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都市と農村との分離

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 札幌区とその周辺農村の農業(以下札幌の農業と略)は、都府県の大都市近郊農業と大きな相違をもっている。一般に近世以降の都市は城下町や商業の中心地として発展し、主に沖積平野でしかも水運に恵まれた位置に立地している場合が多い。したがって、都府県の都市近郊農業は、増加する都市人口の後背地として水田を基礎として野菜生産なども広がり、高生産力の農業を特徴としている。それに対し、北海道の基幹都市としての札幌は、明治以降に内国植民地の政治都市として人為的に形成されたために、そもそも近郊農村を欠落させて出発したのである。そのため、札幌の農業は都市形成とは分離されて発展してきたといってよい。人口の増加とともに米の消費は拡大するが、それは当初から移入米に依拠するものであった。