北海道に演劇鑑賞組織が誕生したのは、昭和二十四年に大阪で初めて勤労者演劇協議会(労演)が誕生してから二十二年後の四十六年である。労演は新劇を支える運動団体として全国各地で組織されたが、北海道の場合、やや異なる要素が加わった。むしろ、東京などの舞台を招聘公演する際の、より安定した継続的な体制の必要性から四十四年、鈴木正人等による準備会が生まれ、四十五年四月『野麦峠』(民芸)で函館に労演が誕生した。次いで六月『グスコーブドリの伝記』(東京演劇アンサンブル)で札幌の労演が始動した(正式創立は四十六年)。札幌オリンピックを契機に急激な都市化が進む札幌で、鑑賞組織はその役割を変え、従来は新劇中心だった演目にミュージカルや小劇場演劇が加わるなど、札幌は全国の労演・演劇鑑賞会とは異なる独自の路線を歩み始めることになる。