札幌市では,札幌区制施行12年にあたる明治43年(1910)1月,札幌区会で区史編纂が決議され,伊東正三に委嘱して編纂事業を開始,明治44年7月『札幌区史』(1028頁)が刊行された。それより前の明治30年(1897)2月には,大変ユニークなことに民間有志からなる札幌史学会による『札幌沿革史』(256頁)が刊行されている。
その後本格的自治体史の編集は,戦後のことである。一度目は,札幌市〈創建80周年〉事業の一環として昭和24年(1949)8月に札幌市史編集委員会が設置され,市史編集が本格的に開始された。内館泰三と田中潜が担当し,昭和28年3月には『札幌市史 政治行政篇』(772頁)を,同30年8月には『札幌市史概説年表』(451頁)を,同33年4月には『札幌市史 産業経済篇』(676頁)と『札幌市史 文化社会篇』(726頁)の4部作を刊行してきた。戦後二度目の自治体史編集は,札幌市〈創建百年〉記念事業の一環として,昭和42年(1962)4月に札幌市史編さん委員会が設置され,翌43年7月には『札幌百年の人びと』(459頁),45年5月には『札幌百年のあゆみ』(553頁),『札幌百年の年譜』(149頁)の3部作を刊行してきた。
2 『新札幌市史』の基本方針
こうした自治体史編集の伝統を受け継いで,昭和54年度第4回定例本会議において,当時の板垣武四市長は,昭和63年(1988)に迎えくる〈創建120年〉記念事業の一環として,戦後三度目の新しい市史の刊行を明らかにした。やがて昭和56年4月1日に札幌市教育委員会文化資料室内に新札幌市史編集室がおかれ,同年9月18日第1回の市史懇談会が開催された。基本方針として,
1.広い視野と清新な歴史観に立って,札幌の歴史を通観できる豊かな内容を盛り,時代範囲は先史時代から現代(昭和55年を目途とする)とし歴史の流れを全体的に叙述する。
2.札幌は,北海道における首府として建設された地であり,名実ともに北海道の政治・経済・文化等の中心として発展してきている。また,他に類例をみないほど迅速に近代都市へと発展した貴重な歴史的体験を有する都市であることから,この発展の因って来たる所以を明らかにすると同時に,将来に対しより広い展望をもったものとする。
3.札幌の歴史は,そこに住み暮らしてきた人々の歴史であり,市政史に陥らず,市民生活の描写に重点をおき,それを中心にして時代の推移を浮かび上がらせることに努める。
4.札幌を叙述することは当然であるが,社会の有機的関係を捉えて広く北海道,日本,世界の動きも視野におさめて叙述する。
5.一般市民に広く読まれることをめざし,文章表現は平易であることを心がけ,同時に学術的にも高水準のものをめざす。
6.巻構成は全8巻とし,通史編5巻,史料編2巻,年表(附表・索引)1巻とする。
といったことが決定され,編集事業が本格的に開始された。
3 編集・刊行
当初は,昭和59年度第1巻刊行を予定し,以後毎年1巻ずつの刊行予定としていたが,史料収集や分析に時間を大幅に要したため,当初の刊行計画を大幅に変更し,平成20年3月末をもって『新札幌市史』は以下のように編集・刊行を完結した。
第1巻 通史1 札幌の自然史 A5判 1039頁 平成元年3月28日刊行
先史の札幌
イシカリ場所の成立
イシカリの改革とサッポロ
付図札幌市地質図・札幌市遺跡分布図
第2巻 通史2 札幌本府の形成 A5判 1047頁 平成3年10月19日刊行
道都への出発
第3巻 通史3 近代都市札幌の形成 A5判 915頁 平成6年3月28日刊行
第4巻 通史4 転換期の札幌 A5判 1147頁 平成9年3月31日刊行
第5巻 通史5(上) 大都市への成長 A5判 1021頁 平成14年3月31日刊行
第5巻 通史5(下) 現代の札幌 A5判 1053頁 平成17年3月31日刊行
