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小作取締規則

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 小作人には、開墾小作と通常の小作の両者があった。農場側は前者とは「開墾及小作契約書」を、また後者とは「小作契約書」を結んでいたが、そのいずれにも「附約」としてこの「本契約」のほかに、小作人側は農場の「別ニ定ムル小作取締規則ニ従フ」ことが定められていたのである。いま、その「小作取締規則」の全文を次に紹介しておこう。
   小作取締規則
第壹条 小作人ハ各自誠実ヲ旨トシ信義ヲ重ンシ緩急相扶ケ艱難相救ヒ一致専心農業ヲ営ミ常ニ農場管理者ノ指示ニ従ヒ契約ヲ履行シ本規則ヲ遵守シ勤勉以テ業務ニ精励スヘシ
第貳条 小作人タラント欲スル者ハ左ノ事項ヲ記載シ事務所ニ申込ムヘシ
壹 戸籍証明書
貳 財産ノ有無
参 保証人ノ住所氏名
第参条 小作人前条申込ノ後地主ノ承諾ヲ受ケタルトキハ未墾地ハ開墾及小作契約既墾地ハ小作契約ヲ締結スヘシ
第肆条 小作人遠隔ノ地ヘ出稼又ハ旅行等ヲ為ストキハ其行先並ニ日数ヲ保証人連署ノ上当場事務所ニ届出テ承諾ヲ受クヘシ若シ其届出ヲ為サス又ハ其期限ニ至リ帰家セス且何等ノ申出ナキトキハ開墾及小作契約書第漆条第捌条ニヨリ処置スヘシ
第伍条 小作人ハ其小作地ニ於ケル道路、橋梁、排水路ノ小修繕ヲナシ且掃除ヲ怠ラサルモノトス
第陸条 小作人取締ノ為メ小作地内ニ小作総代人ヲ置ク此総代人ハ小作人ノ互選ヲ以テ定メ任期ハ貳箇年トシ満期再選スルヲ得但小作総代人ヘハ事務ノ繁閑ニヨリ報酬ヲ与フルコトアルヘシ
     明治何年何月何日前田農場

 この規則の制定年次は明確ではないが、第三条の規定からも明らかなように、いわば小作契約書の前提ともいうべき性格のものであり、したがって農場開設の直後からこのような規則は定められていたと思われる。そして第四条にもあるように、小作人が無届で「出稼又ハ旅行等」を行った場合には、小作契約書の第七条(通常の小作の場合は第八条)の規定により、農場側は小作人側の義務違背として本契約の解除を行うことが可能であった。