石鏃は前葉では、先頭部が狭長な二等辺三角形に茎をつけた有柄石鏃が主であり、これに無柄石鏃、柳葉形の石鏃などがわずかに見られる。中葉には、先頭部が比較的短かく、正三角形に茎をつけた小形の形態が主となり、無柄、柳葉形のものがわずかに混じる。後葉になると、無柄の二等辺三角形のものが多く見られる傾向がある(図18-1~8)。
図-18 縄文後期の石器・土製品
(1~18・21~23:T361遺跡,19:手稲遺跡,20:N293遺跡)
中期にもっとも盛行する石銛はほとんど見られなくなり、生業形態の差を鮮やかに表わしている。
ナイフの類は、相変わらずつまみのついた縦形と横形が主体であり、つまみの作り出しが明らかになるほかはあまり大きな変化が見られない(図18-9~12)。
石錐類の発達は著しく、棒状のものの他につまみをつけ刃先を長く作り出す形態が増加する。後期に特に発達する木製品、骨角器などの加工と軌を一にした増加と見ることができよう(図18-13~16)。
礫石器類では、周囲をていねいに整形し、なかには脚まで作り出す手のこんだ石皿(石臼)が出現し(図18-20)、この時期の人々の道具に対する感覚をかい間見ることができる。石皿と対で使用される擦石は、前段階までの定型的なものが少なくなり、しかも量的にも著しく減少する。