第6巻 史料編1 A5判 1040頁 昭和62年3月31日刊行
第7巻 史料編2 A5判 1123頁 昭和61年3月28日刊行
第8巻 統計編 B5判 637頁 平成12年2月29日刊行
第8巻Ⅱ 年表・索引編 B5判 859頁 平成20年3月25日刊行
4 編集体制
『新札幌市史』編集事業は,開始当初市史編集長(高倉新一郎=第1種非常勤嘱託)1人,編集員3人(渡辺茂・みねひろし・深瀬清=第1種非常勤嘱託)と臨時職員1人・事務職員1人のささやかな組織に過ぎなかったため,渡辺茂編集員が1年足らずで逝去されたこともあり,2年目からは編集員を5人(うち1人は編集助手。途中より編集員)とし,編集体制の増強を図った。これにより,編集のための基本史料の収集の機動力がより一層増した。しかし,編集に着手してみると札幌に関する史料の情報が市内外から陸続と寄せられ,うれしい誤算に編集室では対応に追われた。北海道行政資料課(現北海道立文書館)や,北海道大学附属図書館北方資料室・北海道立図書館・北海道開拓記念館の札幌関係史料のマイクロ撮影はもとより,東京の十文字家史料調査及びマイクロ撮影等が挙げられる。
そんな史料収集に追われ,整理編集・解読作業の最中,すでに編集方針の刊行計画とは齟齬を来たしていた昭和60年4月,はじめて専任編集員1人が配置され,市史編集体制の重要な屋台骨が出来た。その後も,第1種非常勤嘱託編集員の入れ替え・増員・減員が行われ,今日に至った。
新札幌市史編集長 高倉新一郎 昭和56年4月から平成2年6月まで(逝去)
新札幌市史編集長 坂口 勉 平成4年4月から平成4年7月まで(退職)
新札幌市史編集長 君 尹彦 平成4年8月から平成11年3月まで(退職)
新札幌市史編集長 海保洋子 平成11年4月から完結まで
専門員 海保洋子 平成6年4月から平成11年3月まで(編集長へ)
副編集長(専門員) 中村英重 平成11年4月から完結まで
主任編集員 みねひろし 昭和61年4月から平成3年3月まで(退職)
主任編集員 小野規矩夫 平成3年4月から平成4年3月まで(退職)
主任編集員 君 尹彦 平成4年4月から平成4年7月まで(編集長へ)
主任編集員 海保洋子 平成4年8月から平成6年3月まで(専門員へ)
主任編集員 中村英重 平成6年4月から平成11年3月まで(専門員へ)
主任編集員 白木沢旭児 平成11年4月から平成17年3月まで(退職)
編集員 渡辺 茂 昭和56年4月から昭和57年3月まで(逝去)
編集員 みねひろし 昭和56年4月から昭和61年3月まで(主任へ)
編集員 深瀬 清 昭和56年4月から昭和61年3月まで(退職)
編集員 青山英幸 昭和57年4月から昭和59年11月15日まで(退職)
編集員 海保洋子 昭和57年4月から平成4年7月まで(主任へ)
編集調査員(後編集員) 榎本洋介 昭和57年4月から昭和60年3月まで(退職)
編集員 中村英重 昭和57年5月から平成6年3月まで(主任へ)
編集員 小野規矩夫 昭和60年4月から平成3年3月まで(主任へ)
編集員(専任) 君 尹彦 昭和60年4月から平成元年2月まで(退職)
編集員 原田一典 昭和61年4月から平成3年3月まで(退職)
編集員(専任) 榎本洋介 平成元年4月から完結まで
編集員 君 尹彦 平成2年4月から平成4年3月まで(主任へ)
編集員 竹ヶ原幸朗 平成3年5月から平成9年3月まで(退職)
編集員 白木沢旭児 平成3年6月から平成11年3月まで(主任へ)
編集員 高木博志 平成4年4月から平成10年3月まで(退職)
編集員 橋場ゆみこ 平成4年8月から完結まで
編集員 石田武彦 平成6年4月から完結まで
編集員 今野由佳里 平成9年4月から平成16年3月(退職)
