アイヌ民族問題を根本的に打開していくためには、従来の法律を廃止して新法を制定しなければならないといった意見の創出・陳情運動がおこってくるのは自然のなりゆきであった。昭和四十九年一月十九日社会党アイヌ民族特別委員会(川村清一委員長)では、アイヌ民族政策を発表し、「旧土人保護法」の廃止、新法制定を盛り込んでいた(道新 昭49・1・20)。五十五年五月二十八日開催の北海道ウタリ協会総会において同法の廃止とそれに代わる新立法の可能性についてこれまで以上に力を入れて検討がなされ、「出来るなら新立法を作って」という協会の方針が示された(道新 昭55・5・31)。五十九年三月五日、道ウタリ協会で「アイヌ民族に関する法律(案)」がまとまり、同年五月二十七日札幌市内で開催された道ウタリ協会総会においても満場一致で可決された。これ以後、同協会ではアイヌ新法制定特別委員会を開催、「アイヌ民族に関する法律案」を早急に実現するように、北海道知事と道議会議長に陳情書を提出したり(先駆者の集い 37号)、それを受けて道では道知事の諮問機関としてウタリ懇話会が設置され(道新 昭59・9・9)、「アイヌ新法」制定へ向けて始動することとなった。札幌支部でも六十年十月から新法に向けての学習会が開催された(ウタリ協会札幌支部20年の歩み)。六十一年五月四日、道ウタリ協会(五七支部、約一万五〇〇〇人)は、創立四〇周年記念式典・祝賀会を札幌市内で開催、「アイヌ新法」制定実現などを目指し会員の団結・協力を確認、『アイヌ史』編纂事業の七カ年計画を開始することを決定した。