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札幌市域農業振興対策基礎調査

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 札幌市は、昭和三十年三月、札幌村・篠路村・琴似町を合併し、その結果、農家戸数三七〇〇余、経営耕地面積一万一五〇〇余町歩という広大な農業地域を擁するに至った。そこで、「三町村編入に伴う農業地帯の拡大に対処し、効率的農業振興施策の立案推進を計るため、市域農業の実態につき、経営経済的部面及び自然的部面より総合的な基礎調査を実施」(昭30事務)することになった。
 三十年から三十三年にわたって、北海道大学農学部農業経済学教室、および北海道農業試験場の協力を得つつ実施された本調査のうち、経営経済部門の調査結果は、三十三年三月、調査報告書第三報『農業の経営と経済(総括篇)』というタイトルで刊行された。以下にその序文の一部を引用する。
旧市内のみを頭に画く者は、農業は札幌市にとって、むしろマイナーな産業であって、問題は小さいと考えるかも知れない。しかし、現在、市は農家戸数三、六〇〇余、耕地面積一万一、〇〇〇余町歩を擁していることを思えば、農業は、市にとってマイナーな産業で、農業振興対策の如きは、はしっての問題であるなどとは如何にも認識の謬りであることがわかる。(中略)周知のように札幌市の農業は、その様相極めて複雑である。われわれは、殆んど凡ゆる経営形態をそこに見出すことができる。しかも、市自体の膨脹と共に、これらもろもろの経営形態において、はた又、土地利用の形態において、変動の波にさらされている。このことは事態を一層複雑ならしめている。

 そして、本調査の結果を基礎に「農業振興五カ年計画」を策定するはずであったが、その後の『事務概況』にはこれに関連する記事は出てこない。結局、成案には至らなかったのではないだろうか。あるいは、当時進行しつつあった新農村建設総合対策事業に吸収されてしまったのかも知れない。