編集員 横井敏郎 平成9年4月から平成17年3月まで(退職)
編集員 西田秀子 平成9年6月から完結まで
編集員 一盛 真 平成10年4月から平成12年3月まで(退職)
編集員 平井廣一 平成11年5月から平成17年3月まで(退職)
編集員 大矢一人 平成12年5月から平成17年3月まで(退職)
編集員 仙波千枝 平成16年5月から完結まで
編集員 大矢和子 平成17年4月から完結まで
編集室は,文化資料室のある中央区大通西13丁目の札幌市資料館2階におかれていたが,平成18年3月末,文化資料室が中央区南8条西2丁目の旧豊水小学校の建物に移転するに伴い,移転した。
また,平成19年4月には機構改革により,文化資料室は教育委員会生涯学習部から総務局行政部へ移管となった。
5 市史懇談会
『新札幌市史』は,市民の意志を広く反映させたいといった考えから学識経験者,郷土史研究者,市職員の三者からなる新札幌市史懇談会を構成することとし,昭和56年度に10人で発足した。途中多少の委員の交代があったが,歴代の市史懇談会委員の構成は以下の通りである。
◇市史懇談会委員(五十音順・肩書きは委嘱当時)
伊藤 義郎(札幌商工会議所副会頭)
榎本 守恵(北海道教育大学教授)(平成5年9月逝去)
九島勝太郎(北海道文化団体協議会会長)(平成5年9月逝去)
小塩 進作(北海道熱供給公社社長)(平成10年3月逝去)
坂口 勉(北海道教育大学教授)
更科 源蔵(北海道文学館理事長)(昭和60年9月逝去)
高倉新一郎(北海道開拓記念館館長・新札幌市史編集長)(平成2年6月逝去)
永井 秀夫(北海道大学教授)(平成17年12月逝去)
中島 好夫(札幌商科大学理事長)
市総務局長
市教委教育長
第1回市史懇談会:昭和56年9月18日開催 議題:刊行の趣旨および基本方針。
第2回市史懇談会:昭和59年2月6日開催 議題:第1回配本を昭和60年度とする件,その後の刊行計画に関する件等。
第3回市史懇談会:昭和60年9月17日開催 議題:第1回配本を第7巻史料編2から刊行,翌年第6巻史料編1刊行と順序変更と計画の一部変更の件等。
第4回市史懇談会:昭和61年11月19日開催 議題:第3回配本第1巻通史1の刊行を昭和63年度に変更の件等。
第5回市史懇談会:昭和63年12月13日開催 議題:第4回配本通史2の刊行時期を昭和65年度(平成2年度)に変更する件等。
第6回市史懇談会:平成4年2月5日開催 議題:市史編集長後任に坂口勉氏を委嘱する件。今後の刊行計画については,昭和56年度に編集に着手し,59年度より毎年1巻ずつ発刊し,全8巻を刊行する計画であったが,史料の収集及び膨大な作業量などにより現在4巻の発行にとどまっている。前回の懇談会での委員からの意見も参考に,未刊の4巻について計画を見直した結果,今後2年に1巻ずつ刊行し,平成10年に完成という計画に変更する,と決定。
6 専門部会員・編集協力員及び拡大編集会議
編集室では,各巻ともに編目構成を検討し,史料収集などその他の作業を進め,各編集員が担当分野の執筆を基本としたが,通史1から通史4までは高度な専門的知識を要する分野については専門の研究者に執筆依頼し,専門部会を立ち上げ,専門部会を開催して意見調整を行ってきた。通史5(上)からは,専門家の方々を編集協力員として正式に発令することが出来た。政治・行政,産業・経済,社会・生活,教育・文化・宗教の専門部会に所属していただき,年2〜3回くらいずつ各部会を開催し,編目構成から史料収集・執筆項目の調整等を行ったり,さらに勉強会を重ね,きめ細かな市史作りができるようになった。本務の傍らというご多忙の中でのご執筆に厚く感謝申し上げる。
◇専門部会員(通史1〜4)・編集協力員(肩書きは委嘱当時)
通史1
