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労働組合組織率の推移と組織化対策

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 昭和三十五年(一九六〇)以降における人口の札幌圏一極集中現象は、労働組合の組織状況にも大きな変化をもたらした。道内各地域の過疎化と対照的に、人口、雇用者数ともに増加を続けた札幌市の労働組合員数の全道に占める割合は、四十五年の二四パーセントから六十年には三〇パーセントを超え、平成十二年には、総人口(三二・一パーセント)や雇用者の占める割合(三三・二パーセント)を大きく上回り四三・五パーセントを占めるに至った(表32・表33)。適用法規別では、民間が組合数・組合員数ともに増加したが、昭和六十年以降の増加数には電電公社や国鉄の民営化などにともなう増数を含み、一組合平均規模を官民別で比較すると、官公労は二五〇人前後、民間は一一〇人前後で推移し、大きな開きはみられない(表34)。一方、組合推定組織率は、全国では昭和五十七年に三〇パーセントを割り込んだが、四十五年以降ほぼ一貫して下降を続けた北海道では、五十五年に二八・三パーセントに低下していた(表33)。そして、札幌市でも、四十五年から五十五年までの一〇年間で雇用者数が約一三万人増加したのに対し、労働組合員数は三万人弱(二三・三パーセント)の増加に過ぎず、なかでも民間組合員数は約二万人増でむしろ未組織労働者との差が拡大した(表34)。組織率の高い官営事業所や、三〇〇人規模以上の民間事業所の正規雇用者などに対し、市内の九五パーセントを占める三〇人未満規模の企業のほか、「労務管理が徹底して行われている六〇~三〇〇名規模の事業所の組織化」も「依然として低迷」し、加えて急速に進む「主婦を中心とした臨時、パート、下請労働者の増加」が未組織労働者の「増大」につながっていたのである(札幌地区労議案書 昭56)。
表-32 札幌市の人口と雇用者数の全道に占める割合(昭和25~平成12年)

種別


年次
北海道札幌市
総人口
(人)
雇用者数
(人)
総人口
(人)
全道に占める割合
(%)
雇用者数
(人)
全道に占める割合
(%)
昭254,295,567791,692313,8507.384,49410.7
 304,773,0871,028,344426,6208.9124,71612.1
 355,039,2061,266,522523,83910.4173,82813.7
 405,171,8001,552,187794,90815.4304,93619.6
 455,184,2871,655,8051,010,12317.9375,59822.1
 505,383,2061,741,4441,240,61323.0447,65225.7
 555,575,9891,873,2561,401,75725.1504,04526.9
 605,679,4391,938,1141,542,97927.2567,49629.3
平 25,643,6472,031,3531,671,74229.6646,88731.8
  75,692,3212,171,1411,757,02530.9701,39332.3
 125,683,0622,152,7851,822,36932.1714,19833.2
人口及び雇用者数は、国勢調査による10月1日現在数。昭和25年7月白石村、同30年3月札幌村・篠路村・琴似町、同36年5月豊平町、同42年3月手稲町を合併。

表-33 北海道及び札幌市の労働組合組織状況の推移(昭和25~平成12年)

種別


年次
北海道全国の組合推定組織率
(%)
札幌市
組合数組合員数
(人)
推定組織率
(%)
組合数全道に占める割合
(%)
組合員数
(人)
全道に占める割合
(%)
推定組織率
(%)
昭252,344364,11746.046.231313.343,83112.051.9
 302,885362,36735.230.542814.851,51614.241.3
 353,649429,83633.931.652414.465,94117.837.9
 403,952492,42231.234.673618.6104,86221.334.4
 454,429531,01132.135.089320.2127,52124.034.0
 504,741524,04630.034.11,02921.7143,97327.532.2
 554,887530,52728.330.51,13623.2157,46429.631.2
 605,143531,15227.428.91,23424.0161,93530.528.5
平 24,984488,94921.325.21,23624.8169,75834.726.2
  74,890485,24723.123.81,36427.9184,97938.126.4
 124,498436,11319.821.51,49033.1189,90543.526.6
北海道の組合数・組合員数は『資料北海道労働運動史』『北海道労働組合名鑑』により、札幌市は『市統計書』による6月末日現在の数値。ただし、組合員数には海員組合は含まず、また昭和40年の札幌市は石狩支庁管内の数値。北海道及び札幌市の推定組織率は各年組合員数を国勢調査による雇用者数で除した百分率。全国の推定組織率は昭和55年までは『新版日本労働運動史』、昭和60年以降は労働省『労働組合基礎調査』による。

