札幌市は、平成六年六月三十日に札幌市消費生活安定条例を廃止し、札幌市消費生活条例を公布した。背景にはバブル期に入った昭和六十年ころから、金取引の豊田商事事件に代表される悪徳商法など消費者問題の被害が深刻化、かつ複雑化しはじめ、さらに輸入食品や遺伝子組み換え食品問題など、専門的な知識の教育や啓発の必要性が高まったことによる。札幌市消費生活条例は、目的を、「消費者の利益の擁護及び増進に関し、市及び事業者、消費者の果たすべき役割を明らかに」することとし、消費者の権利の確立を基本とする理念を次のように定めた。消費生活に必要な物資等によって①生命、身体、及び財産を侵害されないこと、②適切な表示が行われ、適正な価格で提供されること、③不当な取引方法から保護され、不当な取引条件を強制されないこと。そのほか必要な情報の提供や受けた被害から適切・迅速に救済を受けられること、必要な教育を受けることなどであった。とくに商品の品質や保証期間の表示、包装の簡素化、取引行為の適正化などを事業者に求めていくことや、消費者による訴訟費用が困難な場合は、その費用の貸し付けや援助制度が盛り込まれた。
札幌市消費生活条例は平成六年七月一日に施行され、物価の安定だけでなく消費生活全般における権利の確立と行使をめざした。なかでも効力を発揮しつつあるのは、同条例に基づいて平成七年「札幌市不当な取引行為に該当する行為の基準を定める規則」を制定し、従来あいまいであった契約行為の境界線や内容を明確にすることで、消費者側だけでなく、勧誘や取引する業者側にも条例違反に抵触する基準を示し、違反行為を未然に防止することである。また、十五年に消費者行政拠点の消費者センターは、エルプラザ(北区北八西四)に移転した。