赤松守雄(北海道開拓記念館),五十嵐八枝子(北海道大学),北川芳男(静修短期大学),松下勝秀(北海道地下資源調査所),上野秀一(札幌市教育委員会),加藤邦雄(札幌市教育委員会),百々幸雄(札幌医科大学),野村崇(北海道開拓記念館),羽賀憲二(札幌市教育委員会)以上9人
通史2
大庭幸生(北海道立文書館首席文書専門員),鈴江英一(北海道立文書館私文書係長)以上2人
通史3
遠藤明久(元北海道工業大学教授),坂下明彦(北海道大学農学部助教授),桑原真人(札幌大学助教授),堅田精司(北海道史研究者),鈴江英一(国立史料館教授)以上5人
通史4
荻野富士夫(小樽商科大学教授),堅田精司(北海道史研究者),桑原真人(札幌大学助教授),神谷忠孝(北海道大学教授),鈴江英一(国立史料館教授)以上5人
通史5(上)
浅田政広(旭川大学教授),飯塚優子(札幌学院大学非常勤講師),一瀬啓恵(室蘭工業大学非常勤講師),荻野富士夫(小樽商科大学教授),小幡 尚(高知大学人文学部助教授),堅田精司(北海道社会文庫主宰),神谷忠孝(北海道文教大学外国学部教授・北海道大学名誉教授),桑原真人(札幌大学教授),白戸仁康(北海道史研究者),鈴木敏夫(北海道大学大学院教授),鈴江英一(国立史料館教授),林 恒子(女性史研究者),前川公美夫(北海道新聞社文化部長),村田文江(北海道教育大学岩見沢校助教授),森 雅人(札幌国際大学助教授),山田定市(北海学園大学教授)以上16人
通史5(下)
浅田政広(旭川大学教授),一瀬啓恵(室蘭工業大学非常勤講師),大沼義彦(北海道大学教育学部助教授),奥岡茂雄(北海道浅井学園大学教授),桑原真人(札幌大学教授),白戸仁康(北海道史研究者),鈴江英一(北海道教育大学教授),鈴木喜三夫(演出家),田中 綾(歌人・短歌評論家),林 恒子(女性史研究者),前川公美夫(北海道新聞社文化部長),村田文江(北海道教育大学岩見沢校助教授),森 雅人(札幌国際大学助教授),山田定市(北海学園大学教授)以上14人
年表編
平井廣一(北星学園大学経済学部教授),君 尹彦(元北海道教育大学教授),白木沢旭児(北海道大学文学部教授),浅田政広(旭川大学教授),桑原真人(札幌大学教授),一瀬啓恵(室蘭工業大学非常勤講師),林 恒子(女性史研究者),白戸仁康(北海道史研究者),大矢一人(藤女子大学文学部教授),大沼義彦(北海道大学教育学部助教授),前川公美夫(北海道新聞社編集委員),鈴江英一(元北海道教育大学教授),田中 綾(歌人・短歌評論家)以上13人
通史1〜4までの専門部会および通史5(上)以降の拡大編集会議は以下のように開催された。
専門部会:昭和57年3月29日開催 議題:通史1の地質・考古関係原稿執筆依頼等。
専門部会:昭和57年5月11日開催 議題:通史1の地質・考古関係打ち合わせ等。
専門部会:平成2年4月13日開催 議題:通史2の編集経過,執筆分野の原稿依頼。
専門部会:平成4年9月9日開催 議題:通史3の編集経過,編集計画等。研修会。
専門部会:平成7年4月5日開催 議題:通史4の編集経過,編目構成案,刊行計画,研修会。
拡大編集会議:平成10年11月28日開催 議題:編集協力員制度発足(委嘱),通史5の刊行計画,時期区分・視座のポイントの説明等。専門部会。
拡大編集会議:平成13年1月27日開催 議題:通史5(上)発刊計画,執筆要領,編目構成等,研究報告2本。専門部会。
拡大編集会議:平成15年6月21日開催 議題:通史5(下)発刊計画,執筆要領,編目構成等,研修会(札幌建築鑑賞会:映像にみる札幌の20世紀)。専門部会。
拡大編集会議:平成17年5月28日開催 議題:第8巻Ⅱ年表・索引編発刊計画と年表執筆要領等の確認と検討。専門部会。
7 研修会等
