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(二八五)和泉大掾九平

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 【堺の彫工】和泉大掾九平は堺の彫刻工である。寬永中、【東照宮拜殿の額羽目を彫刻す】日光東照宮の造營に方り、拜殿將軍着座の間竝に法親王着座の間の額羽目各四枚は、九平の彫琢になつたものと傳へられてゐる。白檀の大板に前者は全面麻の葉繋ぎの地彫に、鳳凰に樹木等を、後者は龜甲繋ぎの地紋に、鷲に樹木等を配し、鳥類の眼には水晶を入れ、紫檀黑檀、鐵刀木、檳榔樹等の寄木半肉刻で、嵌め込細工に仕上げたものである。(日光東照宮修營誌、日光東照宮百話)鳥類の翼、羽毛、觜、冠、脚の爪に至るまで、又樹木の古葉と若葉、花と蕾、葉柄、葉脈の末に至るまで、一々其部分にふさはしい色彩の唐木を以て寄木彫にしたもので、其一枚の大さ略々大形の襖一枚程に當り、刀痕に緻纖細を極め、名工苦心の狀が偲ばれる。歿年、世壽等は詳かでない。