区内の街路が水田状態になるのは、国費での補修をしていた頃に比べ、区役所の補修・整備が「姑息的彌縫的申訳的の修繕」で土砂を敷き均す程度のものであったためである(北タイ 明35・12・19)。中心部から少し離れた南二条西一二丁目では、西一一丁目まで改修されたにもかかわらず、西一二丁目の道路は修繕されなかった。そして西一二丁目の住民には高額納税者が多いことを指摘している(北タイ 大3・11・23)。毎年改修される中央道路に比べ、改修されることのない山鼻や苗穂の道路への不満などが表明された(北タイ 大3・11・25、12・1)。
このような道路への不満に対して、個別の事例への対応は不明であるが、道路の修繕作業は、大下水修繕・橋梁修繕などとともに毎年多額の費用を割いて行われた。表13は、札幌区の経常費決算の土木費とその内訳の一部である。ただし道路開削や下水開削などは臨時部土木費に計上されていて、年によっては経常費中の土木費額を超えることもある。臨時部土木費の道路開削費の多くが、下記の区画整理や新町名設置のための道路開削費であろう。
表-13 土木費決算額 |
年 | 土木費 | 第一項 道路橋梁費 | 土木費第一項内訳(主要なもの) | 札幌区経常部 決算総額 | ||||
道路修繕費 | 橋梁修繕費 | 大下水修繕費 | 小下水修繕費 | 暗渠修繕費 | ||||
明33年 | 6,350円393 | 5,903円708 | 1,348円766 | 1,412円034 | 1,439円446 | - | 1,703円462 | 64,260円199 |
34 | 7,466.653 | 6,823.018 | 3,340.250 | 1,262.141 | 814.541 | - | 1,406.086 | 73,274.112 |
35 | 6,944.371 | 6,557.511 | 3,656.482 | 819.656 | 606.320 | - | 1,475.053 | 80,544.109 |
36 | 5,943.309 | 5,268.824 | 3,292.908 | 944.690 | 509.887 | - | 521.339 | 83,688.440 |
37 | 7,251.248 | 6,757.668 | 5,206.909 | 756.101 | 349.275 | - | 445.383 | 78,768.632 |
38 | 6,945.565 | 6,455.315 | 4,398.580 | 433.762 | 939.179 | - | 683.794 | 81,338.778 |
39 | 7,570.481 | 7,139.141 | 4,825.860 | 613.499 | 1,019.399 | - | 680.383 | 86,738.342 |
40 | - | - | - | - | - | - | - | - |
41 | 21,501.100 | 20,238.340 | 17,024.230 | 397.450 | 1,978.240 | - | 838.420 | 140,818.298 |
42 | 12,893.270 | 11,580.450 | 5,888.130 | 224.970 | 3,582.880 | - | 1,884.470 | 142,149.878 |
43 | 13,883.510 | 12,774.210 | 8,040.710 | 222.930 | 2,681.570 | 1,087円270 | 741.730 | 165,386.800 |
44 | 28,818.640 | 26,791.670 | 21,998.910 | 344.900 | 3,366.540 | - | 1,081.320 | 223,463.850 |
45 | 14,628.500 | 12,654.040 | 7,314.710 | 286.600 | 3,294.910 | - | 1,757.820 | 202,852.273 |
大2 | 12,683.400 | 11,711.920 | 7,398.520 | 409.450 | 2,099.350 | - | 1,804.600 | 194,197.172 |
3 | 18,476.075 | 17,147.025 | 10,350.305 | 713.640 | 4,128.490 | - | 1,954.590 | 206,886.349 |
4 | 19,053.020 | 17,748.210 | 10,210.720 | 230.750 | 4,417.340 | 932.320 | 1,957.080 | 218,025.203 |
5 | 19,393.980 | 18,049.850 | 11,046.590 | 212.590 | 4,411.760 | 822.160 | 1,556.750 | 217,683.750 |
6 | 10,429.750 | 19,512.000 | 12,221.280 | 124.900 | 4,295.180 | 1,052.760 | 1,817.880 | 257,527.040 |
7 | 29,005.410 | 27,130.450 | 16,602.390 | 1,828.970 | 3,919.490 | 1,120.800 | 3,658.800 | 351,367.540 |
8 | 38,764.780 | 35,554.590 | 21,409.670 | 685.460 | 6,967.690 | 2,167.150 | 4,324.620 | 494,345.170 |
9 | 62,539.990 | 57,549.650 | 23,829.280 | 1,961.600 | 18,032.770 | 2,354.240 | 6,717.530 | 610,511.090 |
10 | 96,196.100 | 87,381.520 | 34,410.950 | 2,236.730 | 25,587.870 | 9,395.500 | 8,429.610 | 727,920.270 |
11 | 65,821.620 | 60,126.860 | 33,102.440 | 1,587.000 | 4,168.270 | 8,678.340 | 6,540.960 | 538,395.700 |
札幌区『区会関係書類』(札幌市蔵,明34~大13)より作成(明治40年分の決算書は未発見)。 |
札幌区では、人口の増加にともない市街地の拡大を行うが、市街地の区画は道路の開削でもあった。たとえば札幌駅以北は、明治三十三年北八条西一丁目の一部を分割して、北九~一五条西一~五丁目の字名を設定した。これにともないその部分を宅地化するため、道路を造成した。その後大正十四年北一六~二五条と北一~一一条の西部に新町名が付されるが、地図類などで見ると大正期に順次区画されていたようである(札幌歴史地図 明治編、大正編)。
一方中央政府では、明治十年代後半から地域による道路の規格や構造などを、統一したものとするべく基準を示してきたが、各地の事情に左右された規格・構造となっていた。内務省は三〇年越しでやっと大正八年道路法を公布して、全国画一的な道路の種類による規格・構造とすることになった(内務省史第三巻)。札幌でも同法に則って、九年二月六日の区会に諮問案として一五三路線の認定案を提出した。これは、区当局者が路線名の一部名称に関して改正することを条件に可決された。さらに三月二十五日上記の路線の延長認定一本に加え、九路線が諮問されて可決された。そして四月一日に告示第二八号として告示された。この二つの諮問案で合わせて一六二路線が認定されたことになる。その後九月に三路線の延長認定と新たに三路線が認定された(区会議事録 大9、告示は北タイ 大9・4・1)。