編集室では,市史に新しい歴史研究の成果を取り入れるため,各時代ごとに各分野の専門の研究者を招いて研修会を開催して研鑽につとめるとともに,フィールドワークも行った。
第1回近世史研修会:昭和61年5月20日(講師:海保嶺夫北海道開拓記念館学芸員)
第2回近世史研修会:昭和61年6月17日(石狩フィールドワーク・講師:田中実郷土史研究者)
第3回近世史研修会:昭和61年7月18日(小樽・銭函フィールドワーク・講師:横川幸作・伊藤正直郷土史研究者)
第4回近世史研修会:昭和61年8月18日(講師:榎森進松前町史編集長)
第5回近世史研修会:昭和61年10月7日(講師:田端宏北海道教育大学教授)
第6回近世史研修会:昭和62年7月17日(講師:山田秀三アイヌ語地名研究家)
第7回近世史研修会:昭和62年9月25日(講師:長谷川伸三小樽商科大学教授)
第1回近代史研修会:平成3年10月23日(講師:田中彰北海道大学教授)
第2回近代史研修会:平成3年11月20日(講師:永井秀夫北海道大学教授)
第3回近代史研修会:平成3年12月18日(講師:榎本守恵北海道教育大学教授)
第4回近代史研修会:平成4年1月22日(講師:長岡新吉北海道大学教授)
第5回近代史研修会:平成4年3月18日(講師:鈴江英一国立史料館教授)
第6回近代史研修会:平成4年9月9日(講師:堅田精司社会文庫主宰)
第7回近代史研修会:平成4年12月15日(講師:遠藤明久元北海道工業大学教授)
第8回近代史研修会:平成5年3月17日(講師:横井敏郎北海道大学教育学部助手)
第9回近現代史研修会:平成7年4月5日(講師:荻野富士夫小樽商科大学教授)
第10回近現代史研修会:平成7年9月20日(講師:堅田精司社会文庫主宰)
第11回近現代史研修会:平成7年11月29日(講師:鈴江英一国立史料館教授)
講演会:平成12年5月17日(講師:蝦名賢造元獨協大学教授)
第12回近現代史研修会:平成15年9月24日(講師:奥山英司北星学園大学助教授)
第13回近現代史研修会:平成16年1月28日(講師:鈴江英一元北海道教育大学教授)
8 機関誌『札幌の歴史』
編集事業の一方で,市史編集に関する情報の提供や研究成果の発表の場とするため機関誌『札幌の歴史』(A5判)を年2回のペースで刊行することとし,創刊号(昭和56年12月)以来〜54号(平成20年2月)まで刊行した。市内外の多くの方々にご執筆いただき,高度な知識を必要とする専門的な論文・研究ノート等々は,通史執筆に多いに役立ったことはいうまでもない。
創刊号 「『新札幌市史』編集の基本方針」ほか(昭和56年12月) 56頁
第2号 「札幌空襲の実態」ほか(昭和57年3月) 52頁
第3号 「『惣大将』と商場知行制」ほか(昭和57年8月) 68頁
第4号 「札幌で話されていたアイヌ語の行方」ほか(昭和58年2月) 64頁
第5号 「草創期札幌の支配と社会」ほか(昭和58年8月) 72頁
第6号 「北海道開拓論と札幌」ほか(昭和59年2月) 64頁
第7号 「十文字好古と草創期の札幌」ほか(昭和59年8月) 78頁
第8号 「札幌初期の新聞」ほか(昭和60年2月) 72頁
第9号 「札幌におけるカトリックの伝道」ほか(昭和60年8月) 70頁
第10号 「札幌写真事始」ほか(昭和61年2月) 72頁
第11号 「北海英語学校中学部の設立」ほか(昭和61年8月) 78頁
第12号 「札幌と松浦武四郎」ほか(昭和62年2月) 74頁
第13号 「大友亀太郎について」ほか(昭和62年8月) 84頁
第14号 「石狩場所の歴史ノート(上)」ほか(昭和63年2月) 80頁
第15号 「札幌地域のレンガ史」ほか(昭和63年8月) 72頁
第16号 「札幌における細民街の成立」ほか(平成元年2月) 78頁
第17号 「札幌市手稲山口の社会と民俗」ほか(平成元年8月) 76頁
