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生業の諸相

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 擦文時代の生業の問題については、最近遺跡の発掘調査で土壌のフローテーション(浮游選別法)が盛んに行われるようになり、具体的な内容が次第に明らかになってきた。
 旧琴似川水系内にあるサクシュコトニ川遺跡を例にみると、ここからは多量のサケ科魚類の骨がみつかり、またサケ等を有効に捕るための「テシ」(魚止めの堰(せき)、図8)も発見されていることから、主要な食料資源の一つは旧琴似川にかつて大量に遡上したといわれるサケ・マス類(写真3)であったと考えられる。さらに、オオムギ、コムギ、アワ、キビをはじめとする栽培植物も多量にみつかっており、定住的な集落を維持するためサケ・マス類、シカを中心とした陸獣などの動物性蛋白質のほかに穀類も安定供給される必要から、ある程度の規模の農耕が存在したことは充分考えられる。しかも、旧琴似川流域に関していえば、遺跡およびその後背地は、平坦な沖積地で農耕に適した条件をもっており、その点道東域とはかなり性格の異なる集落であった可能性もある。

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図-8 魚止めの堰〔テシ〕(サクシュコトニ川遺跡)


写真-3 K441遺跡北34条地点出土の魚骨
(サケ属、コイ科ほか)