目黒川低地の沖積層は、厚さが上流側の亀甲橋(きっこうはし)(西五反田)では一〇メートルくらい、下流にいくに従って増し、居木橋(いるきばし)(大崎一丁目)で一五メートル、東海橋(京浜急行電鉄)で二四メートルにも達する。そして谷の横断面では、沖積層はかなり深いV字形をなす谷を埋める地層であることがわかる(第13図)。この地層は大部分、灰色ないし青灰色のシルト・粘土層であり、たまに砂・礫がレンズ状に入る。都築秀徳氏の観察によると、亀甲橋付近左岸の地下五メートル(海抜約〇メートル)からカキの貝殻が産出したという。この付近の試錐のコアからも、シルト層に貝化石が混じることがわかっている。こうした沖積層の海成貝化石の産出層準でもっとも高い高度は、現海面より一ないし二メートル高い。
このように、目黒川の深い谷を埋めた沖積層は、区内では河成層ではなく、海底の堆積物である。谷が水没して生じた狭長な湾は、目黒川沿いにおよそ中目黒付近まで入り込んでいたことは、後述のように貝塚の分布からも知られるところである。