第18号 「福岡県と札幌移住」ほか(平成2年2月) 72頁
第19号 「島判官の札幌本府経営計画とその諸問題」ほか(平成2年8月) 72頁
第20号 「戦前期札幌における女子労働について」ほか(平成3年2月) 78頁
第21号 「ジョン・バチラーと札幌」ほか(平成3年8月) 82頁
第22号 「資料から見た札幌の新聞」ほか(平成4年2月) 74頁
第23号 「明治期札幌における社会調査」ほか(平成4年8月) 66頁
第24号 「明治後半期における札幌の移住動態」ほか(平成5年2月) 84頁
第25号 「北海道拓殖銀行と金融市場」ほか(平成5年8月) 82頁
第26号 「高岡熊雄の農政・植民論」ほか(平成6年2月) 76頁
第27号 「大正・昭和戦前期の札幌における百貨店の展開」ほか(平成6年8月) 62頁
第28号 「札幌の保育所」ほか(平成7年2月) 76頁
第29号 「手稲鉱山について」ほか(平成7年8月) 74頁
第30号 「札幌の食文化」ほか(平成8年2月) 80頁
第31号 「『戦時下キリスト教史』の叙述について」ほか(平成8年8月) 88頁
第32号 「戦後の町内会組織の復活について」ほか(平成9年2月) 70頁
第33号 「戦後まもなくの札幌の児童文化」ほか(平成9年8月) 84頁
第34号 「札幌 大正・昭和の写真(上)」ほか(平成10年2月) 68頁
第35号 「戦間期日本における新中間層と消費文化,そして百貨店」ほか(平成10年8月) 68頁
第36号 札幌市における敗戦直後の労働運動」ほか(平成11年2月) 90頁
第37号 「北海道にみる国勢調査前史」ほか(平成11年8月) 62頁
第38号 「プランゲ文庫にみる札幌の児童出版物」ほか(平成12年2月) 76頁
第39号 「わたしの戦後体験・戦後研究」ほか(平成12年8月) 78頁
第40号 「有島武郎の新婚の家・再考」ほか(平成13年2月) 72頁
第41号 「札幌市の高齢者福祉の現状」ほか(平成13年8月) 64頁
第42号 「企業別労働組合の成立と変遷1945〜1990年」ほか(平成14年2月) 68頁
第43号 「宇野千代,札幌時代の文学修練」ほか(平成14年8月) 70頁
第44号 「終戦後札幌市における地域住民組織」ほか(平成15年2月) 68頁
第45号 「札幌における県人会の形成」ほか(平成15年8月) 66頁
第46号 「絵図にみる’観光札幌,-吉田初三郎の世界」ほか(平成16年2月) 54頁
第47号 「札幌における藍づくりと篠路興産社」ほか(平成16年8月) 72頁
第48号 「札幌市の各種学校」ほか(平成17年2月) 88頁
第49号 「GHQ/SCAP検閲文書に見る札幌発行文芸誌」ほか(平成17年8月) 86頁
第50号 「市民が綴る札幌の戦後60年-記憶に残る「その時」の一コマ」ほか(平成18年2月)90頁
第51号 「戦時期札幌の会社について」ほか(平成18年8月) 76頁
第52号 「戦後札幌市の農業関係資料」ほか(平成19年2月) 80頁
第53号 「札幌書道前史-書画会から近代書道へ」ほか(平成19年8月) 82頁
第54号 「『新札幌市史』の完結を迎えて」ほか(平成20年2月) 86頁
9 歴代事務局員
第1巻 通史1 木原直彦,本田照治,林 幹也(平成元年3月28日刊行)
第2巻 通史2 中辻清矩,錠者弘己,木原直彦,森 幸雄,林 幹也(平成3年10月19日刊行)
第3巻 通史3 山 恒雄,森 幸雄,林 幹也(平成6年3月28日刊行)
第4巻 通史4 森 幸雄,林 幹也(平成9年3月31日刊行)
第5巻 通史5(上) 本間敏幸,門谷 陽,林 幹也(前),佐々木泰一(平成14年3月31日刊行)
