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花き栽培の動向

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 農業の一部門として花きが省みられるようになったのは、「経済成長が急速に進み、生活環境が安定向上するにつれて需要が次第に増加したことと、主要食糧の需給関係が緩和されてきたことから、農業の体質改善を図る有望部門の一つとして脚光を浴びるようになったことによる。花きは土地生産性が高く、都市的環境の下では需要は特に上昇傾向が顕著なので、本市においても花き経営に着目する農家が増加」(札幌市の農業昭44)していった。
 花きを切花類と鉢物類に分けると、札幌市の場合は鉢物類の比重が大きいことが特徴である。切花類は需要の七〇パーセントが移入品によって充当されているが、鉢物類の方は、輸送費が割高となるために市内の生産物が独占していた。かつては、気象条件の上から、また販路が海外に開かれているといったこともあり、チューリップ球根の生産が相当有望視されていた時期もあったが(四章五節を参照)、生産者の大半が副業的経営の域を出なかったこと、および海外市場においてオランダ品に押されて価格が停滞し、昭和四十一年には輸出が不成功に終わるなどして、その後は伸び悩んだ。
 表78によれば、四十二年の作付面積は二二ヘクタールであり、この中に温室六〇アール、ビニールハウス四〇アールが含まれている。以下に、種類別に中心的作目をあげると①露地切花の中心はダリアとグラジオラス、②草花類のうち、一年草ではケイトウ、花壇用根物ではパンジー、宿根草では菊とシャクヤク、③花木類では柳類・バラ・レンギョウ、④温室切花類ではカーネーション、⑤鉢物類ではシクラメン・アザレア・シネラリヤなどであった。
表-78 花き栽培の推移
年度
(a)
露地温室
球根
(a)
球根(切花) (a)草花
(a)
花木
(a)
切花
(a)
鉢物
(a)
昭372,34379065978810664135
 382,58975072695316083163
 392,6017316671,02218199226
 402,6366107861,071169152242
 412,6353007831,347205134255
 422,233906171,314212183281
 432,1436041,297242183371
『札幌市の農業』(昭44)による。

 花きの粗生産額は、三十六年には二一〇〇万円であり、粗生産額全体の〇・四パーセントにすぎなかったが、四十七年には二億二〇〇〇万円になり、その割合も二・三パーセントになった。
 なお、生産者に地域的集中傾向はみられず、各地区に分散しているが、強いて分布傾向を求めるとすれば、農村部の中では最も都心に近い住宅街といったあたりに、生産者の多くが立地していた。