札幌では薩摩琵琶がさかんであった。ほかには筑前琵琶の演奏会が明治三十九年五月に開催された史料がある程度である。薩摩琵琶についても、今のところ三十四年五月に開催された記録があるが、本格化したのは三十六年一月北海薩摩琵琶会の開催以来と思われる。同年四月に第二回を、九月に第六回を開催したが、三十七年一月には帝国琵琶精神会の名で開催されている。しかし三十八年二月には同名の会の設立が伝えられており(北タイ 明38・2・2)、「精神的教育的薩摩琵琶会」を開催するとされている。この命名等は、おそらく日露戦争下の時代相によるものであろう。同会は同年十二月に「大に其内容を改め、斯道の発展を計り、精神修業の趣旨に基き、新たに学術研究部を設け国、漢、数学並に露語の諸科を講究」(北タイ 明38・12・5)することとした。さらに四十年二月からは、一般の活動に加え、週二回講習を行うなど、さらに活動の範囲を拡げた。このほか四弦会という名の薩摩琵琶会が、四十三年十月に第二三回の、四十五年一月には第三〇回の演奏を行っている。さらに四十五年三月には薩摩琵琶同好会という名の、同年六月には薩摩琵琶同志会という名の団体の主催による演奏会が開催されている。
このほか、四十年一月には琴曲初会式が、同年十一月には義太夫俱楽部落成祝賀義太夫会が開催され、四十三年二月には義太夫同好者により札幌和合会が創立され、四十五年三月には、前年末に結成された尺八研究会第一回温習会が開催されるなど、邦楽の分野もほぼ趣味・教養という範囲ながらしだいに充実していった。