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「国際先住民年」

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 平成元年(一九八九)三月十三~十五日、道ウタリ協会主催の第一回「アイヌ民族文化祭」を札幌市北区札幌サンプラザで開催した。「ヌヤン・ヌカラン・ピラサレヤン」(聞きなさい・見なさい・広げなさい)をサブタイトルに、古式舞踊、アイヌ語劇、民族衣装の紹介とファッションショー、アイヌ語弁論大会、展示等々盛りだくさんに民族の祭典が行われた。目的は、アイヌ民族文化を広く紹介し、正しい理解を深めていくとともに、その保存と保護思想の普及を図るためであった。「民族文化」を誇りをもって受け継ぎ、継承する運動の輪は、「アイヌらしさの復権」でもあった。以後、毎年道内各地で開催されることとなる(先駆者の集い 51号)。

写真-13 第1回「アイヌ民族文化祭」ポスター

 「民族文化」復権の輪は、「民族」の復権の輪へとつながって、地球規模の世界先住民共通の課題でもあった。三年五月、道ウタリ協会では国連先住民に関する作業部会ダイス議長(ギリシャの国際法学者)を日本へ招聘した。五月十九日から二十五日の日程で、ダイス議長等はアイヌ民族の現状視察として、札幌市をはじめ、平取町、阿寒町等を訪問した。札幌市では、五月二十一日道ウタリ協会総会でダイス議長が挨拶し、「アイヌ民族も先住民族として尊重され基本的人権を享受する権利を有します」と述べた。翌四年十二月十日は、「国際人権デー」にあたり、「世界の先住民の国際年(国際先住民年)」の開幕式典がニューヨークの国連本部で開催され、アイヌ民族を代表して道ウタリ協会の野村義一理事長が挨拶した(先駆者の集い 58号)。また、同時の国連総会において、「国際先住民の10年」が定められた。国連総会より少し前の十二月七日には、札幌市内で「国際先住民族年とアイヌ民族の人権シンポジウム」が開催され、道ウタリ協会札幌支部等をはじめ、五五〇人が参加した(ウタリ協会札幌支部20年の歩み)。
 五年の「国際先住民年」において、道ウタリ協会各支部で多彩な催しが行われた。札幌支部でも、アイヌ民族文化を中心に行事が開催された。同年八月二十三日、ウタリ協会主催で「アイヌ新法」早期制定総決起集会が札幌大通公園で開かれ、民族衣装の会員ら約三〇〇人が市内をデモ行進した(道新 平5・8・24)。
 六年四月、市市民局市民生活部にウタリ担当主幹が設置された(十年度からアイヌ施策担当課)。市は、福祉のみならず民族対策をも含んだウタリ施策を進めることとなった(北海道ウタリ協会札幌支部30周年記念誌)。「先住民の国際10年」が同年十二月十日から開幕することとなり、これを契機に北海道では、六年六月十三日アイヌ民族の言語、歴史、芸術、生活技術等に関する調査研究を目的とした、北海道立アイヌ民族文化研究センターを、札幌市北一条西七丁目にオープンした。