札幌市内にも多くの先史時代の遺跡が残されているが、どういうわけか、それらの遺跡から古人骨は一例も検出されていなかった。最近になって、西区手稲前田のN二九五遺跡から、札幌市教育委員会の手によって、ヒトの歯の破片が発見されたが、これが待望の第一号人骨である。この遺跡の調査報告書によれば、この歯は続縄文時代の墓から検出されたものである。
残存するのは歯冠の破片のみで、これだけから年齢や性別を判定することはできないが、上顎と下顎の歯列がきちんと並んでいることを確認することができる(写真1)。歯冠片の大きさと形態からみて、この歯が人間のものであることは間違いない。
写真-1 手稲前田N295遺跡出土の人歯