都市化の波のなかで、児童・生徒は直接的・間接的に性の刺激を受けることが多い。そのため、市教委は昭和四十二年度から四年間、柏中学校に「中学校における純潔教育のあり方」を委託研究させた。四十八年度からは平岸小学校が委託研究を行い、小・中学校における一貫した指導のあり方について研究を重ねた。そのうえで五十年度には、小中学校用の「性教育の手引き」が発行された。六十二年度には、産婦人科医による「性」相談電話(平成三年度から「思春期」相談へ)と講師派遣事業を開始した。同年度には「性に関する指導の手引き」(小学校編・中学校編)が発行された。手引きは、性の発達段階に合わせて、いつ、何を、どの程度教えるべきかを小・中・高校一貫して見通せるものとなっている。また出生・人体のしくみや性モラルだけでなく、避妊法など現実的な問題に踏み込んだ内容が含まれ、エイズに関する正しい知識を教えるための指針も盛り込んだ(道新 昭62・6・9)。この手引きは、平成六年度に改訂版が、十一年度に再改訂版が出された。二年度には産婦人科医による「性に関する講演会事業」は小学校にも拡大した。四年度には「エイズに関する講演会」を実施した。
四年十二月一日には、札幌市性教育研究会の第三回学習交流会が、陵陽中学校を会場に開催された。授業公開では、中学校一年生を対象にエイズ問題が題材として取り上げられた。「中学校では生徒の実態を考えると、感染の危険性は極めて少ないと思われる。しかし、過剰とも思える情報環境の中にあって、エイズに対する正しい知識と、望ましい意識を養うことは、無用な不安や混乱を避けると共に、いわれのない偏見や差別を生じさせないことにつながると考えられる。/中学生の発達段階や実態を十分考慮し、エイズに対する知識を身に付け、認識を深めさせると共に、エイズに関わる諸問題に適切に対処できる能力を育てるため、本題材を」設定した、と『札幌市中学校教育五十年』にある。同著は、中学生を対象としたエイズに関する市内「おそらく最初」の授業であるとし、「和やかな雰囲気の中にも真剣な応答が交され、エイズの症状・感染について理解を深め、エイズ患者への偏見を払拭する展開で、参観の先生方の感銘をさそっていた」と記している。