自然の変化は自律的なものだけではない。人間と自然とのまじわりによっても急激に変化する。それは、狩猟によってある種の動物が激減したということもあろうが、農耕の開始、いいかえれば、生産を目的とした土地利用の開始とともに広域にわたって始められたといってよいであろう。初期の土地利用では草地を畑にし、湿地は水田となってきた。時代が進み、人間の数が多くなると、水田は拡張され、そのうえ、開墾により林地も畑へと変わってきた。また、灌漑のために用水路が開かれたり、水害から土地を守るために堤防を築き、河道を固定することもおこなわれ、水の流れにも大きな変化が与えられた。近世に入ると陸地を拡大するために干拓もおこなわれて、海が陸地に変わりさえした。人間が自然に与えた最初の大規模でいちじるしい変化は、草地・湿地・林地を、農林業的に利用することによっておこなわれたと考えてよいであろう。
しかし、農林業的な土地利用では、植物の栽培が目的とされるので、そこでは、太陽の光や熱、それに水や土壌などに依存し、植物の炭酸同化作用などによる成育を利用して生産がおこなわれてきた。いいかえれば自然のシステムをうまく利用して生産がおこなわれている。ところが文明の進歩や社会の発展は、人間と自然とのまじわり方をより異質な方向に進め、その変化はより速度を増すことになった。農山村では旧来とあまり変わってはいないのであろうが、都市部では全く異なった土地利用形態があらわれてきた。人工施設による地表面の占居を主体とする土地利用形態である。
この変化は地域の景観の変化にもっとも端的に現われている。いかに変わったかをみるには品川区について、明治前期の地形図と現在の地形図を較べてみればすぐわかる(第一章第一節・地図統計集参照)。