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アイヌ文化の継承・保存を求めて

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 九年七月一日施行の「アイヌ文化振興法」に基づいて「(財)アイヌ文化振興・研究推進機構」が正式に発足した。一方、道ウタリ協会札幌支部では、三年十二月二十六日、「アイヌ新法」制定運動と並行して、市が策定中の四年度からの「新五年計画」にアイヌ民族の歴史と文化を学び伝える(仮称)「アイヌ教育文化センター」の建設についての要望書を市に提出した(道新 平3・12・27)。翌四年十月九日、札幌支部では、市生活館の老朽化に伴い、新施設を求める陳情を提出した(五年一月二十二日、新生活館の建設陳情中、市議会厚生委員会が市生活館を視察)。七年六月二十六日、「ウタリ新生活館を求める陳情」二回目が提出され、八年三月六日採択された(十九期小史)。八年中には、札幌市「ウタリ交流施設」整備懇談会が二回開催され、九年七月七日、建設用地についての協議が、また八月八日には、交流施設についての協議が持たれた。やがて、市は十年一月二十九日、アイヌ民族の伝統文化の継承と交流の拠点として、市新生活館にあたる「ウタリ交流施設」を南区小金湯に建設する基本計画を固めた。展示や交流施設の本館、古式住居復元の「歴史の里」、自然環境を再現した森の三つのゾーンからなり、十年度に基本設計、十三年度春オープン予定とされた(道新 平10・1・29夕、北海道ウタリ協会札幌支部30周年記念誌)。
 市は、十二~十四年度の厚生労働省の緊急地域雇用創出特別対策推進事業に基づいた北海道からの補助金一億円をかけて、南区小金湯の同施設に展示する伝統的民具等復元作業を札幌支部に発注した。施設は十四年十一月、一四億五四六四万円を投じて完成、翌十五年七月十八日「札幌市アイヌ文化交流センター」として一部供用開始した(地域総合整備事業債一〇億八三一〇万円。うち用地取得費八六〇四万八〇〇〇円。一般財源三億七一五四万円。市市民局生活文化部アイヌ施策課資料)。途中、施設運営等を巡って市と札幌支部との対立も起こったが、幾度となく意見調整を重ねた結果、同年十二月二十日本格開館した。総敷地面積一万二〇〇〇平方メートル、延床面積二五六七平方メートル、鉄筋コンクリート地上二階建て本館と「歴史の里」、「自然の里」が再現された。同施設は、アイヌ文化とのふれあいを通して市民交流を促進するとともにアイヌ民族の歴史や文化を学び伝統文化の保存や継承の場となる大切な拠点とされ、本格開館当日、札幌支部三〇周年記念事業が開催された(北海道ウタリ協会札幌支部30周年記念誌)。