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ねたきりの高齢者対策

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 従来は高齢者や障がい者の介護には行政による家庭奉仕員や民間の家政婦紹介所しかなかったところに、札幌市の在宅福祉サービスの三本柱であるホームヘルプサービス・デイサービス・ショートステイが実施された。昭和六十年(一九八五)~平成十一年(一九九九)度の高齢者保健福祉事業実績を表34に掲げた。これをみた限りでもいずれも利用者数が急激に伸びていることが分かる。うちホームヘルプサービス事業(昭38・8事業開始。以下同)は、身体上または精神上の障がいのため日常生活を営むのに支障がある高齢者の家庭に対してホームヘルパーを派遣し、日常生活を援助する事業である。内容は、家事・介護に関すること(食事の世話、衣類の洗濯・補修、住宅等の掃除、整理整頓、身の回りの世話、生活必需品の買い物、通院介助、その他必要な家事介護)、相談、助言等である。なお、市は、平成七年四月より民間の介護サービス会社にもホームヘルパー派遣を委託した(シルバーマーク認定事業者要覧 平10)。二番目のデイサービス(昭55・7)は、老人福祉施設等にデイサービス施設を設け、在宅の虚弱な高齢者等に対し、通所方法により各種サービスを提供する事業である。内容は、生活指導、日常動作訓練、養護、家庭介護者教室、健康チェック、送迎・入浴・給食サービスである(平十一年度B型三五、E型一八施設)。なお、近くの公衆浴場を用いた「ゆにーくサービス」(平7・7)も加わった(十一年度八浴場)。三番目のショートステイ(昭50・7)は、ねたきりの高齢者を介護している家族が、特別な理由(疾病等)により居宅における介護が困難となった場合、高齢者を一時的に老人ホームに預かり養護する事業である。養護老人ホーム札幌市長生園特別養護老人ホーム全施設で実施されている(十一年度三三施設)。これらに加え、夜間の介護が困難なねたきりの高齢者及び痴呆性高齢者を一時的に夜間のみ特別養護老人ホームが預かり養護するナイトケア事業(平1・8)も実施された(十一年度三〇施設)。

写真-8 デイサービスを受ける高齢者たち(昭55.7実施)

表-34 高齢者保健福祉事業実績(昭和60~平成11年度)
事業名昭60昭62平1平3平5平7平9平11
在宅保健福祉事業
 ホームヘルパー派遣[高齢者分](世帯)3283453704436891,0012,2183,990
 日常生活用具給付(件)581241732247902,8443,5056,584
 寝具洗濯・乾燥(件)242134179169144214175141
 ショートステイ(延日数)1,5532,4054,1619,10620,18831,06541,69859,169
 入浴サービス(件)6116331,0591,1303,2793,8705,2866,346
 おむつサービス(件)6506957561,0012,6064,4048,21811,802
 理容サービス(件)1542031712283617081,0621,143
 デイサービス登録者(人)2863053766171,0701,8712,7023,752
 デイサービス延利用者(人)10,24810,60011,91120,12535,10569,622111,403161,023
 配食サービス(食)19,933107,425197,738
 介護手当支給(人)7791,1191,087
 福祉電話設置(台)137142148161184221279329
 緊急通報機器設置(台)80218356512759985
 機能訓練(延利用者)8,27511,95314,23316,419
 訪問指導(延利用者)11,33223,45028,36230,186
 訪問歯科診査(人)168280422524
施設福祉事業
 養護老人ホーム入所定員(人)220184202206208230230230
 特別養護老人ホーム入所定員(人)1,0421,1201,1831,3231,5451,9802,3602,950
 軽費老人ホーム(A)入所定員(人)259345342337341350350350
 軽費老人ホーム(B)入所定員(人)143245141148149150150150
 ケアハウス入所定員(人)50250440580
 老人福祉センター利用者(人)167,266232,359290,551365,459425,359516,494558,395614,880
 老人生きがいセンター利用者(人)75,81884,44071,18569,53769,12259,74958,72147,970
 おとしより憩の家利用者(人)37,25244,32952,65364,22476,77683,927103,00597,442
『札幌市の高齢者福祉概要』、『札幌市の高齢者保健福祉概要』(各年版)より作成。

 一方、長期にわたって臥床している者に対しては、日常用具の給付及び貸与(昭46・1)、及び施設入浴サービス(昭52・4)、寝具洗濯・乾燥サービス(昭47・9)、おむつサービス(昭54・7)、理容サービス(昭54・7)事業も実施された。
 また、ひとり暮らしの虚弱な高齢者に対し栄養のバランスのとれた食事を届ける配食サービス(平7・7)は、安否確認や健康チェックに大変重要な役割を担っている。市の委託を受けて社会福祉法人南静会ふれあいフーズ事業部(平6創業)等も介護産業の一つとして登場してくる(道新 平11・2・3)。さらに、在宅でねたきりまたは重度の痴呆状態にある高齢者を、無報酬で介護している者に対して、その労苦を労うため介護手当の支給も開始されたが(平7・7)、十三年度には廃止となった。
 このほか市では、国のモデル事業としてグループホーム(平9委託)を開設、痴呆性高齢者が家庭的で落ち着いた雰囲気の小規模な生活の場で二四時間介護を受けながら共同生活を送ることにより、痴呆の進行を遅らせ、家族の負担の軽減を図ることを目的としている(十一年度末三施設)。また、徘徊痴呆性高齢者SOSネットワーク(平11)を開設し、徘徊するなどして行方不明となった痴呆性高齢者を市と警察等が主体となって捜索事業も実施されている。
 さらに、在宅福祉サービス協会の家事援助事業(平9)や、在宅介護支援センター(平2・11)の開設により在宅のねたきり高齢者とその家族に対し、総合的な相談を二四時間(夜間は電話のみ)受けるとともに、各種の保健・福祉などのサービスが受けられるよう関係機関と調整を行い、合わせて介護機器について指導助言を行っている(十一年度末五三カ所)。