市内における果樹栽培地域は、昭和六十年代までは南区の藤野・藻岩地区が中心であったが、その後は藤野から小金湯までの豊平川沿いに集中している。
作付面積の推移をみると、四十年代後半に大きく落ち込んだ後は五〇~六〇ヘクタール程度を維持しているから、花きなど一部を除いて減少傾向を続けた作目が多かったことを思えば、比較的安定していたともいえよう。主要作目はリンゴであり、ほかにサクランボ、ナシ、ブドウがあるが、リンゴの作付面積がなかばを占める状況が続いた。その後、サクランボやブドウなどの新更栽培が行われたり、リンゴから単価の高いサクランボへの作付転換もあって、近年はリンゴの割合は四〇パーセント程度に低下した。
ところで、五十年代末に新しい動きが出てくるまで果樹栽培が停滞していたことは否めない。宅地化、リンゴ腐乱病、後継者不足、価格の低迷などの理由によって新規の植栽が行われることはまれであった、このような中で、五十七、八年頃に果樹の消費拡大を図るべく消費動向調査が実施され、同時に、余市・仁木といった果樹先進地との間で、観光農業に関して情報交換が行われ、これらをもとに本市の果樹栽培を本格的な観光果樹に転換させるためのプランが樹立された。
近年、市民の自然とのふれあいニーズが高まる中で、果樹栽培地域が市街地に隣接しているという立地条件を生かして、もぎとり農園・立木販売契約・直販など観光果樹への転換を図る動きが徐々に進行しているが、前記プランに促された新しい動きとして評価したい。これらの素材に広がりを持たせるために、サクランボ、ブドウなどの新更植栽の動きもみられる。また、品質向上や安定出荷を目的とし、サクランボにおいても雨よけ施設の導入が進められている。