キタキツネに寄生するエキノコックス(サナダムシの仲間)の虫卵が人間の口から体内に入り、幼虫によって肝臓が徐々に侵され、肝臓ガンに似た症状になる感染症である。キタキツネの糞から卵が排泄され、ヤチネズミが人間に媒介するものであった(道新 昭60・4・27)。市では、六十三年に「札幌市エキノコックス症対策実施要領」等を定め、衛生教育や検診、媒介動物対策および飲料水対策を協議し、それぞれの対策を実施してきた。また、苦情からやむを得ずキタキツネを駆除する場合は「鳥獣保護と狩猟に関する法律」に基づき、支庁長の許可を得て行われるが、市内で平成三年度に駆除されたキタキツネの数は六四匹にのぼった(道新 平5・6・15夕)。五年にはエキノコックス症に「アルベンダゾール」による薬物療法の道が開かれた。患者は市内で十一年に二人、十二年に八人、十三年に二人出ている(表22参照)。市では住宅地にキタキツネが頻繁に現れることから、独自の新たな都市型対策の指針「札幌市のエキノコックス症対策の方向性について」を作成し、予防対策を推進した。十一年四月には、「感染症新法」の4類に位置づけられ、市は収集した情報を正確かつ適切に提供することが役割であるとともに、湧水や沢水利用のスキー場やゴルフ場等のレジャー施設について毎年立ち入り検査を行い、水源環境の保持、エキノコックス虫卵除去装置の管理、水質検査の実施等を指導している。また、井戸水利用の事業場等の施設では定期的立ち入り検査を行い、水質検査の実施等も指導している(札幌市保健所事業概要 平11・12年度)。