家庭内での夫からの女性への暴力などをはじめ、さまざまな人権侵害について女性自身が発言するようになったのは、昭和から平成へと元号が変わり、バブル経済の破綻が顕著に現れ始めた頃からであろうか。児童虐待と並行して家庭内暴力が顕在化し、目に見えて増加したことと関係する。これを踏まえて、公的機関にさきがけて民間組織のNPO法人「女のスペース・おん」では、平成五年(一九九三)から電話による相談を開始した(事務所開設は五月一日)。女のスペース・おん運営の「女性の人権ネットワーク事務所」が最初の年に電話で受付た件数は四四四件にのぼった。札幌市内はもとより、道内外、ときには外国からも寄せられ、①セクシュアル・ハラスメント=性的嫌がらせ、嫌がらせ、不当解雇、賃金不払い、などの労働現場での人権侵害、②ドメスティック・バイオレンス(夫婦、パートナーという親しい関係で生じる暴力のこと=DV)相談、③学校での性暴力、顔見知りからのレイプ、ストーカー事件などの性犯罪被害などがおもなものであった。女性の人権侵害としてまとめられる相談件数は、年々増加傾向を示した。開設から一〇年を経た十五年までに相談件数は一万件に達し、その相談の七割をこえるケースが「女性への暴力」による人権侵害であることが明らかになった(暴力のない世界をめざして NPO法人 女のスペース・おん 10年の歩み)。暴力をふるう男性の悩みを受け止める機関がないことや、欧米のように加害者の再教育の機会の必要性が問われた。