アイヌ民族に対する誤解・偏見・差別観をまず解いていくといった基本的なことから着手した。たとえば、「ヤイ・ユーカラ(自ら行動する)アイヌ民族学会」では、昭和四十八年から観光バスガイドたちを招いてアイヌ民族に対する誤った歴史認識や民族観をなくすような運動を行った(道新 昭49・11・4)。また五十六年に札幌市に設置されたウタリ教育相談員の仕事の中には、差別や偏見を助長しない修学旅行の実現といったことも含まれていた(道新 昭56・12・10)。
道ウタリ協会では、これまで既存のアイヌ民族関係出版物は多いもののアイヌ民族にとって不満が多かったことからアイヌ民族自身の手で『アイヌ史』の編纂を計画し、北海道民生部に補助金を要請してきた。五十七年度から道民生部予算案で、ウタリ福祉対策振興費の中にアイヌ史編纂費補助金二〇〇万円を計上し、道ウタリ協会に一切を任せることにした。こうして編纂がすすめられた結果、道ウタリ協会アイヌ史編集委員会では、六十三年度から刊行開始し、『アイヌ史』資料編1 図書資料所蔵目録・視聴覚資料所蔵目録、資料編2 民具等資料所蔵目録(1)(以上昭63)、資料編3 近現代史料(1)(平3)、資料編4 近現代史料(2)(平1)、北海道アイヌ協会・北海道ウタリ協会活動史編(平6)の全五冊を刊行して完結した。