モデル農園事業は『札幌市事務概況』では、「農業技術および農家生活の改良・普及・指導」という項目に含まれているが、この項目の中には、他に
優良種苗採種圃と防虫害防除が含まれている。
昭和二十七年(一九五二)、札幌市は初めて
優良種苗採種圃を設置した。これは、三カ年計画で多収穫耐病の優良品種を導入して、それまでの不良種子の更新を行うた
めであり、入手した優良品種を農業改良相談所、または
農業協同組合に委託して農家に栽培させ、その生産物を種子価格で配布することとした。最初の年は、札幌市農業改良相談所(大豆〇・一町)、白石農業改良相談所(水稲・大豆・小豆各〇・一町)、厚別
農業協同組合(水稲・小麦各〇・一町)であった(昭27事務)が、その後は種類、面積ともに拡大し、この事業自体もずっと継続することになった。表26は、この事業の概要を示したものであるが、三十年に採種面積が一挙に拡大したのは、この年三月札幌村・篠路村・琴似町が札幌市に合併されたことにともなって、事業の範囲を拡大したた
めであった。
年 | 計 | 水稲 | 小麦 | 裸麦 | 燕麦 | 大豆 | 小豆 | 菜豆 | 豌豆 | 馬鈴薯 | 飼料 | 花き |
昭27 | 0.6 | 0.2 | 0.1 | ― | ― | 0.2 | 0.1 | ― | ― | ― | ― | ― |
28 | 1.6 | 0.7 | 0.2 | ― | 0.4 | 0.1 | 0.1 | ― | ― | ― | ― | 0.1 |
29 | 1.0 | 0.7 | ― | ― | 0.1 | 0.1 | 0.1 | ― | ― | ― | ― | ― |
30 | 9.3 | 2.2 | ― | ― | 3.5 | 0.2 | 1.0 | 0.2 | ― | 0.2 | 2.0 | ― |
31 | 7.8 | 2.8 | 0.9 | 0.4 | 0.7 | 0.5 | 0.5 | ― | ― | ― | 2.0 | ― |
32 | 7.8 | 2.8 | 0.9 | 0.4 | 0.7 | 0.5 | 0.5 | ― | ― | ― | 2.0 | ― |
33 | 7.8 | 2.8 | 0.9 | 0.4 | 0.7 | 0.5 | 0.5 | ― | ― | ― | 2.0 | ― |
34 | 9.3 | 1.6 | ― | ― | 3.0 | ― | 3.2 | 0.9 | ― | 0.6 | ― | ― |
35 | 9.8 | 1.4 | ― | ― | 1.8 | ― | 5.7 | ― | ― | 0.9 | ― | ― |
36 | 13.3 | 3.4 | 0.2 | ― | 3.2 | ― | 5.4 | ― | 0.2 | 0.9 | ― | ― |
『札幌市事務概況』各年による。単位は,33年までは町,その後はhaである。 |
また、当時の農家がもっていた手動式の防除機具では、農作物を蝕む病害虫を広範囲にわたって、同時に一斉防除することは不可能であった。そこで、札幌市では、昭和二十七年に動力撒粉機を購入し、これを
農業協同組合など農業団体に無償貸与し、病害虫の一斉共同防除を実施させた(昭27事務)。続いて三十一年、農事組合などが動力撒粉機を購入する場合には、農協などを通じて札幌市が補助金を出すこととした。同年、札幌市・藻岩・北札幌・琴似・新琴似の各農協が合せて動力撒粉機三九台を購入した(昭31事務)。