昭和三十五・三十六年に札幌市内でも大流行した小児マヒ・ポリオは、一旦根絶したかにみえたが、表21に示したように、四十七年に二人、四十八年に一人、五十七年にも一人の患者が出た。札幌市では免疫力が強く製造コストも低い生ワクチンを乳幼児に二回投与していた。しかし、ポリオ生ワクチンは毒性が低いものの、投与によって国内で数人がマヒを起こした例があることから、平成六年以降は親の判断で受ける「勧奨」に変わった。ところが大人でも海外旅行で感染した例があり、九年に厚生省の勧めにより、免疫保有率が他の世代よりも低い昭和五十年から五十二年までの出生者を対象に、希望者にのみ追加接種を保健センターで実施した。道内では法による副作用の救済措置がないことから接種に難色をしめす自治体が多いなか、市では保健センターを利用することで予防接種事故賠償保証保険が適用されることから実施に踏み切った(道新 平9・4・5)。ポリオは十二年十月二十九日、WHOが日本を含む西太平洋地域三七カ国・地域からの根絶を宣言したが、なおインドなどの汚染地域があるため、日本でも子どもたちにワクチン投与を続ける必要があるとした。WHOは二〇〇五年を目標に地球上からポリオを根絶する対象にしており(道新 平12・11・6)、市が実施した九年の希望者接種も根絶に向けての一連の流れの中にある。また、札幌の元患者でつくる「北のポリオの会」は、罹患から三、四〇年も経た後でも手足の筋肉が萎縮する「ポストポリオ」の後遺症があったため、リハビリや予防法を記した『ポリオとポストポリオの理解のために』を十二年に刊行し、元患者自身や医師、社会の理解を呼びかけた(道新 平11・3・10、12・11・18)。