立会川低地の沖積層

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西小山・旗の台から大井一丁目までの立会川のごく浅い凹地には、目黒川とちがってごく薄い、有機物に富むシルトがたまっている。沖積層の底には、目黒川のような深い谷はみられない。試錐によると、沖積層は厚さ五メートルぐらいで、有機物に富むシルトが主体である。岩相からみると、水はけの悪い湿地の堆積物と思われる。

 いちじるしく有機物の多い沖積層は、区内ではこのほかに目黒川の支谷にいくつかみられる。たとえば、五反田駅北東の逓信病院のすぐ南の小谷谷底(いまの東五反田四丁目)には、明治後期まで泥沼があり、泥炭がたまっている。また国鉄大井工場の西の谷(もとの妙華園の付近)にも泥炭が発達している。泥炭は沼地に堆積した植物遺体からなるのでぶよぶよした、もっとも安定度に欠ける地盤をつくる。

 

 1 東木竜七(一九二八)「東京山ノ手地域に於ける侵蝕面の発達史」地理学評論 四巻 一一一~一二〇ページ。

2 貝塚爽平・戸谷洋(一九五三)「武蔵野台地東部の地形地質と周辺諸台地のTephrochronology」地学雑誌 六二巻 五九~六八ページ。

3 貝塚爽平(一九六四)『東京の自然史』東京 一八六ページ。

4 貝塚爽平(一九六一)「目黒区の自然の生いたち」目黒区史 三二~四四ページ。

5 首都圏整備委員会(一九五九)「東京湾底質図」(五万分の一)

6 東京地盤調査研究会(一九五九)『東京地盤図』

7 町田洋(一九六四) 「Tephrochronologyによる富士火山とその周辺地域の発達史」地学雑誌 七三巻 二九三~三〇八ページ 三三七~三五〇ページ。

8 小林国夫(一九六七)「黒土の堆積過程にかんする試論」ペドロジスト 一一巻 一五~二四ページ。

9 町田洋(一九六八)『富士、愛鷹、箱根火山および大磯丘陵の第四紀火山灰』日本地質学会。

10 町田洋(一九七一)「南関東のテフロクロノロジー(1)――下末吉期以降のテフラの起源および層序と年代について――」第四紀研究 一〇巻 一~二〇ページ。

11 町田洋・鈴木正男(一九七一)「火山灰の絶対年代と第四紀後期の編年――フィッション・トラック法による試み――」科学 四一巻 二六三~二七〇ページ。

12 渡辺久吉(一九一六)「品川八ツ山付近地質」地学雑誌二八巻。

――(一九一六):Geological Note on the Shinagawa Cutting, Tokyo, 地質学雑誌 二五巻 一三九~一四三ページ。

13 復興局建築部(一九二九)『東京及横浜地質調査報告』

14 徳永重康(一九〇六):Fossils from the Environs of Tokyo 東京帝大紀要理科 二一冊二篇。

15 矢部長克・半沢正四郎(一九二三):Foraminefera Faunas from the Tokyo Beds. 日本地質学地理学輯報 二巻 一〇一~一〇六ページ。

16 福田理・安藤保二(一九五一)「東京都内の地質 Ⅲ 徳丸貝層について」 自然科学と博物館 一八巻 一七九~一九四ページ。