このような特性の一部を確かめるために、昭和四十五年二月四日から五日にかけて、気温の移動観測を行なった。観測は四日の午後九時と五日の午前五時および午後二時を基準として三回おこなった。
夜間におこなった二回の観測では、東五反田・旗の台・西大井の各地区で気温が低く、海岸の埋立地上を通る道路沿いの地区、大井町駅周辺部、西五反田から大崎にかけての地区が高温であった。五日の午後二時の観測では、目黒川左岸の南西向き斜面に位置する東五反田をはじめ、南向きの斜面では高温となっていた。また埋立地の道路沿いの地域は夜間と同様に非常に明瞭な高温域であった。高温域と低温域の気温差は、いずれの場合も摂氏一・〇ないし一・五度であった。
三回の観測だけでははっきりとした結論は出せないが、夜間には海岸低地と大井町駅周辺が高温域となり、区縁辺の住宅地が低温域になることは指摘できそうである。高温域の発生は人工的熱源の一種である自動車の排気ガス量が多いこと、ならびに、コンクリート造りなどの建造物の密度が高いことなどが原因であろう。低温域の発生は家屋が密集していない住宅地であることが原因と考えられる。また、昼間には、南向き斜面と北向き斜面で気温に差があること、冬期のせいもあるが、自動車の排気ガスなどの人工的な熱源の影響も大きいことなどが確かめられた。
注 1 Maejima, I.(1967):Natural Seasons and Weather Singularities in Japan, Geogr. Rept. Tokyo Metropolitan Univ., p. 77~103.
2 なお、資料は降水量・気温とも東京管区気象台発行の東京都気象月報および東京都気象年報を使用した。