大西民子 1.短歌 戦後短歌の総決算●昭和四十年代の検証「第二次戦後派」による短歌復興期(杜沢光一郎選)降りやまぬ雨の奥よりよみがへり挙手の礼などなすにあらずや 555
歌壇 1990(平成2)年 9月 第四巻第8号 117 大西民子 1.短歌 入門講座14「生きた短歌のつくり方 父、母をうたう」(高瀬一誌選)㉔ 亡き父のマントの裾にかくまはれ歩みきいつの雪の夜ならむ 556
歌壇 1990(平成2)年 10月 第四巻第10号 154 大西民子 1.短歌 入門講座16「生きた短歌の作り方 挽歌について その一」(高瀬一誌選)35 朝明けて白布に顔をおほひやり今いつさいをわれは失ふ 557
歌壇 1990(平成2)年 11月 第四巻第11号 100 大西民子 1.短歌 人々心々の花 集団としての「四十代女流」(小高賢選) 大西民子 558
歌壇 1990(平成2)年 11月 第四巻第11号 100 大西民子 1.短歌 42歳 第三歌集『無数の耳』 てのひらをくぼめて待てば青空の見えぬ傷よえい花こぼれ来る 559
歌壇 1990(平成2)年 11月 第四巻第11号 100 大西民子 1.短歌 47歳 第四歌集『花溢れゐき』眠られぬ夜々に思へばみづからの羽根抜きて紡ぐよろこびも無し 560
歌壇 1990(平成2)年 11月 第四巻第11号 100 大西民子 1.短歌 51歳 第五歌集『雲の地図』 561
歌壇 1991(平成3)年 3月 第五巻第3号 46 大西民子 1.短歌 「特集 アンソロジー’90 私の一首」大西民子(大13・形成)われの持つ磁石の狂ふ日ならむか見知らぬ人のみわが前に立つ 562
歌壇 1991(平成3)年 3月 第五巻第3号 133-134 大西民子 1.短歌 「ローリングストーンの行方ー中年女性の歌の現在ー」(古谷智子選)かたはらにおくまぼろしの椅子一つあくがれて待つ夜もなし今は 563
歌壇 1991(平成3)年 3月 第五巻第3号 133-134 大西民子 1.短歌 「ローリングストーンの行方ー中年女性の歌の現在ー」(古谷智子選)学問する程女は不幸になるといふ論に反撥しつつ寂しくなりぬ 564
歌壇 1991(平成3)年 3月 第五巻第3号 133-134 大西民子 1.短歌 「ローリングストーンの行方ー中年女性の歌の現在ー」(古谷智子選)退きて来しばかりなる年月の土のすきまを羊歯もて覆ふ 565
歌壇 1991(平成3)年 3月 第五巻第3号 133-134 大西民子 1.短歌 「ローリングストーンの行方ー中年女性の歌の現在ー」(古谷智子選)石などに似て来しわれと思はねど石も呻くと聞けば欺かむ 566
歌壇 1991(平成3)年 4月 第五巻第4号 10-13 大西民子 1.短歌 「十指を寄せて」幾人も住むかのやうに灯をともすフランスパンを抱き帰り来て 567
歌壇 1991(平成3)年 4月 第五巻第4号 10-13 大西民子 1.短歌 「十指を寄せて」ひきだしに沈めし鍵を探しゐて鍵のみを探しゐるもあらず 568
歌壇 1991(平成3)年 4月 第五巻第4号 10-13 大西民子 1.短歌 「十指を寄せて」促さるる思い湧きたりカステラを切るぎざぎざのナイフ出で来て 569
歌壇 1991(平成3)年 4月 第五巻第4号 10-13 大西民子 1.短歌 「十指を寄せて」妹のまだ居たるころ風呂釜に二列に点るガスの火ありき 570
歌壇 1991(平成3)年 4月 第五巻第4号 10-13 大西民子 1.短歌 「十指を寄せて」なかで何か起こりゐるとも知らぬまま持ち歩く箱のごとし体は 571
歌壇 1991(平成3)年 4月 第五巻第4号 10-13 大西民子 1.短歌 「十指を寄せて」すり減りて浅き石段ありにしが順礼に出づるよはひも過ぎぬ 572
歌壇 1991(平成3)年 4月 第五巻第4号 10-13 大西民子 1.短歌 「十指を寄せて」どのあたりまでを知りゐて声合はせ「あの子が欲しい」などと唱へり 573
歌壇 1991(平成3)年 4月 第五巻第4号 10-13 大西民子 1.短歌 「十指を寄せて」双体の道祖神立つ落ち葉みち小犬は白き息を吐き行く 574
歌壇 1991(平成3)年 4月 第五巻第4号 10-13 大西民子 1.短歌 「十指を寄せて」見しことの無しと言ひたるわれのため十指を寄せて百合の木の花 575
歌壇 1991(平成3)年 4月 第五巻第4号 10-13 大西民子 1.短歌 「十指を寄せて」椅子の音しづまるまでに間のありて女性受講者百人ほどか 576
歌壇 1991(平成3)年 4月 第五巻第4号 10-13 大西民子 1.短歌 「十指を寄せて」種子の袋と異なる色に咲きしとぞ白のポピイもやさしきものを 577
歌壇 1991(平成3)年 4月 第五巻第4号 10-13 大西民子 1.短歌 「十指を寄せて」聞き役に回りてあればふと立ちてジャスミンティーを入れ替へくれぬ 578
歌壇 1991(平成3)年 4月 第五巻第4号 10-13 大西民子 1.短歌 「十指を寄せて」われの名も思はぬかたにまじりゐて風の便りといふ便りあり 579
歌壇 1991(平成3)年 4月 第五巻第4号 10-13 大西民子 1.短歌 「十指を寄せて」ビニールの桜吊る日も遠からじ風にゆれつつ今は繭玉 580
歌壇 1991(平成3)年 4月 第五巻第4号 10-13 大西民子 1.短歌 「十指を寄せて」どのやうにおろされにけむかの大き薬種問屋の看板などは 581
歌壇 1991(平成3)年 4月 第五巻第4号 10-13 大西民子 1.短歌 「十指を寄せて」かたまれる帽子ちりぢりの黄の帽子橋より見えて河原小春日 582
歌壇 1991(平成3)年 4月 第五巻第4号 10-13 大西民子 1.短歌 「十指を寄せて」臘梅に近づけてゆく横顔に忘れがたみの面影を見つ 583
歌壇 1991(平成3)年 4月 第五巻第4号 10-13 大西民子 1.短歌 「十指を寄せて」真実を聞くはいつの日落ち合ひの水は突き上げ白煙を拳ぐ 584
歌壇 1991(平成3)年 4月 第五巻第4号 10-13 大西民子 1.短歌 「十指を寄せて」黄のセダンのうしろのドアがしめられて何かが終はる思ひしたきり 585
歌壇 1991(平成3)年 4月 第五巻第4号 10-13 大西民子 1.短歌 「十指を寄せて」緋の房の鼓見をればこと切れて何も見えなくなる日は寂し 586
歌壇 1991(平成3)年 4月 第五巻第4号 32 大西民子 1.短歌 青春の歌百首選(伊東一彦選)『まぼろしの椅子』今は誰にも見することなきわが素顔霧笛は鳴れり夜の海原に 587
歌壇 1991(平成3)年 4月 第五巻第4号 55 大西民子 1.短歌 特集 青春の歌 溢れ、流れつづける青春の歌 ー戦後の青春の歌の奇跡ー(岩田正選) かたはらにおく幻の椅子一つあくがれて待つ夜も今はなし 588
歌壇 1991(平成3)年 5月 第五巻第5号 133 大西民子 1.短歌 入門講座23「生きた短歌の作り方 飲食の歌」(高瀬一誌選)せめて深き眠りを得たし今宵ひとり食べ余したる林檎が匂ふ 589
歌壇 1991(平成3)年 6月 第五巻第6号 157 大西民子 1.短歌 「歌詠む人のための文語文法講座21 何を頼みに生きたらむ」(安田純生選)大西民子「十指を寄せて」より4首 590
歌壇 1991(平成3)年 6月 第五巻第6号 157 大西民子 1.短歌 なかで何か起こりゐるとも知らぬまま持ち歩く箱のごとし体は 591
歌壇 1991(平成3)年 6月 第五巻第6号 157 大西民子 1.短歌 見しことの無しと言ひたるわれのため十指をよせちて百合の木の花 592
歌壇 1991(平成3)年 6月 第五巻第6号 157 大西民子 1.短歌 聞き役に回りてあればふと立ちてジャスミンティーを入れ替へくれぬ 593
歌壇 1991(平成3)年 6月 第五巻第6号 157 大西民子 1.短歌 どのやうにおろされにけむかの大き薬種問屋の看板などは 594
歌壇 1991(平成3)年 7月 第五巻第7号 42 大西民子 1.短歌 1991年上半期の秀歌(辰巳泰子選)亡き人をあしざまに言ふを聞きをればわが死のあとのはかり知られず 595
歌壇 1992(平成4)年 4月 第六巻第4号 36 大西民子 1.短歌 「愛の歌百首選 河野裕子」桃の木は葉をけむらせて雨のなか共に見し日は花溢れゐき 596
歌壇 1992(平成4)年 5月 第六巻第5号 32 大西民子 1.短歌 「写実の歌五十選 昭和六十年から現在まで 来嶋靖生」消しゴムが目の前にあり火祭りを見て来てつねのわれに戻れば 597
歌壇 1992(平成4)年 5月 第六巻第5号 37 大西民子 1.短歌 「象徴の歌五十選 昭和六十年から現在まで 春日井健」なかで何が起こりゐるとも知らぬまま持ち歩く箱のごとしの体は 598
歌壇 1992(平成4)年 8月 第六巻第8号 68 大西民子 1.短歌 「特集 戦後の女流短歌を辿る 大西民子30首抄 大村陽子選」 599
歌壇 1992(平成4)年 8月 第六巻第8号 68 大西民子 1.短歌 かたはらにおく幻の椅子一つあくがれて待つ夜もなし今は 『まぼろしの椅子』 600
歌壇 1992(平成4)年 8月 第六巻第8号 68 大西民子 1.短歌 完(まった)きは一つとてなき阿羅漢のわらわらと起(た)ちあがる夜無きや 『不文の掟』 601
歌壇 1992(平成4)年 8月 第六巻第8号 68 大西民子 1.短歌 手に重き埴輪の馬の耳ひとつ片耳の馬はいづくにをらむ 602
歌壇 1992(平成4)年 8月 第六巻第8号 68 大西民子 1.短歌 わが合図待ちて従い来し魔女と落ちあふくらき遮断機の前 603
歌壇 1992(平成4)年 8月 第六巻第8号 68 大西民子 1.短歌 手をひかれのがれし記憶はろけきに短形に水を溜みゐし競技場(コート) 『無数の耳』 604
歌壇 1992(平成4)年 8月 第六巻第8号 68 大西民子 1.短歌 フィルムを逆に回せばまざまざと枯れ葉まとひて立ちあがる木々 605
歌壇 1992(平成4)年 8月 第六巻第8号 68 大西民子 1.短歌 紫いろの切手を貼れる手紙来て陥れむとするにあらずや 606
歌壇 1992(平成4)年 8月 第六巻第8号 68 大西民子 1.短歌 てのひらをくぼめて待てば青空の見えぬ傷より花こぼれ来る 607
歌壇 1992(平成4)年 8月 第六巻第8号 68 大西民子 1.短歌 藻の花のゆらぐを見ればいつの日も創(きず)を持つ魚(魚)の遅れて泳ぐ 『花溢れゐき』 608
歌壇 1992(平成4)年 8月 第六巻第8号 68 大西民子 1.短歌 エンヂンの波動かすかに伝ひゐて眠りの底に雪降りつもる 609
歌壇 1992(平成4)年 8月 第六巻第8号 68 大西民子 1.短歌 水そそぐ音に夜すがらたゆたひて何のかたちにわれは固まる 610
歌壇 1992(平成4)年 8月 第六巻第8号 68 大西民子 1.短歌 眠られぬ夜々に思へばみづからの羽根抜きて紡ぐよろこびも無し 611
歌壇 1992(平成4)年 8月 第六巻第8号 68 大西民子 1.短歌 ひぐらしの声かぶさりて来るゆふべ人を憚ることにも倦みぬ 612
歌壇 1992(平成4)年 8月 第六巻第8号 68 大西民子 1.短歌 いづくまで行きしや月の夜の更けをつゆけき犬となりて戻り来(く) 613
歌壇 1992(平成4)年 8月 第六巻第8号 68 大西民子 1.短歌 報復は神がし給ふと決めをれど日に幾たびも手を洗ふ 614
