大井や北品川の海岸平野の沖積層は、厚さが一〇ないし二〇メートルと比較的薄い。ときに砂や礫のはさまれることがあるが、全般にシルト質の堆積物である。第一京浜道路の工事に際して、地表直下、だいたい海抜〇メートルぐらいの位置からカキなどの多量の貝化石が産出した。
東京湾臨海地域の海成沖積層は、もっとも厚いところで五〇メートルを越すので、この海岸平野の沖積層は沖積層全体からみると上部層にあたると思われる。後述の、深い谷地形を水没させた沖積海進の時代のもっとも新しい時代に、現海面下約二〇メートル位の深さに波食台を武蔵野台地に刻み込んだのち、海面はふたたび上昇してこの地層がたまったものと考えられる。