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物価と賃金の動き

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 さて、数量指標の比較的順調な伸びと価格指標の漸増→急増という対比は、単価の顕著な変動が原因であろう。そこで年平均価格のレベルではあるが、札幌区における物価指数賃金指数を算出してみたのが図2である。札幌における価格データが長期にわたって得られる品目は限られているが、そのなかから農産品、鉱産品、工産品合わせて一三品目を選択した。そしてそれぞれの価格指数を求め、それを単純平均して一応の物価指数とした。賃金は主要七職種の賃金を単純平均したものを指数化した。

図-2 物価指数賃金指数

 まず物価について、波線で示した日銀卸売物価指数(東京)と見比べてみると、札幌物価のいくつかの特徴がわかる。大まかな趨勢は札幌一三品目指数平均と日銀物価指数とでほぼ一致していることに注目したい。僻遠の地にありながら、東京の物価変動と長期的に似通った推移を示すということは、全国市場のかなり強固な結びつきを示唆するものであろう。しかしその中でのやや細かい差異に注目すると、まず、日露戦争期に札幌の物価が東京と異なり騰貴傾向を示していること、また明治四十五年に東京に見られない騰貴を示し、その分だけ大正二年から四年にかけて大きく下落していること、そして第一次世界大戦後は東京が九年をピークに以後激落するのに対して、札幌はひと足早く八年をピークに以後激落することが指摘できる。
 一方賃金指数の推移はどうか。こちらは札幌の指数と全国の指数との差が非常に目立つ。特に日露戦争前に札幌の賃金は全国と異なり低落し、以後全国を一貫して下回っている。また第一次世界大戦後は物価とともに大正九年には落ち込みをみせる。札幌の賃金指数の伸びが全国を下回る原因として、札幌は不断に労働力の新規流入があり、熟練を要さない労働力が過剰気味だったのではないかと思われる。
 これらの検討から札幌経済の長期的趨勢は、数量的にかなり順調な伸びを示したが、価格面では東京に比べて日露戦争期、明治四十五年という小さなピークをもちつつ第一次世界大戦期のブームは短かったということができるだろう。次にこうした景気の節目を立ち入って検討したい。