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札幌市建設五年計画

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 農業振興策プロパーの計画は策定されるに至らなかったものの、本章が対象とする時期に策定された地域振興策、すなわち、札幌総合都市計画(昭33・3)、主要事業一〇年計画(昭35・3)、同上追加事業分(昭37・3)、札幌市建設六年計画(昭40・2)、札幌市建設五年計画(昭42・11)、札幌市長期総合計画・第一次五年計画(昭46・11)などには、必ず農業振興策が含まれているが、ここでは札幌市建設五年計画をとり上げたい。
 札幌市建設五年計画によれば、「本市の農業は、周辺部の宅地化にともなって年々耕地面積をはじめ、農業人口は減少している。反面生産額は、高度集約農業への転換等生産技術の向上によって年々上昇しているが、今後さらに経営の合理化による生産性の向上を目指し、必要な助成を行なう」ことを掲げている。表56は、本計画中に含まれている農業振興策をまとめたものであるが、個々の振興策についてはのちにとり上げることにして、ここでは、農業振興策の重点がどこにあったかを確認しておきたい。
表-56 『札幌市建設五年計画』(昭42~46)による農業振興計画(単位:千円)
事業名事業年度事業費等摘要
農林会館建設昭43・44(事)215,000農協その他関係団体・指導機関を包括し,本市農業の振興を図るセンター(規模2,547m2)
農道等新設改良費補助昭42~46(補) 50,700農道49,000m・農道橋42ヵ所・用排水路25,000m・かんがい施設24ヵ所・暗渠排水60ha
野菜集荷所設置費補助昭42~46(補) 8,944野菜出荷物の品質・規格・包装の統一と一元集荷を図るための施設6棟
低温倉庫建設資金貸付昭45・46(貸) 32,000野菜出荷の時期的集中の均衡と価格安定に寄与するための施設1棟
家畜導入資金貸付昭42~46(貸) 90,586家畜の多頭羽飼育による,畜産経営の確立を図るための導入資金貸付(乳牛180頭・豚200頭・鶏45,000羽)
共同鶏舎(育雛)設置費補助昭43~45(補) 3,400養鶏の主産地形成の進展にともなう,経営の経済性を高めるための施設3棟
畜産共同作業処理場設置費補助昭44(補) 1,000鶏卵の品質・規格を統一する選別・洗卵・包装等の設備を有する共同作業処理場1棟
共同鶏舎設置資金貸付昭42・43(貸) 3,000養鶏の合理化と経営規模の拡大安定のための共同鶏舎1棟
『札幌市の農業』(昭44)による。(事)は事業費,(補)は補助額,(貸)は貸付額である。

 ここに掲げられている事業のうち、農林会館と農道等新設改良費補助は農業全体に関わる振興策であった。野菜出荷所設置費補助、および低温倉庫建設資金貸付は、三十年代中頃から札幌市が強力に推進してきた、「園芸農業を中心とする主産地形成」(昭37要覧など)を一層促進しようとするものであった。また、家畜導入資金貸付以下の諸事業はすべて畜産振興を図るための事業であり、とりわけ養鶏振興策が多かった。これらのことから、札幌市建設五年計画における農業振興の重点が園芸農業、とりわけ蔬菜の振興と、養鶏を中心とする畜産の振興におかれていたことはあきらかである。そして、蔬菜・果樹・畜産こそ農業基本法が定めた選択的拡大作目であった。