深井戸

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今回、主として調査の対象となった手掘りの井戸のほかに、区内にはボーリングによって掘られた井戸が多数存在する。厚生省・通商産業省・建設省による『昭和四十五年度東京都地下水実態調査報告書』によれば、工場用(ただし、従業員三〇人以上のもの)、および建物用(暖房用・冷房用・洗車用・水洗便所用・公衆浴場用、その他工業用および水道用以外の用途に使用するもの)として、二一三本の井戸(うち工場用九八本、建築物用一一五本)使用されており、揚水量は一日あたり約一万二七〇〇立方メートルに達する。より小さな工場や、個人で所有するものを加えれば、井戸の数、揚水量ともさらに増加するが、現在のところそのようなものについて調査した資料はない。この報告書によって、深度別に使用されている井戸数と、揚水量をまとめたのが第6表である。深度が五〇メートル以上に達するものは五九本で、全体の三分の一にも達しないが、これらの井戸からの揚水量は、一日あたり約八、七〇〇立方メートルと全体の七割ちかくにもおよび、五〇メートル以深のほうが、一本あたりの揚水量は多い。これらの井戸の利用数をさく井年次別にしめしたのが第24図である。井戸数は昭和三十年ごろより、経済の高度成長・技術革新等を背景に、多量の地下水を使用する工場や建築物がふえるにしたがって急増する。しかも五〇メートルをこす深い井戸の増加がめだつ。

第6表 昭和45年度品川区深度別井戸利用実態(工場用および建築物用)
深度 50m未満 50m~100m 100m~150m 150m~200m 200m~250m 250m以上 合計
井戸数 154 30 19 7 2 1 213本
揚水量 4020 2167 3604 2746 150 5 12692m3/-

 


第24図 昭和45年に利用している井戸が鑿井された年次とその数

 当区での井戸一本あたりの揚水量は、一日約六〇立方メートルと、東京都の平均値(上水道用・専用水道用もふくむ)が一日約二五〇立方メートルであるのにくらべ、はるかに少ない。これは、当区では泥岩を主体とした三浦層群が地表より約二〇~五〇メートルと比較的浅いところに存在するため、深いところの地下水を得るための条件があまりよくないからである。