歌壇 1992(平成4)年 8月 第六巻第8号 68 大西民子 1.短歌 ここにゐる限りは見えて足の折れしガラスの鹿のふたたび立たず 『雲の地図』 615
歌壇 1992(平成4)年 8月 第六巻第8号 68 大西民子 1.短歌 ゆく末の見ゆるしづけさ室内に吊る干しもののゆるくまはれる 616
歌壇 1992(平成4)年 8月 第六巻第8号 68 大西民子 1.短歌 人の体に等高線をゑがける図見て立ちくれば身がやはらかし 617
歌壇 1992(平成4)年 8月 第六巻第8号 68 大西民子 1.短歌 道のべの紫苑の花も過ぎむとしたれの決めたる高さに揃ふ 『野分の章』 618
歌壇 1992(平成4)年 8月 第六巻第8号 68 大西民子 1.短歌 忘らるるより忘るるは易からむ白き孔雀のごとき雲湧く 619
歌壇 1992(平成4)年 8月 第六巻第8号 68 大西民子 1.短歌 いつとなく失ひており反動をつけて駆け出すよろこびなどは  『風水』 620
歌壇 1992(平成4)年 8月 第六巻第8号 68 大西民子 1.短歌 亡き人のたれとも知れず夢に来て菊人形のごとく立ちゐき 621
歌壇 1992(平成4)年 8月 第六巻第8号 68 大西民子 1.短歌 火をつけて放つ矢などは持たねども美しからむ夜空に曳きて 622
歌壇 1992(平成4)年 8月 第六巻第8号 68 大西民子 1.短歌 妻を得てユトレヒトに今は住むといふユトレヒトにも雨降らむか  『印度の果実』 623
歌壇 1992(平成4)年 8月 第六巻第8号 68 大西民子 1.短歌 この道をゆくほかはなくカーブミラーの映す枯れ野に近づきて行く 624
歌壇 1992(平成4)年 8月 第六巻第8号 68 大西民子 1.短歌 五百枚の原稿用紙買ひ持ちていまだ紙なる重さを運ぶ 625
歌壇 1992(平成4)年 8月 第六巻第8号 68 大西民子 1.短歌 バス停の標識白く点(とも)るころラマ僧二人いづこへ帰る  『風の曼陀羅』 626
歌壇 1992(平成4)年 8月 第六巻第8号 68 大西民子 1.短歌 オルゴールを閉づれば戻るしじまありよはひは既に乱を好まず 627
歌壇 1992(平成4)年 8月 第六巻第8号 68 大西民子 1.短歌 むじな偏の貌とうふ字を書きをれば人間といふ不可解のもの 628
歌壇 1992(平成4)年 8月 第六巻第8号 68 大西民子 1.短歌 五衰とふ衰亡の相ありといふわれに咀嚼の力衰ふ 629
歌壇 1992(平成4)年 12月 第六巻第12号 70 大西民子 1.短歌 1992(平成4)年の秀歌(安田純男選)女装かと思ひたれども金の環のピアスしてゐて耳が小さし 630
歌壇 1992(平成4)年 12月 第六巻第12号 96 大西民子 1.短歌 1992(平成4)年の歌集から(沖ななも選)『風の曼陀羅』 631
歌壇 1992(平成4)年 12月 第六巻第12号 96 大西民子 1.短歌 とりとめのなき花ながら藤ばかま束ねて色のやや濃くなりぬ 632
歌壇 1992(平成4)年 12月 第六巻第12号 96 大西民子 1.短歌 いかほどの時間がたちて地中よりにじみ出でたり紅の茸は 633
歌壇 1992(平成4)年 12月 第六巻第12号 96 大西民子 1.短歌 手すさびに拾ひたれども石は石の重さに土の匂ひをまとふ 634
歌壇 1993(平成5)年 2月 第七巻第2号 160 大西民子 4.その他 沢口芙美『大西民子の歌』(の書評) 浪漫的不幸感の本質へ 武下奈々子 635
歌壇 1993(平成5)年 2月 第七巻第2号 160 大西民子 1.短歌 降りやまぬ雨の奥よりよみがへり挙手の礼などなすにあらずや 636
歌壇 1993(平成5)年 5月 第七巻第5号 60 大西民子 1.短歌 ものを創る意識 篠弘  子供らの去りし図書室地球儀は印度洋の海を見せて傾く 637
歌壇 1993(平成5)年 5月 第七巻第5号 60 大西民子 1.短歌 帰り来てしづくのごとく光りゐしゼムクリップを畳に拾ふ 638
歌壇 1993(平成5)年 6月 第七巻第6号 14 大西民子 1.短歌 <同じ魚の名>木石にあらねばとたれの言ひにけむ笹を鳴らして春の雨降る 639
歌壇 1993(平成5)年 6月 第七巻第6号 14 大西民子 1.短歌 あいまいに言はれしのみに足どめに会ひたるひと日暮れゆかむとす 640
歌壇 1993(平成5)年 6月 第七巻第6号 15 大西民子 1.短歌 山葵いろの和菓子ひと棹賜ひたり界を隔てしはらからのため 641
歌壇 1993(平成5)年 6月 第七巻第6号 15 大西民子 1.短歌 女子大はひっそり今も在りしとぞ若草山を燃す日に行けば 642
歌壇 1993(平成5)年 6月 第七巻第6号 15 大西民子 1.短歌 源氏物語宿木のなかの古女ふるをんなとは老いたるをんな 643
歌壇 1993(平成5)年 6月 第七巻第6号 15 大西民子 1.短歌 寮生はみな若かりき同じ魚を別の名に呼び譲ることなし 644
歌壇 1993(平成5)年 6月 第七巻第6号 15 大西民子 1.短歌 コンピューターに笑はされたるモナ・リザはもう亡きわれの妹に似ず 645
歌壇 1993(平成5)年 6月 第七巻第6号 15 大西民子 1.短歌 鳩あまた空に放ちて終へにしが幾日か経てひつじ雲浮く 646
歌壇 1993(平成5)年 6月 第七巻第6号 16 大西民子 1.短歌 春の貝のスパゲッティでも召しませと書きたり介護終へたる人に 647
歌壇 1993(平成5)年 6月 第七巻第6号 16 大西民子 1.短歌 みづからを慎めむに振る香水の今日のミツコは少し甘きか 648
歌壇 1993(平成5)年 6月 第七巻第6号 16 大西民子 1.短歌 年長けて麝香は使ふと言ひゐしが若き身空にみまかりましぬ 649
歌壇 1993(平成5)年 6月 第七巻第6号 16 大西民子 1.短歌 紙屑が幾たびとなく舞ひあがり町に競輪のある日なりしか 650
歌壇 1993(平成5)年 6月 第七巻第6号 16 大西民子 1.短歌 木の上の十羽の鳩幾羽まで集まる待ちて地上を襲ふ 651
歌壇 1993(平成5)年 6月 第七巻第6号 16 大西民子 1.短歌 咲く花に会ふ日の無くてからたちの分厚き垣根とげだらけなる 652
歌壇 1993(平成5)年 6月 第七巻第6号 17 大西民子 1.短歌 ひしと待つ側(がは)にのみ居て嘆きしかつらかりぬけむ待たるる人も 653
歌壇 1993(平成5)年 6月 第七巻第6号 17 大西民子 1.短歌 猟犬を飼ひゐしい家はウガンダへなべてさすらふ春三月は 654
歌壇 1993(平成5)年 6月 第七巻第6号 17 大西民子 1.短歌 桃いろの色鉛筆もて罫引けば夜の机のはつか華やぐ 655
歌壇 1993(平成5)年 6月 第七巻第6号 17 大西民子 1.短歌 いつまでもふさがらぬ部屋を一つ持つ夜のマンション光の砦 656
歌壇 1993(平成5)年 6月 第七巻第6号 17 大西民子 1.短歌 やはらかに衿足にくる風のあり囲へる葱もかそかとなりぬ 657
歌壇 1993(平成5)年 6月 第七巻第6号 17 大西民子 1.短歌 日本中晴れて黄砂の舞ひしとぞるす守(も)る如くひと日ををれば 658
歌壇 1993(平成5)年 11月 第七巻第11号 36 大西民子 1.短歌 秋の名歌女流百首選 (栗木京子選)『野分の章』道のべの紫苑の花も過ぎむとしたれの決めたる高さに揃ふ 659
歌壇 1993(平成5)年 12月 第七巻第12号 42 大西民子 1.短歌 1993年の秀歌(香川ヒサ)耳を立てて聴く日は石にもありといふくぼみの水はいつの夜の雨 660
歌壇 1993(平成5)年 12月 第七巻第12号 45 大西民子 1.短歌 1993年の秀歌(中川 昭)もどしたる干し椎茸を洗ひゐて軟体はふとかなしみを呼ぶ 661
歌壇 1994(平成6)年 4月 第八巻第4号 68 大西民子 4.その他 (林田恒浩選) 「波濤」(平6.1)作者と読者をあたたかく、やさしくつなぐのは言葉、なるべくなら、言葉をえらんで品格のある作品を提示し合って行きたく存じます。 662
歌壇 1994(平成6)年 12月 第八巻第12号 46 大西民子 1.短歌 1994年の秀歌(黒田淑子)石鹸は石鹸の香に戻りゐて雨がちのまま立秋といふ 663
歌壇 1994(平成6)年 12月 第八巻第12号 46 大西民子 1.短歌 1994年の秀歌(黒田淑子)1993年11月号「短歌研究」押し売りに置いて行かれしゴムの木に若葉の出でて夏超さむとす 664
現代短歌 雁 1987(昭和62)年 4月 第1巻第2号 74 大西民子 1.短歌 女性の時代と女歌 実作者の問い 稲葉京子 三.年代の花 665
現代短歌 雁 1987(昭和62)年 4月 第1巻第2号 74 大西民子 1.短歌 大西民子『印度の果実』わだかまる藻のかたまりに波は来て力を試すさまに引き摺る 666
現代短歌 雁 1987(昭和62)年 4月 第1巻第2号 94 大西民子 1.短歌 歌の窓 大西民子歌集『印度の果実』 667
現代短歌 雁 1987(昭和62)年 4月 第1巻第2号 94 大西民子 1.短歌 薔薇あまた挿せる病室待ちて来し小さき辞書は開くことなし 668
現代短歌 雁 1987(昭和62)年 4月 第1巻第2号 94 大西民子 1.短歌 白百合の絵にまだ青きつぼみ見ゆつぼみも咲きて花終へにけむ 669
現代短歌 雁 1987(昭和62)年 4月 第1巻第2号 94 大西民子 1.短歌 さわだてるけはひ届かぬはろけさに椋鳥のむれはまた森へ落つ 670
現代短歌 雁 1987(昭和62)年 4月 第1巻第2号 94 大西民子 1.短歌 残さるることも幾たび夕立に袖濡らし来し喪服を吊るす 671
現代短歌 雁 1987(昭和62)年 7月 第1巻第3号 96-97 大西民子 1.短歌 「冬唱」こだまさへ還ることなきはろけさに古墳といへど枯れ草の丘 672
現代短歌 雁 1987(昭和62)年 7月 第1巻第3号 96-97 大西民子 1.短歌 「冬唱」岩鼻を獅子に見立てて獅子岩と呼ぶ伝承に守られて来し 673
現代短歌 雁 1987(昭和62)年 7月 第1巻第3号 96-97 大西民子 1.短歌 「冬唱」鳴き声を散らして飛ぶは何の鳥鴉は太き声に物言ふ 674
現代短歌 雁 1987(昭和62)年 7月 第1巻第3号 96-97 大西民子 1.短歌 「冬唱」竹林の秀(ほ)をひきしぼりひきしぼり絞り切れざる風のごとしも 675
現代短歌 雁 1987(昭和62)年 7月 第1巻第3号 96-97 大西民子 1.短歌 「冬唱」寄り合ひを終へし人らか出でて来て背中まるめて突風のなか 676
現代短歌 雁 1987(昭和62)年 7月 第1巻第3号 96-97 大西民子 1.短歌 「冬唱」稲藁の束は濡れゐて目の前に投げ出されたる体のごとし 677
現代短歌 雁 1987(昭和62)年 7月 第1巻第3号 96-97 大西民子 1.短歌 「冬唱」白木綿(しらゆふ)の折れてくねりて凍りたる滝はさだかに流路を見しむ 678
現代短歌 雁 1987(昭和62)年 7月 第1巻第3号 96-97 大西民子 1.短歌 「冬唱」少年は兄弟ならむ年かさの声が嗄れゐてバスを待ちあふ 679
現代短歌 雁 1987(昭和62)年 7月 第1巻第3号 96-97 大西民子 1.短歌 「冬唱」木簡のきれぎれのなか橘(きつ)といふ文字を読み得て香(か)の立つごとし 680
現代短歌 雁 1987(昭和62)年 7月 第1巻第3号 96-97 大西民子 1.短歌 「冬唱」誰(た)が星と思ふならねど夕まけて空の巽(たつみ)に光る星あり 681
