明治前期とはまったく変わってしまった現在の土地利用を、都市的土地利用とよぶことができよう。都市的土地利用と農林業的土地利用では、自然への接しかたは全く異なっている。都市的土地利用が進んだ地域(いわゆる市街地)では地表面は人工施設によって覆われている。人工施設は木や草とは異なり、自然のシステムとは関係なしに建設できるし、そのうえ都市的土地利用がおこなわれている地域では、自然のシステムに依存しないで生活と生産の活動がおこなわれている。したがって、そこでは自然のシステムも大幅に改変され、加えて自然は人工化されている。河川は改修されて直線状になっているし、かつての海は埋め立てられて陸地になり、一部には運河が残されている。地表面は鋪装され、排水溝によって降雨はたちまち流下させられる。
都市化により人間が自然に与えた変化は、単に景観的な変化だけにとどまらない。人工施設の集積や、それを利用しての生活と生産の活動により、自然のシステムを変えている。たとえば、降雨の一部は、かつては地下に滲透していたが、道路が鋪装され、排水溝が整備されれば、滲透せずに流下してしまう。涵養量以上に地下水を汲み上げれば地下水と地盤とが保ってきたバランスが崩れて地盤沈下が発生する。家庭や工場からの汚水の排水は、河川の自浄能力を越え、水を汚染し、さらに進めば河川を殺してしまう。また、水の循環を通して各種の汚染物質が拡散される。工場から出る煙や自動車の排気ガスは大気中での拡散の限度を越え、大気を汚染しスモッグを発生させる。大気の汚染は植物を枯らし人間をも冒す。これらの例のように、都市的な土地利用にともない、いままでの自然のシステムは破壊され、連鎖的な変化をともなってあらたなシステムが作り出される。そのあらたなシステムの副産物が各種の公害であり、また、発生しやすくなった自然災害である。