湧泉

112 ~ 114

かつて区内には、台地の崖の中途や、台地をきざむ谷の谷頭部、および台地の崖下の沖積地などには、多数の湧泉がみられたと思われる。大正期の地図には、湧泉と関係すると思われる池が多数記入されている。しかし、現在は市街地化がすすみ、池は埋められ、崖もコンクリートなどで覆われた部分がふえ、確認できる湧泉の数も少なくなってきている。

 今回は計五ヵ所(うち一カ所は目黒区の目黒不動に湧くもの)の湧泉について調査をおこなった。湧水点は目黒台地上の戸越資料館の池に湧くものをのぞいたほかは、目黒川の右岸と左岸に二つづつあり、いずれも台地の崖の中途に湧くもので、地層水崖泉とよばれるものである。これらの湧泉は右岸の目黒台および左岸の高輪台の御殿山台地に湧くものは武蔵野砂礫層に、左岸の高輪台の他の一つは東京層に帯水していた地下水が湧出しているものである。帯水のための条件は、前者のほうが後者よりもよいため、湧水量も前者のほうが多い。

 戸越資料館の池の湧泉は、台地をきざむ浅い谷の谷頭部より、関東ローム層および武蔵野砂礫層中の地下水が湧出しているものである。