現代短歌 雁 1987(昭和62)年 7月 第1巻第3号 96-97 大西民子 1.短歌 「冬唱」茫漠と明るかりしが網目よりぬけ出でて月の光となりぬ 682
現代短歌 雁 1987(昭和62)年 7月 第1巻第3号 96-97 大西民子 1.短歌 「冬唱」知り人の営む宿はひらがなの会津八一の書も親しけれ 683
現代短歌 雁 1987(昭和62)年 7月 第1巻第3号 96-97 大西民子 1.短歌 「冬唱」首寄せてありし人形(くぐつ)のたちまちにかたき同志となりて揉みあふ 684
現代短歌 雁 1987(昭和62)年 7月 第1巻第3号 96-97 大西民子 1.短歌 「冬唱」降りながら溶けゐる雪のけはひして父の忌の日も暮れゆかむとす 685
現代短歌 雁 1987(昭和62)年 7月 第1巻第3号 96-97 大西民子 1.短歌 「冬唱」耐えをれば耐へ得るわれと思はれて長き月日を交はりて来む 686
現代短歌 雁 1987(昭和62)年 7月 第1巻第3号 96-97 大西民子 1.短歌 「冬唱」夜の底に芯澄みて蝋燭の火の燃ゆと夢ともうつつともなく思ひをり 687
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 20-25 篠 弘 3.評論 「孤絶のユートピア」 688
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 22 大西民子 1.短歌 身代りに何を沈めて戻るべきいどむ如く来る夜の満ち潮 689
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 22 大西民子 1.短歌 雨の音聴きつつ夜半を目覚めゐて濡れて光りゐむ木膚を思ふ 690
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 22 大西民子 1.短歌 かたはらにおく幻の椅子一つあくがれて待つ夜もなし今は 691
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 22 大西民子 1.短歌 ながくわれを苛める貌もわが中に嚙み砕かれて像を結ばず 692
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 22 大西民子 1.短歌 神々も渇く夜あらむわがひとり夜更くればまた眠る外なく 693
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 23 大西民子 1.短歌 夢のなかといへども髪をふりみだし人を追ひゐきながく忘れず 694
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 23 大西民子 1.短歌 はばたきて降り来しは壁のモザイクの鳩なりしかば愕きて醒む 695
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 23 大西民子 1.短歌 踏みはづす夢ばかり見て来しわれか霧のなかより縄梯子垂る 696
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 23 大西民子 1.短歌 月の夜の墓より犬が曳き帰る或いは母の見余(みあま)せし夢 697
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 24 大西民子 1.短歌 手に重き埴輪の馬の耳ひとつ片耳の馬はいづくにをらむ 698
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 24 大西民子 1.短歌 わかち持つ遠き憶ひ出あるに似てひそかにゐたり埴輪少女と 699
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 24 大西民子 1.短歌 鹿占(ししうら)の亀裂の痕(あと)を透かしゐてひとりの心さへ見抜き得ず 700
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 24 大西民子 1.短歌 顔の無き土偶洗へばあらはにて女性を示すふくらみを持つ 701
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 24 大西民子 1.短歌 くびれたる箇所より不意にかき暗む内面もちて壺のふくらみ 702
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 24 大西民子 1.短歌 何遂げむ思ひともなし噴水と呼吸合ふまで立ちつくしゐて 703
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 24 大西民子 1.短歌 水滴を垂れつつ尖る(とが)りゆく氷柱(つらら)暗示にかかるごとく見てゐつ 704
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 24 大西民子 1.短歌 うらがへりまた裏返る海月(くらげ)のむれ藻となりてわれの漂ひゆけば 705
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 24 大西民子 1.短歌 てのひらをくぼめて待てば青空の見えぬ傷より花こぼれ来る 706
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 24 大西民子 1.短歌 遊牧の男の一人わが夜々の夢に入り来て汗を匂はす 707
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 24 大西民子 1.短歌 みづからを錘(おもり)となして沈みゆく夜々に藻草(もぐさ)のまつりはりやまず 708
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 25 大西民子 1.短歌 秒針がしきりにわれの髪に触れ廻ると思ひつつ眠りたり 709
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 25 大西民子 1.短歌 人のためなし得ることの小さくて短き釘をわれは戸に打つ 710
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 25 大西民子 1.短歌 憶測し苦しむわれと気づくとき同じ梢にまだ鶸はゐる 711
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 25 大西民子 1.短歌 仰向けの髪つくづくと梳かれゐて地軸といふはどの方角か 712
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 25 大西民子 1.短歌 報復は神がし給ふと決めをれど日に幾たびも手をわが洗ふ 713
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 26-29 今野寿美 3.評論 「たわめられた愛の姿」 714
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 28 大西民子 1.短歌 かたはらにおく幻の椅子一つあくがれて待つ夜もなし今は 715
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 28 大西民子 1.短歌 そらんじてゐし花言葉つぎつぎに置き忘れ来し月日と思ふ 716
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 28 大西民子 1.短歌 完(まった)きは一つとてなき阿羅漢のわらわらと起(た)ちあがる夜無きや 『不文の掟』 717
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 28 大西民子 1.短歌 結末をみづからも知らぬ物語書きつぎて二人を今日は逢はしむ 718
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 28 大西民子 1.短歌 てのひらをくぼめて待てば青空の見えぬ傷より花こぼれ来る 『無数の耳』 719
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 29 大西民子 1.短歌 あるを願ひあらぬを知りてゆく日々に返り花咲く額紫陽花は 『風水』 720
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 29 大西民子 1.短歌 行き違ひになりにしのみと知るまでにまた重ねたる歳月あり 『印度の果実』 721
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 30-33 真鍋正男 3.評論 「大様のいない夢」 722
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 30 大西民子 1.短歌 蕁麻(いらくさ)に触れし痺れの残りゐて脅やかされむまた沼の夢に 『不文の掟』 723
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 30 大西民子 1.短歌 森を抜けてのがるるごとく帰りしが眼裏(まなうら)に白き一枚の沼 『無数の耳』 724
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 30 大西民子 1.短歌 明けそめて沼のほとりのうすあかり思ひつつまた眠らむとする 『風水』 725
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 31 大西民子 1.短歌 よろぼへる心よ深きつまづきを如何に処理して踏み石とせむ 『まぼろしの椅子』 726
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 31 大西民子 1.短歌 石などに似て来しわれと思はねど石も呻くと聞けば歎かゆ 『花溢れゐき』 727
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 31 大西民子 1.短歌 強かりし男(お)の子もなべて滅びにき矛ふりかざし風化石像 『野分の章』 728
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 31 大西民子 1.短歌 ひとすぢの光の縄のわれを巻きたまゆるやかに戻りてゆけり 『花溢れゐき』 729
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 31 大西民子 1.短歌 どのように生きても一生繭なさぬ糸を吐きつぐ一生もあらむ 『風水』 730
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 31 大西民子 1.短歌 投槍(ジャベリン)の打ち込まれたる地表より見えぬ亀裂は八方に散る 『無数の耳』 731
