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札幌市臨時振興専門委員会の都市計画案

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 戦後しばらくの間、建設諸資材の不足で街づくりの施策は停滞した。その中で上原市長は産業振興委員会を組織して札幌の将来像を模索した。二十二年新市長の高田は、それを臨時振興専門委員会に再編成し、資材不足、財源不足の中での街づくりを模索した。
 昭和二十二年(一九四七)に設けられた札幌市臨時振興専門委員会は、大部な答申を出した。この委員会は、商業、工業、農業、文化厚生、都市計画の分科会を組織して、各分野に関する提言を行った。答申は札幌の街づくりの構想に関わる内容が多くあるが、あまりにも大部なため、ここでは「都市計画」の項目について若干の紹介をしたい。
 都市計画分科会の課題は、都市計画法によって定められた札幌市都市計画やその事業の検討ではなく、極めて自由な立場で札幌市及び付近市町村をも含めた事実上の大札幌都市の理想的計画をあらゆる観点から研究し立案することとする。そして土地人口配分計画、治水利水、運輸交通、観光施設の四小分科会を設けた。
 答申の中で札幌市の境域について、経済地理的に考察して人口、産業の一集落地帯と認められる札幌都市計画区域の隣接地、将来札幌地方の発展に伴い土地人口の配分上札幌集落となるべく予想される地域を包含し、少なくも隣接町村たる豊平町、白石村、札幌村及び琴似町を合併して編入することを適当とする。また都市計画区域については、交通機関の発達により都心部からの一時間の範囲が従前の六・四五キロメートルより広く、原則として都心部より一五キロメートルの円周内とし、町村境域の地勢等から考慮して特殊な場所は半径三〇キロメートル近くまで拡張できるとする。このどちらについても以前の範囲の数倍となる地域を想定した。
 さらに土地配分計画では、農牧業地域五〇五・七〇二平方キロメートル(二四・八八六平方キロメートル増)、工業地域七四・〇一五平方キロメートル(五九・三八五平方キロメートル増)、商業地域一七・四五九平方キロメートル(一〇・七三九平方キロメートル増)、住宅地域一〇二・五一三平方キロメートル(五六・八二一平方キロメートル増)、林野地域六三九・二〇五平方キロメートル(八六・四二二平方キロメートル減)、その他の利用地域四七・三九五平方キロメートル(二・一二六平方キロメートル減)、未利用地域四七・六九二平方キロメートル(六三・二八三平方キロメートル減)と想定する。そして総人口八〇万三〇〇〇人と想定した人口配分計画では、表1のようになる。
表-1 将来の産業別有業者人口
総人口803,000人
 内有業者人口総数277,000 
  農業26,000 
  林業1,000 
  水産業1,000 
  鉱業5,000 
  建設工業22,000 
  製造工業71,000 
  ガス水道電気4,000 
  商業31,000 
  金融業6,000 
  運輸通信31,000 
  サービス業14,000 
  自由業20,000 
  公務関係31,000 
  その他14,000 

 一部を簡単に紹介すると上水道計画では、既存施設の拡張能率化による応急策を提言すると共に、豊平川上流に貯水池を築設して発電、農業用、工業用、上下水道用などの水源に利用すること。下水道計画では、市が策定した応急五カ年計画案の早期実施を切望する。しかし、汚水を豊平川他の河川に放流している現状を遺憾とし、理想案として汚水処理場による洗浄などを提言している。道路網では、札幌都市計画区域内の街路網計画として既存計画の早期の実施と建物疎開の跡地を利用して街路計画を変更すること。また札幌地方市町村相互間の連絡整備計画として豊平町方面、白石村・江別町方面、札幌村・篠路村方面、琴似町・手稲村方面、石狩町方面の各方面への都市計画街路の延長拡充、橋梁施設を整備すること。さらに地域外遠距離連絡道路整備計画として、国道、地方費道、準地方費道について、それぞれの整備や拡充について提言している。
 当時の高田市長は、この臨時振興専門委員会の答申を机上のプランで終わらせないために、札幌地方総合開発協議会を組織してその実現をめざした。同協議会は、豊平町、白石村、江別町、札幌村、篠路村、琴似町、手稲村、石狩町と協力して組織したもので(都市計画概要)、その協議会が臨時振興専門委員会の中で出された地域の要望を、国や道など関係の役所、さらに国鉄など関係の公共団体や企業などに陳情や請願、または意見書などとして提出した(札幌市臨時振興専門委員会答申)。そして札幌市内の街路や交通機関などについては、その意を受けて実行に移されていった。
 さらに同時代史的な『札幌市史 政治行政篇』(昭28)によると、この答申を実現するため「実施五か年計画をたてて、行政的事務的に自ら実行解決することにした」という。