図-1 市内総生産における第3次産業比率
大都市統計協議会『大都市比較統計表』各年
市史5上において、昭和四十年代に建設業の生産所得が製造業のそれを追い越したことを明らかにした。本巻の対象時期では、建設業が製造業を一貫して上回っている。これは札幌のみの特徴なのだろうか。このことを明らかにするために表3に政令指定都市の製造業、建設業比率をまとめてみた。その結果、建設業が製造業を上回るのは札幌、福岡のみであり、他都市では製造業が建設業を上回っていることがわかる。もっとも福岡は六十二年度、平成九年度に製造業が建設業を上回るが、札幌は一貫して建設業が製造業を上回っているのである。札幌の産業構造上の特質は、第三次産業の比率が高いこと、そして第二次産業では建設業の比率が高いことである。
表-3 都市別製造業・建設業比率比較 | (単位:%) |
昭51年度 | 59年度 | 平4年度 | 12年度 | ||
札幌市 | 製造業 | 10.8 | 8.3 | 6.8 | 4.6 |
建設業 | 14.9 | 11.7 | 9.7 | 9.2 | |
東京都 | 製造業 | 25.6 | 25.1 | 17.7 | 11.7 |
建設業 | 7.5 | 6.7 | 8.4 | 6.1 | |
川崎市 | 製造業 | 51.4 | 55.8 | 43.1 | 30.4 |
建設業 | 5.9 | 5.2 | 8.4 | 5.3 | |
横浜市 | 製造業 | 32.6 | 28.2 | 20.8 | 17.7 |
建設業 | 7.7 | 9.5 | 10.9 | 8.1 | |
名古屋市 | 製造業 | 24.3 | 24.0 | 19.4 | 14.4 |
建設業 | 6.3 | 6.0 | 7.6 | 6.0 | |
京都市 | 製造業 | 28.9 | 29.2 | 27.2 | 20.5 |
建設業 | 5.4 | 5.7 | 5.3 | 6.3 | |
大阪市 | 製造業 | 28.7 | 21.8 | 16.4 | 11.8 |
建設業 | 5.1 | 3.5 | 4.5 | 2.7 | |
神戸市 | 製造業 | 31.8 | 29.9 | 23.2 | 19.7 |
建設業 | 5.8 | 7.0 | 9.2 | 7.9 | |
広島市 | 製造業 | ― | 19.4 | 16.1 | 12.9 |
建設業 | ― | 8.1 | 10.0 | 5.7 | |
北九州市 | 製造業 | 34.6 | 35.0 | 32.5 | 22.3 |
建設業 | 10.0 | 7.3 | 8.7 | 9.4 | |
福岡市 | 製造業 | 8.2 | 7.2 | 6.4 | 5.2 |
建設業 | 10.9 | 8.5 | 9.0 | 6.2 |
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さて、市内総生産の大きさという点において政令指定都市のなかでの札幌の位置はどのようなものだったのだろうか。表4は、政令指定都市の市内所得総額を比較したものである。昭和四十九年度には札幌は九位であった。その後、札幌の順位はしだいに上昇し、平成二年度から六位、七年度から五位に浮上している。いま昭和四十九年度を一〇〇とした平成十二年度の指数を求めると、一番高い指数は札幌の四九七・三であり、二位福岡(四四七・一)、三位横浜(四四一・九)、四位東京(四〇三・四)、五位名古屋(三八二・八)と続く。本巻の対象時期に札幌は政令指定都市中最高の成長都市だったのである。もっとも、この分析は、人口の変化を反映しているので、人口増加が著しい都市は成長率が高いという結果となっている。そこで、人口変化の影響を除去するために一人あたり市内所得を算出し、図2を作成した。すると、札幌の位置は格段に下がり、平成二年度以降一〇位または九位であり、十一年度、十二年度に七位に上昇している。昭和四十九年度を一〇〇とした平成十二年度の指数は、高い順に一位東京(四三〇・九)、二位大阪(三九三・一)、三位名古屋(三六七・一)、四位横浜(三三〇・五)、五位札幌(三二八・一)となる。札幌が最高の成長率を示したのは、人口増加が大きな要因となっていることがわかる。
表-4 都市別市内所得 | (単位:百万円) |
昭49年度 | 53年度 | 60年度 | 平成2年度 | 7年度 | 12年度 | |
札幌市 | 1,327,651 | 2,134,645 | 3,745,840 | 5,451,475 | 6,285,217 | 6,602,220 |
東京都 | 21,531,100 | 30,543,800 | 52,828,500 | 87,216,771 | 84,369,900 | 86,848,500 |
川崎市 | 1,426,462 | 1,883,611 | 3,641,057 | 4,626,946 | 4,885,733 | 4,326,719 |
横浜市 | 2,780,816 | 3,921,161 | 6,786,839 | 9,886,333 | 10,717,799 | 12,289,191 |
名古屋市 | 3,301,135 | 4,491,258 | 7,950,124 | 11,880,344 | 12,386,804 | 12,637,619 |
京都市 | 1,711,085 | 2,544,983 | 3,877,307 | 5,252,206 | 5,691,337 | 5,560,713 |
大阪市 | 6,273,024 | 8,682,600 | 16,053,706 | 21,464,802 | 20,616,414 | 22,805,833 |
神戸市 | 1,681,039 | 2,348,466 | 3,993,920 | 5,775,319 | 5,960,617 | 5,718,330 |
広島市 | ― | ― | 3,044,720 | 4,423,921 | 4,694,871 | 3,941,471 |
北九州市 | 1,267,716 | 1,842,309 | 2,929,823 | 3,473,148 | 3,465,823 | 3,578,604 |
福岡市 | 1,440,005 | 2,121,825 | 3,808,224 | 5,282,016 | 5,921,353 | 6,438,170 |
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図-2 1人あたり市内所得
大都市統計協議会『大都市比較統計表』各年
ただし、バブル崩壊後の平成四年度には他都市がすべて前年度を下回ったのに対し、札幌だけが前年度を上回った。三年度を一〇〇とする十二年度の指数は、横浜(一〇九・五)、福岡(一〇七・〇)、札幌(一〇五・七)の順で高く、また東京、川崎、名古屋、神戸、広島は一〇〇を割り、バブル景気崩壊後の傷跡が深刻である。バブル崩壊後に札幌の一人あたり市内所得がなぜ増大しえたのかは大変重要な検討課題である。