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 31 大西民子 1.短歌 くれがたに群れとぶ見ればグレナダへ僧になりにゆく鴉ならずや 732
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 31 大西民子 1.短歌 藻(も)の花のゆらぐと見ればいつの日も創(きず)持つ魚(うを)の遅れて泳ぐ 『花溢れゐき』 733
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 31 大西民子 1.短歌 肩口より冷えつつ醒めてきららかに身に帯びゐたる鱗もあらず  『野分の章』 734
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 31 大西民子 1.短歌 へびむろにとぢこめられし如き日に数えふ領布(ひれ)さへわが持たざりき 『風水』 735
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 32 大西民子 1.短歌 鳴くこともあらず越えゆく沼の上鳥となりてもさびしきわれか 『花溢れゐき』 736
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 32 大西民子 1.短歌 鳥のときの風を窺ふ本能がよみがへりくる夜に醒めをれば 『雲の地図』 737
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 32 大西民子 1.短歌 くれがたに群れとぶ見ればグレナダへ僧になりにゆく鴉ならずや 『印度の果実』 738
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 32 大西民子 1.短歌 黄の蝶につきて出でゆき今ここにをらざるわれと誰も気づくな 『雲の地図』 739
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 32 大西民子 1.短歌 死のときはたれもひとりよまひまひは一粒のまま日の暮れむとす 『印度の果実』 740
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 32 大西民子 1.短歌 遠近の正しき絵にて動き得ぬ人間も牛の群れも苦しき 『無数の耳』 741
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 32 大西民子 1.短歌 日のくれに帰れる犬の身顫ひて遠き砂漠の砂撒き散らす 『花溢れゐき』 742
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 32 大西民子 1.短歌 わが合図待ちて従ひ来し魔女と落ちあふくらき遮断機の前 『不文の掟』 743
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 32 大西民子 1.短歌 鍵を見に戻らむとするうす暗がり橋掛(はしがかり)来る鬼に会わずや 『風水』 744
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 33 大西民子 1.短歌 あらかじめ笑ひの皺を頬に描くピエロと知りて欺かずなりぬ 『花溢れゐき』 745
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 33 大西民子 1.短歌 手に重き埴輪の馬の耳ひとつ片耳の馬はいづくにをらむ 『不文の掟』 746
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 33 大西民子 1.短歌 もし馬となりゐるならばたてがみを風になびけて疾(と)く帰り来(こ)よ 『雲の地図』 747
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 33 大西民子 1.短歌 死者あたま置きて砦を出づる夜に闇を恐れぬ一騎のあれよ 『野分の章』 748
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 33 大西民子 1.短歌 思はぬときに目に来る記憶の一つにて皇帝ハイレ・セラシュの写真 『雲の地図』 749
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 33 大西民子 1.短歌 切り株につまづきたればくらがりに無数の耳のごとき木の葉ら 『無数の耳』 750
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 33 大西民子 1.短歌 一本の木となりてあれゆさぶりて過ぎにしものを風とよぶべく 『風水』 751
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 33 大西民子 1.短歌 ヘッドライトに照らし出さるる夜の坂往(ゆ)きに見ざりし木が立ちあがる (未刊歌篇) 752
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 33 大西民子 1.短歌 白骨(しらほね)となりても遂げむことありや水に押されて水動きをり (未刊歌篇) 753
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 33 大西民子 1.短歌 遠ざかりしひとりのためにかなたなるマゼラン星雲けぶりてやまず 754
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 33 大西民子 1.短歌 オルゴール閉づれば戻るしじまありよはひは既に乱を好まず 755
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 34 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」死ぬときはひとりで死ぬと言ひ切りてこみあぐる涙耐へむとしたり 『まぼろしの椅子』 756
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 34 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」いつまでも待つと言ひしかば鎮まりて帰りゆきしかそれより逢はず 757
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 34 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」帰らざる幾月ドアの合鍵の一つを今も君は持つゐるらむか 758
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 34 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」翳ばかり見る如き日の続くなり壁の絵をドガの踊り子に替ふ 759
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 34 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」神々も渇く夜あらむわがひとり夜更くればまた眠る外なく 760
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 34 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」告げ難き悲しみを持つと知る母か薔薇切りて駅まで見送りくれぬ 761
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 34 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」かたはらにおく幻の椅子一つあくがれて待つ夜もなし今は 762
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 34 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」完(まった)きは一つとてなき阿羅漢のわらわらと起(た)ちあがる夜無きや 『不文の掟』 763
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 34 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」夢のなかといへども髪をふりみだし人を追ひゐきながく忘れず 764
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 34 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」手に重き埴輪の馬の耳ひとつ片耳の馬はいづくにをらむ 765
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 34 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」はばたきて降(お)り来しは壁のモザイクの鳩なりしかば愕きて醒む 766
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 34 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」指貫(ゆびぬき)をはめしままなる夜の眠り夫の記憶もはるかとなりぬ 767
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 34 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」わが合図待ちて従ひ来し魔女と落ちあふくらき遮断機の前 768
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 34 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」流亡の相(さう)と言はれし中指の渦紋も夏の手袋に秘む 769
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 34 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」みづからの吐きし言葉に縛られむ森ゆけば木々の生傷(なまきず)匂ふ 770
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 34 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」前髪(まえがみ)に雪のしづくを光らせて訪(おとな)はむ未知の女のごとく 771