表-34 札幌市の法規別組合数・組合員数の推移(昭和25~平成12年)

種別


年次
労働組合総数
及び組合員総数
法規別労働組合及び組合員数
労働組合法公労法・地公法等
組合数組合員数組合数組合員数組合数組合員数
昭2531343,83120618,18710725,644
 3042851,51627322,60415528,912
 3552465,91634833,76017632,181
 40736104,86252961,26720743,595
 45893127,52169381,31020046,211
 501,029143,97380392,75322651,220
 551,136157,464914101,77522255,689
 601,234161,9351,057111,62417750,311
平 21,263169,7581,135127,08012842,678
  71,364184,9791,236143,02112841,958
 121,490189,9051,330143,44516046,460
『北海道労働組合名鑑』及び『札幌市統計書』による数値で、各年6月末現在。ただし、昭和40年は石狩支庁管内。〈公労法・地公法等〉には公共企業体労働関係法、国家公務員法及び地方公務員法、同30年以降には地方公営企業労働関係法の各適用組合が含まれる。ただし、公企法適用組合のうち、昭和60年4月電電公社が、同62年4月国鉄が民営化され、労働組合法適用組合となった。

 「臨時・パート労働者の方が多くなっている職場すら」出現し、組織化が「単なる目標やスローガン」では許されない状況を受け、札幌地区労は五十七年以降、未組織労働者の組織化を活動(運動)方針のトップに掲げ、官公労や大手系列企業の非常勤職員の組織化運動を強化し、「パート110番活動」などを本格的に始動させた(同前 昭59)。さらに広範な未組織労働者対象の相談センターを開設し、六十年九月、個人加入の「札幌パートユニオン」が地区労の支援により道内で初めて誕生した。合同労組や、個人加入も可能な地域労組、中小労連の組織拡大も徐々に進み、また同盟でも組織化運動を展開した。しかし、五十五年からの五年間で市内の雇用者数が六万人以上増加したのに対し、組合員数は四四七一人増にとどまり、六十年の札幌市における労働組合組織率も三〇パーセントを割り込むに至った(表33)。その後「全道パートユニオン連絡会」が道内の六単組により結成され、企業内パートユニオンや地域ユニオンが札幌のほか全道各地でも誕生し、平成四年(一九九二)には道内のパート労働者組織は一九七組合・一万一二六二人となった(労働組合基本調査 平4)。しかし、全道的には組合数・組合員数、組織率とも減少に歯止めはかからず、十二年、道内の組織率はついに二〇パーセントを割り込んだ(表33)。昭和六十三年から平成四年、全道で組織の解散や統廃合により一〇三七組合が解散し、九七四組合が新設されたが、新設のうち二八〇組合(二万四三四三人)は組織分裂によるものであり、一部に脱組合化現象もみられたのである(労働組合基本調査 平4)。
 こうした状況下でも札幌市は唯一、この間も組合員数が微増を続けたが、産業構造や雇用動向の「変化に対する対応の立ち遅れ」は深刻で(札幌地区労定期大会議案書)、平成二年の市内の組織率は三〇パーセントを割り込み二六パーセント台とさらに低下した(表33)。同年に発足した札幌地区労連は、「一〇万組織」を目標に掲げる道労連の方針を受けて、四年以降、地域組織の拡大月間やパート等未組織労働者の組織化行動強化月間を設定するなど本格的な組織拡大に着手した(道労連第五回定期大会議案)。一方の札幌地区連合も、平成五年の結成総会において中小零細企業やパート労働者の「大胆」な組織化運動や各パートユニオンとの連携強化を決定し、連合北海道と提携して「札幌地区ユニオン」を立ち上げ(札幌地区連合結成総会議案書)、また、街頭宣伝活動やチラシ・葉書配布、労働相談、「臨時・パート派遣労働者のつどい」等に加え、十一年からは介護・福祉労働関係職場の労働条件改善と組織化にも力点を置き、パートユニオン等との共催で「介護を支えるヘルパーの集会」なども開催するようになった(札幌地区連合経過報告書)。その結果、合同労組の草分け的存在の札幌地域労組も、六〇支部一六〇〇人(うち個人加入者五〇人)に拡大したが(道新 平12・9・10)、十三年二月、札幌地区連合は個別・集団相談や争議・訴訟支援体制をさらに強化するため、札幌圏勤労者の雇用組織化対策総合機関「さっぽろ労働相談センター」を新たに設置し、十月までの半年間で七産別、二〇単組四七〇五人を組織化した(札幌地区連合定期大会経過報告書)。