第5巻 通史5(下) 原本昌代,小堀苦味男,門谷 陽(前),岩佐啓吉(平成17年3月31日刊行)
第6巻 史料編1 木原直彦,門馬富士子,林 幹也(昭和62年3月31日刊行)
第7巻 史料編2 木原直彦,門馬富士子,林 幹也(昭和61年3月28日刊行)
第8巻Ⅰ 統計編 高橋 誠,伊藤直一,林 幹也(平成12年2月29日刊行)
第8巻Ⅱ 年表・索引編 伊藤明徳,竹内 啓,岩佐啓吉(平成20年3月25日刊行)
おわりに
『新札幌市史』全8巻10冊の編集事業は,昭和56年(1981)4月から平成20年(2008)3月まで,27年の歳月を費やして完結した。個人的には,それより1年前に臨時職員として,市史編集の準備のために史料収集等に着手したので満28年間携わったことになる。四半世紀を超える大事業に対し,財政逼迫にもかかわらず市史編集に多大な熱意とご理解を以て予算措置をしていただき,完結を迎えたことに感謝申し上げたい。しかし,後年のために反省点として4点を上げておきたい。
1,「1年に1巻刊行」といった当初の刊行計画が,編集に必要な史料の把握,それに関わる人材の投入・育成等を無視した実現不可能な計画に近かった事である。新たな史料の公開・発見による膨大な史・資料群に,やむなく途中でなしくずし的に刊行計画をずらさざるを得なかった。
2,過去の修史事業の史料が市自体に継承されていないばかりか,これまで史料の悉皆調査が皆無に近く,史料編を過去に刊行した経験がなかった事である。さらに残念なことに,市立の文書館も未設置の状況で,行政資料が歴史史料であるといった認識が定着していなかった。
3,道外の自治体史の場合,編集着手と同時に,古代・中世・近世・近代・現代といった時代区分ごとに専門部会を設置して,同時併行で事業が進められ,概ね10年計画で完結を見るが,札幌市の場合まだ条件が整っていなかった事である。同一編集員が,近世を終えて次に近代というごとく,概ねすべての巻に関わる体制であった。今後市史編集は,札幌市の永続的な業務として常設され,そのための専門的人材の配置・育成が強く望まれる。
4,基本方針がどんなにすぐれていても,編集体制が脆弱ではすぐれた市史が生まれないという事である。非常勤嘱託編集員が中心的戦力ということは,作業量からいっても改善されねばならない。実際,市史編集に専念するに足る保証を欠き,これは編集員の志気にも関わる問題である。
一方には『新札幌市史』の成果物を「自己満足的」と見る向きもあると聞くが,史料に基づいた市史を作った上ではじめて,概説書や小中学生向けの市史が編まれるのである。一定の高いレベルを保つために,編集員はこういう条件下で精一杯努力してきた。特に最終配本となる第8巻Ⅱ年表・索引編は,連日の残業,土日出勤を厭わず,鋭意努力を重ねたことを敢えて記しておきたい。
市史編集27年間で,遺憾に堪えないのは,業半ばにして初代編集長の高倉新一郎先生,編集員の渡辺茂先生,主任編集員のみねひろし先生,編集員の深瀬清先生をはじめ,市史懇談会委員更科源蔵先生,榎本守恵先生,九島勝太郎先生,小塩進作先生,永井秀夫先生,また編集協力員の鈴木敏夫先生が他界されたことである。まことに痛恨極まりない。謹んで哀悼の意を表し,ご冥福を祈る次第である。
しかしながら一方ではこの事業の過程において,単なる市史の編集に止まらず,過去の修史作業時になし得なかった史料の受贈・収集・保存のいくばくかを実施し得ることができた。末筆ながら,古記録など貴重な史料を寄贈して下さった方々をはじめ,快く古文書・図書・写真を含めた史・資料の撮影許可を与えて下さった個人・団体・史料保存機関に対して,深甚な謝意を表する次第である。なお,収集し得た史・資料群は,永く札幌市文化資料室に保存して将来に備えることとしたい。
平成20年3月
新札幌市史編集長 海保 洋子
(図)