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 35 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」噴水の元栓をとめて人去れば森より早くこころかげりぬ 『無数の耳』 772
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 35 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」大西民子自選100首 くびれたる箇所より不意にかき暗む内面もちて壺のふくらみ 773
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 35 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」木耳(きくらげ)を剥ぎゆく魔物見し日より日毎に烈しは林の落ち葉 774
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 35 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」いつとなくわれの纏(まと)へる影に似て敏(さと)く曇りを張る銀の匙 775
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 35 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」石臼のずれてかさなりゐし不安よみがへりつつ遠きふるさと 776
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 35 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」切り株につまづきたればくらがりに無数の耳のごとき木の葉ら 777
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 35 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」内実にそぐわぬ顔を持ち歩く朴あれば朴の花仰ぎつつ 778
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 35 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」宿り木の青みわたれる森を行くつめたき陶(たう)の卵を持ちて 779
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 35 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」年々に聴きなれし竹の落ち葉なれ雨かと醒めし妹が問ふ 780
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 35 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」いつの間に杉葉長けゐる水のほとりわが沈めたる斧も還るや 781
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 35 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」煽られし楽譜を拾ふ時の間にドビッシーもわれは逃がしてしまふ 782
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 35 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」丈長く切り来し菖蒲(あやめ)手向けつつ人に知られぬゆかりも過ぎぬ 783
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 35 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」バス降りし闇に思へば若者は蛇象(かたど)れる指環してゐき 784
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 35 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」骨格のどこかゆがむと見て来し絵かの馬などが夜々に殖えゆく 785
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 35 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」てのひらをくぼめて待てば青空の見えぬ傷より花こぼれ来る 786
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 35 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」ひび入りて伏せおく大き甕ひとつみどり児の声漏るる夜無きか 787
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 35 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」鎮まらぬこころのごとく夜もすがら風を集めて鳴る梢あり 『花溢れゐき』 788
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 35 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」藻(も)の花のゆらぐと見ればいつの日も創(きず)持つ魚(うを)の遅れて泳ぐ 789
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 35 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」伝言板のわが名すばやく拭き消して駅を出づれば木枯らしの町 790
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 35 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」眠られぬ夜々に思へばみづからの羽根抜きて紡ぐよろこびも無し 791
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 35 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」日のくれに帰れる犬の身顫ひて遠き砂漠の砂撒き散らす 792
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 36 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」降りやまぬ雨の奥よりよみがへり挙手の礼などなすにあらずや 793
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 36 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」みづからの手では滅ぶなといふ言葉思ひ出づるはいかなる時か 794
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 36 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」ひとすぢの光の縄のわれを巻きたまゆるやかに戻りてゆけり 795
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 36 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」報復は神がし給ふと決めをれど日に幾たびも手をわが洗ふ 796
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 36 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」人間ひとりの骨の嵩(かさ)ふと思ひたり落ちてしづまる棕櫚の葉の雪 『雲の地図』 797
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 36 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」バスを降りし人ら夜霧のなかを去る一人一人に切りはなされて 798
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 36 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」円柱は何れも太く妹をしばしばわれ視野から奪ふ 799
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 36 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」日の暮れに連れ出づる犬の在らぬこと思ひてをれば妹の言ふ 800
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 36 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」山脈も芽ぐむ木立も遠く澄み空からこはれてくるやうな日よ 801
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 36 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」始まりも終はりも知らず生きゐると小さく署名なすとき思ふ 802
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 36 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」水道をとめて思へばかなしみは叩き割りたき塊(かたまり)をなす 803
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 36 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」灰いろの葡萄つくるくさきりもなくつなぎてゆけり眠りのなかに 804
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 36 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」亡き人のショールをかけて街行くにかなしみはふと背にやはらかし 805
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 36 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」つまづきて足もとを見しときのまに身に憑きゐたる何か失ふ 806
