地下水の水質

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都市では、浅井戸の地下水の水質は、地表における人間活動によって影響されている。当区内の浅井戸は、光福寺の「大井」をはじめとして、古井戸が多いが、市街地化がすすんだため人為的汚染をうけて次項に記すように、各水質項目すべてにわたって高濃度をしめし、大部分が飲用に不適である。汚染の程度は、国鉄東海道線以東の海岸部、目黒台の大井三丁目~七丁目近辺で顕著であり、南品川の目黒川沿いの沖積地では、地下水位の低下にともなう海水の地下水への浸入もみられる。

 Ph・RPh   台地上ではおおむね六・〇~七・〇のPh値がしめされ、中性から弱酸性を呈するが、海岸部の沖積地では七・〇以上をしめして、中性から弱アルカリ性を呈する。RPhも同様にして、台地では海岸低地よりも〇・三~〇・四ほど低い値をしめす。

 電気伝導度   この地域の地下水は溶存成分がかなり多く、摂氏一八度に換算して、ほとんどのものは、おおよそ200~500×10-6ohm-1・cm-1をしめし、ローム層中の地下水としてはやゝ高い値である。台地と海岸低地との相違は顕著ではない。なお、目黒川の南側の沖積地の井戸で、昭和四十五年には2200×10-6ohm-1・cm-1、昭和四十七年は8589×10-6ohm-1・cm-1もの高い値をしめすものもあった。

 塩素イオン   海岸低地帯で二五~三五PPmをふくむが、台地上では三〇~六〇PPmとやゝ高濃度をしめす。とくに立会川中流部の二葉および中延地区と、大井三丁目~七丁目では濃度が高い。なお電気伝導度の異常に高い前述の井戸では、塩素イオン濃度も二八〇PPmと高い値をしめしている。この井戸は、地下水位も昭和四十五年はマイナス〇・五メートル、昭和四十七年の調査ではマイナス一・一メートルと海面下であったことから、海水によって帯水層が汚染されているものと考えられる。

 硫酸イオン   海岸低地帯で五五~一一〇PPmとかなり高濃度を呈するが、台地では三〇~七〇PPmとやゝ低い値をしめして、塩素イオン濃度とは逆の傾向をもって分布している。立会川周辺の中延および旗の台地区には、一五PPm以下の低濃度の井戸もある。

 硬度   海岸低地帯で一〇〇~二四〇PPm、台地上では八〇~一四〇PPmをしめして、他の水質項目と同様に大井三丁目~七丁目のあたりで高い値をしめす。EDTA硬度と硫酸イオンの間には相関がみられる。

 アンモニア性窒素   アンモニア性窒素は地下水への人為的な汚染を調べる指標として重要であるが、当区内では海岸地帯で〇・二~一・〇PPmという高濃度をしめし、飲用水源としての水質基準をかなり上回るが、台地上では局地的な汚染箇所をのぞいて、おおむね〇・一~〇・四PPmの範囲内にある。

 鉄イオン   鉄イオンの分布については地域的な特色はみられず、おおむね三~一〇PPmをしめす。海岸部では水面の深さが一〇メートルを越えると次第に濃度が濃くなる。

 以上は電気伝導度の一部をのぞけば、昭和四十七年の調査についてまとめたものであるが、昭和四十五年に実施した調査結果と比較した場合、昭和四十七年の冬の雨量が例外的に多かったため、水質は一部をのぞいて回復している。しかし、硫酸イオンの濃度が他の項目と逆に増加の傾向にあることは注目に値いする。