もう少し具体的に災害という面から考えてみよう。土地利用の変化による災害の変質は、いくつかの側面から考えることができる(2)。水害に例をとると、未利用の土地が冠水しても被害は発生しない。土地利用が始まり、人間の財産や生命などが、そこに存在するときに被害が発生する。また、農林業的に利用されている場合には、農作物などの被害が主であるが、市街化が進み農地が宅地となれば、家屋の流失や人命の損傷などという新しい形態の被害が発生する。このように被害を受ける主体である人間側の条件の変化がまずあげられる。
もうひとつ無視できない側面は、前述したように土地の利用の仕方が変わると土地の持つ性質が変わるので、災害の発生のしかたや、発生のしやすさ、発生する場所などが変わることである。上流側で蛇行している河川を直線状に改修すれば、それだけ排水条件がよくなるので、そこでの水害は減少する。しかし、より下流側が未改修であれば、それだけ多くの水が一時に流下することになり、下流側ではより水害の危険性が大きくなることなどはその例である。
また、重要なことは、土地の持つ性質のなかには、人間が変ええない部分もあることである。たとえば、水は高い所から低い所に流れるので、おのずから水害の発生が予想される地域は、いつの時代にもほぼ限られている。このような特性は、各地域の土地に最初から内在するものである。そして、その特性は、人間の土地利用の仕方のまずさや、自然の人工化にともなう変化などにより災害という形で顕在化される。
以下の節では土地の持つ性質を水害や崖崩れを通して考察し、自然と人間とのまじわりを追うことにする。