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 36 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」もし馬となりゐるならばたてがみを風になびけて疾(と)く帰り来(こ)よ 807
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 36 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」栗の花の匂へば雨になるといふ雨の日曜はさびしきものを 808
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 36 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」音のして闇にめざむる驚きは野に棲む兎もわれもかはらぬ 809
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 36 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」玉虫をあまた集めき玉虫をなべて逃がしきこの白き手に 810
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 36 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」人の体に等高線をゑがける図見て立ちくれば身がやはらかし 811
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 36 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」亡き人の使ひ残せる香水も飛びて小さき瓶すきとほる 812
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 36 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」青みさす雪のあけぼのきぬぎぬのあはれといふも知らで終はらむ 813
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 37 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」道のべの紫苑の花も過ぎむとしたれの決めたる高さに揃ふ 『野分の章』 814
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 37 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」心臓のかたちといふを思ひたり動悸して闇にめざめゐしとき 815
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 37 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」足もとの枯れ草に火を放つとも溶けず残らむわが石一つ 816
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 37 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」新聞を畳まむとして起こしたる風に驚く夜更けのわれは 817
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 37 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」自転車に行く人の影犬の影犬の啼くき声はみんな似てゐる 818
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 37 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」妹の分も生きよと言はれしが墓碑をうづめて春の雪降る 819
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 37 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」わがために織るとし聞けばいまだ見ぬオーロラのごとし一枚の布 820
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 37 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」仏像を仰ぎてをれば欲望の数だけの手を持つかと思ふ 821
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 37 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」四つ割りにしたるレモンの切り口のみづみづみと黄の半月をなす 822
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 37 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」地下深く何祝(ほ)ぎごとのあらむ日か花サフランの湧き出でて咲く 823
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 37 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」なさぎりし見ざりし筈は深からむなしたる罪の多く問はるる 『風水』 824
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 37 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」うち揃ひ夕餉なしたる日のありき小さき額の絵のごとく見ゆ 825
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 37 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」予告なきもののみにして目の前のマンホールから人の出でくる 826
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 37 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」亡き人の真珠の耳輪手にのせてかなしみはふとわれを清くす 827
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 37 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」夕刊を取りきみドアの鍵一つかけてしまへば夜の檻のなか 828
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 37 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」なまじろき鱗をかさねゐたるのみ闇のなかなるあぢさゐの花 829
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 37 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」働きて狭く生きつつ死に顔に知れるのみなるおもかげ幾つ 830
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 37 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」春の虹あえかに立てば事務室のたれもやさしく窓ぎはに寄る 831
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 37 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」いつ見たる門とも知れず夢に見て椿散る坂をのぼりゆきたり 832
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 37 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」自画像の頬をこの夜もそぎゐつつ極道と呼ぶ生き方に似む 833
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 37 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」はろばろと幟なびけて虫送りの行列などはいづち行きけむ 834
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 38 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」ゆらぎつつしづもりにつつ松の花かそかに天の中枢へ向く 835
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 38 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」遠ざかりつつ一縷なる思ひゆゑ風にまぎれてかよはむわれは 836
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 38 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」風邪のあとの身をたゆくゐし夕まぐれ人に頼めぬ買い物に出づ 『印度の果実』 837
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 38 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」駅前の放置自転車神々に見放されたる病のごとし 838
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 38 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」妻を得てユトレヒトに今は住むというユトレヒトにも雨降るらむか 839
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 38 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」吸呑を濯ぎてをれば効用に合わせて作られしもののかたちよ 840
