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市立学校教員アンケート調査

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 札幌市教育委員会では、道ウタリ協会札幌支部と連携して、昭和五十九年六月十八~七月十六日にかけて市内の市立幼稚園、小、中、高校の全教職員を対象に「アイヌに関するアンケート調査」を実施した。アイヌ民族に対する正しい認識を探り、あわせて今後の教育研修や副読本作りなどに役立てていく目的で、教育機関とウタリ協会が歩調を合わせた画期的な試みであった。数年前に札幌市内の小学校、高校における教師のアイヌ差別授業問題が一つのきっかけとなり、市教委と同支部で五十八年度から本格的な設問の詰めを行ってきた。四八項目に絞られた設問は、アイヌ民族に関する学習経験の問いかけから始まり、和人による差別があるかどうか、教師自身がアイヌ差別の体験があるか、など核心に触れる重たい設問も並んでいた。対象者は約八〇〇〇人にのぼり、六月十八日には、実施にあたって説明会が開かれ、道ウタリ協会札幌支部長は、「先生がたの意見、悩みを正直に出してもらいたい」と挨拶した(道新 昭59・6・19)。
 アンケート調査は、最終的に七三二二人から回答を得、市教委指導室では道ウタリ協会札幌支部と検討委員会を設けて集計と分析を行った。まとまった集計結果によると、①アイヌ史や文化に「関心がある」と答えたのは二一パーセント、「ごく普通」が五九パーセント、「関心なし」も一八パーセント近くあった。②現在のアイヌの生活実態については、「観光関連の仕事に従事」するケースが多いが三一パーセント、「昔ながらの生活」をしているが五パーセントを超えた。③差別についてでは、「あると思う」が四五パーセント、「ないと思う」が二八パーセント、④アイヌの児童、生徒が在籍している学級担任や授業体験した教員のうち、一三パーセントが、アイヌ児童・生徒の在籍を子供たちが知っていることでクラス内に特別な雰囲気があった、と答えた。また、感想として「アイヌであることを人に隠そうとしているのか、誇りを持っているのかわからない」ので学級指導に困るといった声も寄せられた。アンケート結果について札幌支部では、教員のアイヌに関する知識が、「全体として心もとないものが多い。研修会など勉強の機会を増やすべきだ」と指摘した(道新 昭61・5・4、札幌市立学校教員〈幼・小・中・高〉のアイヌに関するアンケート―集計結果とその分析― 昭61・3)。この調査結果を重く受けとめた市教委では、六十一年十二月から『アイヌの歴史・文化等に関する指導資料』を継続的に刊行したり、また「札幌市アイヌ民族教育に関する研修会」を定期的に開催し、民族教育の啓発活動を行っている。