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札幌圏における電力需要の増大

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 昭和四十三年の「北海道百年」以後の北海道は、昭和三十年代後半からの第一次産業の不振によって道内における過疎過密が進行し、四十七年の冬季オリンピック札幌大会の開催や札幌市の政令指定都市への移行もあって、道内人口の札幌圏への集中がよりいっそう進んだ。人口の集中は、電力需要の増加を意味する。このため、北電としても札幌圏への電力の安定的な供給が企業としての社会的使命となった。
 北電は三十九年八月に「大支店制」の構想を公表し、二十六年の会社設立以来、道内の中核都市を中心に設けていた一〇支店を道北・道央・道東・室蘭・函館の五大支店に再編成した。札幌圏を統括する道央支店は、四十四年四月に発足した。それまでの札幌・小樽・岩見沢の三支店を統合して札幌市に道央支店を置き、小樽・岩見沢には支社が置かれることになった。しかし、前述のように札幌圏への人口集中が進んだため、平成三年に組織・人事の見直しに着手した。具体的には、札幌支店から小樽・岩見沢の両支社を切り離して支店化すると共に、札幌圏の営業を強化するために人員配置を重点的に行い、札幌支店に「ほくでん契約センター」を設置して、契約変更などの受付業務を速やかに行う体制作りを行った。
 以上の点について、北電のデータから改めて検証してみよう。表36は、昭和四十年度以降平成十四年度に至る北電の契約口数と販売電力量の推移を、全道と札幌市を対比しながら示したものである。昭和四十年度までは道内で販売する電力量に占める札幌市の販売量は一〇パーセント程度に過ぎなかったが、一〇年後には倍増して二〇パーセントを占めるようになり、平成十年度には最高の二九パーセントに到達している。十二年度からは二五パーセントに低下しているが、これは、同年三月から電力小売の部分的自由化が実施され、受電電圧二万ボルト以上・使用規模二〇〇〇キロワット以上の特別高圧の電力供給は、当事者間の私的契約を原則とすることになったためである。この契約該当者は大規模な工場・商業施設・学校・病院などであり、表36にはこれら大規模需要者の数字は含まれていない。
表-36 北海道電力の契約口数・販売電力量の推移
年度全道(A)札幌市(B)B/A%
(電力量)
契約口数販売電力量
(千kWh)
契約口数販売電力量
(千kWh)
昭401,161,0165,383,430181,425578,55511
 411,231,3955,930,554199,811668,77411
 421,313,7326,591,265223,650767,99712
 431,405,9816,991,334245,479860,98112
 441,515,7117,639,490276,9621,063,63114
 451,651,9479,050,823305,9921,253,40614
 461,737,0308,990,099343,0651,511,92717
 471,866,7159,332,837372,3631,730,78319
 481,984,98110,432,663408,0621,946,16819
 492,093,01710,897,909437,0292,088,99319
 502,194,15211,652,698472,3222,306,49820
 512,291,98912,847,705499,9622,551,64620
 522,382,51613,564,261526,4252,748,54820
 532,476,02014,608,467561,1513,026,42521
 542,563,69515,915,578600,7813,235,57120
 552,635,30616,264,596628,3893,230,97420
 562,693,23916,393,865651,7283,343,67320
 572,760,77616,383,358684,4323,527,12022
 582,808,16916,846,606709,2783,720,45522
 592,852,27817,261,145735,7373,929,25723
 602,892,56517,623,399758,7704,084,53523
 612,930,94417,041,657778,3454,239,94425
 622,976,73717,288,566805,3794,470,86926
 633,040,72318,026,781839,8564,736,36726
平 13,111,12619,244,840873,9875,060,82426
  23,173,77720,454,915902,4185,367,48726
  33,256,00721,389,270938,9435,757,33627
  43,328,08921,909,918964,7235,957,32127
  53,385,34222,267,770989,8586,187,94728
  63,440,77223,445,1831,011,9136,608,94628
  73,504,21224,444,5971,042,4766,873,57528
  83,579,32225,802,3661,076,4927,244,33028
  93,636,95426,687,4411,102,8797,495,14828
 103,678,07127,063,0691,123,2087,734,88729
 113,719,37728,070,0991,144,8828,001,92729
 123,760,29629,111,3641,169,0857,366,31625
 133,790,87228,848,0001,189,9887,332,49925
 143,834,61829,247,0001,135,1717,491,80726
北海道電力(株)社内資料より作成。

 ちなみに十六年五月現在の札幌支店の管轄区域は、札幌市・石狩市・江別市・北広島市・恵庭市・千歳市と小樽市の一部、当別町と月形町の一部、厚田村・浜益村と新篠津村の一部であり、この七市・二町・三村はいうならば札幌圏である。平成十二年度における札幌支店の契約口数は一三六万一七九口数、販売電力量は一〇二億三五〇〇万キロワットであり、これは全道比の三六・二パーセント、三五パーセントをそれぞれ占めている。販売電力量は翌十三年度に三七パーセントまで上昇しているが、この比率が最高であり、十四年度には三五パーセントに低下している。次いで表37は、十五年度における北電の支店別営業規模(各支店毎の契約口数と販売電力量)を示しているが、札幌支店が全体の約三七パーセントを占めており、他の支店を圧倒している。
表-37 北海道電力の支店別事業規模
支店契約口数比率年間販売電力量
(百万kWh)
比率
旭川519,24613.43,47911.8
北見239,0076.21,7626.0
札幌1,450,29437.610,94337.1
岩見沢244,9586.31,6035.4
小樽185,4634.81,4154.8
釧路255,4316.62,1577.3
帯広256,6846.61,7786.0
室蘭158,3384.11,6445.6
苫小牧192,4995.02,3407.9
函館360,1729.32,4078.2
全道合計3,862,09299.929,528100.1
北海道電力(株)『VOLTAGE―北海道電力の現況2004―2005』より。
契約口数は平成16年3月末、年間販売電力量は平成15年度実績。

 近年におけるこのような札幌圏の旺盛な電力需要に対し、北電は電力供給を円滑に行うため設備の増強を図ってきた。札幌市内への電力供給は六六〇〇ボルトの高圧配電線で、また配電用変電所への電力供給は六万六〇〇〇ボルトで行っていることから、昭和四十年代以降配電用変電所の新設・増設と容量変更工事を相次いで実施した。配電用変電所の新設には、必ず送電線の新設を伴うことから、札幌市の清掃工場新設や市営地下鉄の延長、札幌ドームの建設などに合わせて、これらの施設に電力を供給する架空線・地中線の工事が行われた。
 また、札幌市への電力輸送の増強工事も行われた。札幌市内の電力消費が増加するにつれて、六万六〇〇〇ボルトのままでは輸送電力量も限られるので、すでに三十一年から一八万七〇〇〇ボルトの送電線で、六十二年からは二七万五〇〇〇ボルトの超高圧送電線による電力輸送を行っていたが、こうした高圧・超高圧電力の輸送開始を受けて、三十一年には一八万七〇〇〇ボルトの南札幌変電所、六十二年には二七万五〇〇〇ボルトの札幌西野変電所といった一次変電所の運転を開始し、札幌市内への電力供給を開始した。そして、これらの一次変電所で電圧を降下させた上、六万六〇〇〇ボルトの送電線によって配電用変電所に供給しているのである。いま、札幌市内へ供給する連絡用変圧器容量(一次変電所)の推移を示すと図4のようになり、六十三年以降平成九年までの時期にかけて急激に容量がアップしていることが明らかだろう。

図-4 札幌市内へ供給する連絡用変圧器容量の推移
北海道電力(株)社内資料より作成。