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 38 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」トランプのうらないをして夜にをれば隣の部屋は暗闇の箱 841
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 38 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」青銅の像を見れば胸板のつめたかりにし夜を忘れず 842
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 38 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」池水の底の闇よりのぼりくる幽鬼のごとし真鯉の顔は 843
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 38 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」とりたてて思ふならねど静かにてかなしきときに歌の生まるる 844
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 38 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」不発弾の処理の終はれる野の上に洋凧をあげて子らは遊べり 845
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 38 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」梵鐘はただにしづもりゐたりしが中世の冬のごとき日ざしよ 846
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 38 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」家づとに絵蝋燭買ひバス待てば何かかなしみを持ちたる如し 847
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 38 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」電話のベル鳴りつぎゐるはどの家かよしなき耳を持ちて歩めり 848
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 38 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」み柩に白菊入れまつるこの世の顔を寄せあひにつつ 849
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 38 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」みそなはすすべきなものを喪の花の蘭は白磁のさまにしづもる 850
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 38 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」そのままを告げよとならば声あげてきゆんと泣きたき思ひと言はむ 851
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 38 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」敗れたる牛は如何にか映像は勝てる牡牛をしばらく見しむ 852
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 38 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」霊柩車を先立ててゆくバスのなか不意に時刻を問ひし人あり 853
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 38 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」蕗の葉の大きくひあらくしづけさに石の手を組む石の羅漢は 854
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 38 大西民子 1.短歌 「大西民子自選100首」五百枚の原稿用紙買ひ持ちていまだ紙なる重さを選ぶ 855
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 39 大西民子 4.その他 大西民子著書解題 和泉鮎子 856
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 40 大西民子 1.短歌 「今日の顔」右の耳をうづめて眠りゐたるまに春の嵐の一つ過ぎゐし 857
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 40 大西民子 1.短歌 「今日の顔」山桜花(はな)の散りしく明るさに白拍子(しらびょうし)など出でて舞はずや 858
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 40 大西民子 1.短歌 「今日の顔」同じものを食(は)みあひてくらしたる日あり他界のことの如くに思ふ 859
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 40 大西民子 1.短歌 「今日の顔」断ちがたき願ひなれどなれども頬の紅やや濃く刷(は)きて今日の顔とす 860
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 40 大西民子 1.短歌 「今日の顔」鏡より顔を剥がしてふり向けば何かが立ちてゐて隠れたり 861
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 40 大西民子 1.短歌 「今日の顔」出でて来て人は小さくビル群の棒線グラフにとりかこまるる 862
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 40 大西民子 1.短歌 「今日の顔」低く飛ぶヘリコプターを仰ぐ目の水晶体の斑(ふ)もさびしけれ 863
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 40 大西民子 1.短歌 「今日の顔」かぶさりて樟(くす)の大樹は生(お)ひゐしが体育館も木陰もあらず 864
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 40 大西民子 1.短歌 「今日の顔」ピノキオの人形なりしころのままぎくしゃくとありわれもわが身も 865
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 40 大西民子 1.短歌 「今日の顔」人に告げぬ秘密となしき風信子をヒアシンスの名と知るりしことなど 866
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 41 大西民子 1.短歌 「今日の顔」わが孫のほどの少女よ声もなく日傘をさしてボートにゐしは 867
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 41 大西民子 1.短歌 「今日の顔」幾つもに音を区切りて貨車は行き違ふ風景が見えくるごとし 868
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 41 大西民子 1.短歌 「今日の顔」毀(こば)ちたる家屋の木ぎれ燃(も)す見れば得体の知れぬものも燃すばり 869
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 41 大西民子 1.短歌 「今日の顔」はやぶさと呼ぶ戦闘機ありにしがかげろふを追うごときはろけさ 870
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 41 大西民子 1.短歌 「今日の顔」畳まれて届く小さき正方形眼鏡を磨く新素材とぞ 871
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 41 大西民子 1.短歌 「今日の顔」宵に咲く花のめざむるころならむ楱(はん)の幹よりたそがれそめぬ 872
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 41 大西民子 1.短歌 「今日の顔」種子の生(な)らぬ三倍体の花といふ風の絶えたる夜目(よめ)にゆれあふ 873
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 41 大西民子 1.短歌 「今日の顔」隙間なく活字詰まれる紙面より飛び出してくるわれの名あはれ 874
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 41 大西民子 1.短歌 「今日の顔」夜の空を翔(か)けて落ちしは何の鳥今際(いまは)の声と思ふ声せり 875
現代短歌 雁 1989(平成元)年 10月 第3巻第3号(通巻12号) 41 大西民子 1.短歌 「今日の顔」千年を生くるにあらず中天に白くたゆたふ月夜の雲は 876
現代短歌 雁 1992(平成4)年 7月 第6巻第3号(通巻23号) 104 大西民子 1.短歌 「歌の窓」大西民子歌集『風の曼陀羅』あした着る衣服確かめ眠らむに夜空に遠く風の音する 877
現代短歌 雁 1992(平成4)年 7月 第6巻第3号(通巻23号) 104 大西民子 1.短歌 「歌の窓」大西民子歌集『風の曼陀羅』ふり返る視野昏れてゐてゆるやかに細く女滝は落ちてゐにけり 878
現代短歌 雁 1992(平成4)年 7月 第6巻第3号(通巻23号) 104 大西民子 1.短歌 「歌の窓」大西民子歌集『風の曼陀羅』どのやうにおろされにけむかの大き薬種問屋の看板などは 879
現代短歌 雁 1992(平成4)年 7月 第6巻第3号(通巻23号) 104 大西民子 1.短歌 「歌の窓」大西民子歌集『風の曼陀羅』使ひふるしし物ばかりなる身のほとりメジャーはすぐに棙れてしまふ 880
現代短歌 雁 1992(平成4)年 10月 第6巻第4号(通巻24号) 74~83 大西民子 4.その他 座談会=いま、女歌をめぐって 小高賢+河野裕子+水原紫苑 司会;高野公彦 881
短歌往来 1989(平成元)年 6月 創刊号 62 大西民子 1.短歌 (作品月評 四月号より 松岡盟子)ただの岩の金雛形とみておれど水を引き寄せまた引き返す 882
短歌往来 1989(平成元)年 7月 第1刊第2号 18 大西民子 1.短歌 今生の目 (村木道彦選) 883
短歌往来 1989(平成元)年 7月 第1刊第2号 18 大西民子 1.短歌 「迷はずに落つ」集まりて降るにもあらぬ梅雨の雨ひとすぢひとすぢ迷はずに落つ 884
