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高度経済成長期の運動と所得拡大

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 三十九年以降も業種間格差は拡大したが、全体としては若年労働力の需給逼迫を背景に、三十九年春闘妥結額は大手平均で戦後最高の三三〇〇円(値上げ率一二・四パーセント)となり、日経連は「自爆賃金」と評した。四十年春闘を機に全道中小労連が結成され、以後、同労連と地区労・地区中小労連による大手との賃金格差解消運動が本格化した(同前)。翌四十一年春闘(同盟は賃闘)では市内のガス、通運、菓子、金融などの産業別統一行動や地区労の支援活動がさらに強化される一方、統一目標として「ベトナム反戦」を掲げた同年秋季年末闘争では、総評、中でも公務員共闘が人事院勧告完全実施や労働基本権回復などを含めた闘争宣言を発して十月二十一日半日ストを計画し、翌年以降も「一〇・二一国際反戦統一行動日」として毎年統一行動が実施されるようになった。同盟も「近代産業国にふさわしい賃金」を目標に大幅賃上げを目指し、道春闘共闘委が中小の大幅賃上げに重点を置いた四十三年春闘では四月にストを集中させるなど激しい運動を展開し、道内の平均妥結額は三八二九円(表5)、札幌市では四一一五円となった(表6)。
表-5 道内の春闘賃金値上げ妥結状況推移(民間)昭和38年-47年

種別


年次
調査
対象
企業
妥結前基準内賃金
(月額)
値上げ
要求
平均額
値上げ
妥結
平均額
基準内賃金に対する値上率消費者
物価上昇率
(全国)
 
昭38
 

181
 

9,924~
28,960

3,794
 

1,905
 
%
 
 
%
6.6
 
 39
 
351
 
9,225~
32,084
4,671
 
2,353
 
4.6
 
 4033820,3445,0332,36711.86.4
 4139923,2475,5412,70611.64.7
 4254126,3745,9983,24912.34.2
 4361029,0037,0313,82913.24.9
 4466031,6717,9344,54814.26.4
 4568135,2769,5315,89316.77.3
 4662341,15611,6506,80616.55.7
 4770946,56113,5527,46316.05.2
『資料北海道労働運動史』『新版日本労働運動史』より作成。
昭和38~40年は従業員500人未満の中小企業,同41年以降は東京証券取引所1部上場及びそれに準ずる全国大手企業を除く会社で,いずれも労働組合が組織されている企業を対象に調査。

表-6 昭和43年春闘道内中小労組地域別妥結状況
地域別調査組合数平均妥結金額(円)地域別組合数平均妥結金額(円)
札幌1244,115旭川683,473
小樽593,712釧路363,655
函館543,923室蘭473,819
帯広253,275北見193,678
夕張153,427根室94,210
名寄63,591留萌53,698
全北海道労働組合協議会『全道労協運動史』により一部加工。

 四十四年から四十五年にかけて、安保条約破棄要求に加え、公害問題や社会資本の充実、社会保障制度改善など国民生活と関連した諸要求を掲げた全道規模の決起集会が札幌を舞台として頻繁に開催される一方、札幌の民間中小組合の時限ストや二四時間以上のストライキもさらに拡大し(札幌中小労連機関紙)、「いざなぎ景気」や、依然として進行する労働力不足を背景に連続一〇パーセントを大きく超える賃上げが行われた。そして「総がかり・総ぐるみ」を標榜した四十七年春闘では、民間大手平均約一万円(値上げ率一五パーセント)、道内の妥結五〇八組合平均七四六三円(同一六パーセント)の賃上げを獲得し、昭和四十年に約二万円であった道内基準内賃金は、ついに五万円台に乗り(表5)、夏季・年末手当その他を含めた年間賃金も急速に上昇した。中でも産業構造の変化によって、昭和三十四年以降全道平均を上回るようになった札幌市の一カ月平均賃金は、三十八年には約三万五〇〇〇円となり、四十八年には実にその三・六倍を突破するに至った(表7)。
表-7 札幌市内労働賃金の推移(年間1カ月平均)
(単位:円)

種別

年次
札幌市北海道
(総数)
総数
昭2818,83921,63910,23718,757
 3020,15924,13511,17621,003
 3221,81826,93411,99823,826
 3425,27931,19913,71623,621
 3629,77536,47616,16526,831
 3834,88340,87619,92732,692
 4042,55349,64225,96139,771
 4255,06764,92934,06947,359
 4467,69480,19441,56661,089
 4693,879109,82258,96677,975
 48126,717148,40079,764110,717
『札幌市統計書』及び『資料北海道労働運動史』による。
各年12月末常用労働者30人以上雇用の事業所を対象とした現金給与1カ月平均額