短歌往来 1989(平成元)年 7月 第1刊第2号 18 大西民子 1.短歌 「迷はずに落つ」アイリスを活け替へをれば賜はりしいとまと思ふまでに癒えきぬ 885
短歌往来 1989(平成元)年 7月 第1刊第2号 18 大西民子 1.短歌 「迷はずに落つ」読みさしを机に伏せて出で来しが迎への舟の待つにもあらぬ 886
短歌往来 1989(平成元)年 7月 第1刊第2号 18 大西民子 1.短歌 「迷はずに落つ」路面よりやや浮き立ちて夏草の短き橋はかかりゐにけり 887
短歌往来 1989(平成元)年 7月 第1刊第2号 18 大西民子 1.短歌 「迷はずに落つ」品触れの珊瑚の如くかがよひて尾を垂らしゐるかんざし一つ 888
短歌往来 1989(平成元)年 7月 第1刊第2号 18 大西民子 1.短歌 「迷はずに落つ」簪の占ひといふがありにしがなにゆゑ偶数を凶としにけむ 889
短歌往来 1989(平成元)年 7月 第1刊第2号 18 大西民子 1.短歌 「迷はずに落つ」夜の道に投げ出されたる洋傘に降りゐし雪は今も目に見ゆ 890
短歌往来 1989(平成元)年 10月 第1刊第5号 64 大西民子 1.短歌 (作品月評 八月号より 松岡盟子)「雁」12月号 鏡より顔を剥がして振り向けば何かが立ちてゐて隠れたり 891
短歌往来 1989(平成元)年 10月 第1刊第5号 64 大西民子 1.短歌 (作品月評 八月号より 松岡盟子)「雁」12月号 隙間なく活字詰まれる紙面より飛び出してくるわれの名あはれ 892
短歌往来 1989(平成元)年 10月 第1刊第5号 65 大西民子 1.短歌 (歌碑を訪ねて 大西民子の歌碑 伊藤道子 菩提寺のほとりに)一本の木となりてあれゆさぶりて過ぎにしものを風と呼ぶべく 893
短歌往来 1989(平成元)年 12月 第1刊第7号 54 大西民子 1.短歌 全国の歌壇を知る⑭埼玉県(金子貞夫選)集まりて降るにもあらぬ梅雨の雨ひとすぢひとすぢ迷はずに落つ 894
短歌往来 1990(平成2)年 6月 第2刊第6号 37 大西民子 1.短歌 「旅のうた62首ー近代・現代」中野昭子 選 逆波(さかなみ)の光れる海に日もすがら向きゐてわれは岩にもなれず 895
短歌往来 1991(平成3)年 1月 第3刊第1号 8 大西民子 1.短歌 「ひとりぐらゐは」夫とわれと共に働く生活の七年にして或る日終はりき 896
短歌往来 1991(平成3)年 1月 第3刊第1号 8 大西民子 1.短歌 「ひとりぐらゐは」けものみちをあらはに見せて風が吹くただ熊笹の音のみのして 897
短歌往来 1991(平成3)年 1月 第3刊第1号 8 大西民子 1.短歌 「ひとりぐらゐは」出土せる黄金の鐙ありと言ひ旅びとは今日も駅に溢るる 898
短歌往来 1991(平成3)年 1月 第3刊第1号 8 大西民子 1.短歌 「ひとりぐらゐは」すれすれに地上を飛べる子雀も次第に角度をあげてゆくらむ 899
短歌往来 1991(平成3)年 1月 第3刊第1号 8 大西民子 1.短歌 「ひとりぐらゐは」風立てば幹ながら木を傾けて振り落とす如き楓もみぢ葉 900
短歌往来 1991(平成3)年 1月 第3刊第1号 9 大西民子 1.短歌 「ひとりぐらゐは」園児らの三分の一ほど残されて踏切の手前しばし賑はふ 901
短歌往来 1991(平成3)年 1月 第3刊第1号 9 大西民子 1.短歌 「ひとりぐらゐは」料亭の建仁寺垣に沿ひて来て曇り日が似合ふ町と思ひぬ 902
短歌往来 1991(平成3)年 1月 第3刊第1号 9 大西民子 1.短歌 「ひとりぐらゐは」家並みを貫きて通るハイウェイの高さに桐は実を揚げゐつ 903
短歌往来 1991(平成3)年 1月 第3刊第1号 9 大西民子 1.短歌 「ひとりぐらゐは」停留所は落ち葉日溜まり癒えてまた立つ日のありと思はざりけり 904
短歌往来 1991(平成3)年 1月 第3刊第1号 9 大西民子 1.短歌 「ひとりぐらゐは」机より咄嗟に立ちて来し厨白粥の湯気に眼鏡くもらす 905
短歌往来 1991(平成3)年 1月 第3刊第1号 9 大西民子 1.短歌 「ひとりぐらゐは」何ほどの予知能力を持つ鳥か病みゐて鴉を怖れし日あり 906
短歌往来 1991(平成3)年 1月 第3刊第1号 9 大西民子 1.短歌 「ひとりぐらゐは」駅前の大小のビルが浮かびたり「街」といふ字を見詰めてあれば 907
短歌往来 1991(平成3)年 1月 第3刊第1号 9 大西民子 1.短歌 「ひとりぐらゐは」多分夢と思ひつつなほ走りたり逃げても逃げてもつかまりさうで 908
短歌往来 1991(平成3)年 1月 第3刊第1号 10 大西民子 1.短歌 「ひとりぐらゐは」歌に知る消息にして仙台のアカンサスは今年咲かざりしとぞ 909
短歌往来 1991(平成3)年 1月 第3刊第1号 10 大西民子 1.短歌 「ひとりぐらゐは」冬服のベストを着たる少女たちセーラー服は少なくなりぬ 910
短歌往来 1991(平成3)年 1月 第3刊第1号 10 大西民子 1.短歌 「ひとりぐらゐは」港まちの教師をしをれば鯨長者の娘もゐたりきわが教室に 911
短歌往来 1991(平成3)年 1月 第3刊第1号 10 大西民子 1.短歌 「ひとりぐらゐは」使ひふるせしものばかりなる身のほとりメジャーはすぐによぢれてしまふ 912
短歌往来 1991(平成3)年 1月 第3刊第1号 10 大西民子 1.短歌 「ひとりぐらゐは」北を指し飛ぶ一番機敵機かと目ざめて今も思ふことあり 913
短歌往来 1991(平成3)年 1月 第3刊第1号 10 大西民子 1.短歌 「ひとりぐらゐは」クリークに落ちてかへらぬ兵ありき同級の一人なれば忘れず 914
短歌往来 1991(平成3)年 1月 第3刊第1号 10 大西民子 1.短歌 「ひとりぐらゐは」根の国にみんな盗られてこの年もただ雪を待つのみとなりたり 915
短歌往来 1991(平成3)年 1月 第3刊第1号 10 大西民子 1.短歌 「ひとりぐらゐは」階段まで灯をともし待ちをればひとりぐらゐは戻りて来ずや 916
短歌往来 1991(平成3)年 11月 第3刊第11号 2-3 大西民子 1.短歌 「白い海」兜型の鉄の文鎮を呉れむとしまだ重きかと父は問ひにき 917
短歌往来 1991(平成3)年 11月 第3刊第11号 2-3 大西民子 1.短歌 「白い海」袂(たもと)には小石を詰めて入水(じゅすい)すと和服着てゐしころなりしかば 918
短歌往来 1991(平成3)年 11月 第3刊第11号 2-3 大西民子 1.短歌 「白い海」「つなぎ」といふ役目の老いし俳優は波止場に白い海を見てゐし 919
短歌往来 1991(平成3)年 11月 第3刊第11号 2-3 大西民子 1.短歌 「白い海」父はまた転勤となりかの海のはまなすの実は見ずに終へにき 920
短歌往来 1991(平成3)年 11月 第3刊第11号 2-3 大西民子 1.短歌 「白い海」鹿のやうに耳が動くといふ人の耳の動くを見ず卒業す 921
短歌往来 1991(平成3)年 11月 第3刊第11号 2-3 大西民子 1.短歌 「白い海」葉の裏を選びて虫は這ふといふ小さき虫も生きねばならず 922
短歌往来 1991(平成3)年 11月 第3刊第11号 2-3 大西民子 1.短歌 「白い海」C棟の六階にして幾夜さかあかりのつかぬひとところあり 923
短歌往来 1991(平成3)年 11月 第3刊第11号 2-3 大西民子 1.短歌 「白い海」いつの世も同じならむに弱き者が蹴散らかされるる今の世と言ふ 924
短歌往来 1991(平成3)年 11月 第3刊第11号 2-3 大西民子 1.短歌 「白い海」玉すだれの花の一列いつのまに斜め歩きをしてゐしわれに 925
短歌往来 1991(平成3)年 11月 第3刊第11号 2-3 大西民子 1.短歌 「白い海」闇の奥へまた走り出すなににかに堰かれてゐたる野火の穂先は 926
短歌往来 1992(平成4)年 1月 第4刊第1号 73 石田比呂志 3.評論  作品月評 11月号より「短歌往来」1991年11月号の大西民子さんの短歌10首(上記)の批評 927
短歌往来 1993(平成5)年 4月 第5巻第4号 67 関根榮子 3.評論 書評●沢口芙美著『大西民子の歌』● 大西民子の真髄へ 928
短歌往来 1993(平成5)年 9月 第5巻第9号 2-3 大西民子 1.短歌 「昔も今も」あやまたず白の子山羊が生まれしとめづらしきことの如く告げくる 929
短歌往来 1993(平成5)年 9月 第5巻第9号 2-3 大西民子 1.短歌 「昔も今も」晴れ女雨をんななどと言ひ合ひて少女らはをりバス待ちながら 930
短歌往来 1993(平成5)年 9月 第5巻第9号 2-3 大西民子 1.短歌 「昔も今も」かかはりのあるならねども右の手を先立てて危ふく走るみどりご 931
短歌往来 1993(平成5)年 9月 第5巻第9号 2-3 大西民子 1.短歌 「昔も今も」朝摘みの蚕豆をむくわが爪はうすももいろのマニュキュアのまま 932
短歌往来 1993(平成5)年 9月 第5巻第9号 2-3 大西民子 1.短歌 「昔も今も」もどしたる干し椎茸を洗ひゐて軟体はふとかなしみを呼ぶ 933
短歌往来 1993(平成5)年 9月 第5巻第9号 2-3 大西民子 1.短歌 「昔も今も」さかさあまに切手は貼りて合図する手紙ありけり寮生われに 934
短歌往来 1993(平成5)年 9月 第5巻第9号 2-3 大西民子 1.短歌 「昔も今も」クレオパトラのことのみをよく覚えゐて答案に書く女生徒をりき 935
短歌往来 1993(平成5)年 9月 第5巻第9号 2-3 大西民子 1.短歌 「昔も今も」家族ぐるみコーン刈る見て故里を思ふとホームステイの少女 936
短歌往来 1993(平成5)年 9月 第5巻第9号 2-3 大西民子 1.短歌 「昔も今も」目の覚めむころ炊きがるセットして預けおく如しわれのひと夜を 937
短歌往来 1993(平成5)年 9月 第5巻第9号 2-3 大西民子 1.短歌 「昔も今も」耳を立てて聴く日は石にもありといふくぼみの水はいつの夜の雨 938
短歌往来 1993(平成5)年 9月 第5巻第9号 26-30 真鍋正男 3.評論 「象徴としての鳥ー飛翔願望と県民性」五 鳥のうたの諸相 939
短歌往来 1993(平成5)年 9月 第5巻第9号 29 大西民子 1.短歌 かたまりて沼のくらがりに眠るらむ眠れぬ鴨はどうするならむ 940
短歌往来 1993(平成5)年 9月 第5巻第9号 29 大西民子 1.短歌 作品月評 七月号より 白石昇「短歌現代」たれも居なくなりても咲かむ糸桜雌蕊雄蕊のひそとととのふ 941
短歌往来 1993(平成5)年 12月 第5巻第12号 51 大西民子 1.短歌 [春の名歌・雨の名歌50首抄]今野寿実美 選 てのひらをくぼめて待てば青空の見えぬ傷より花こぼれくる 942
短歌往来 1994(平成6)年 6月 第6巻第5号 68-69 中島やよひ 4.その他 「追悼 大西民子 先生の椅子」 943
短歌往来 1994(平成6)年 6月 第6巻第5号 70-71 椎野とみ子 4.その他 「追悼 大西民子 最後の愛人」一代かけてわれは何せむ三代をかけて出づるとふ黒薔薇のいろ 944
短歌往来 1994(平成6)年 6月 第6巻第5号 70-71 椎野とみ子 4.その他 「追悼 大西民子 最後の愛人」有耶無耶にしておくこともよしなきに空路届きし紅薔薇匂ふ 945