考古学においては、人類が製作し利器として使用した道具の原材の相違にもとづく時代区分がおこなわれている。それは石器時代→青銅器時代→鉄器時代と変遷しているという三時期法であって、石器時代はさらにそれの展開した時間より、洪積世の旧石器時代と沖積世(ちうせきせい)の新石器時代に大別され、一部においてはその間に中石器時代を挿入する傾向もある。
日本においては、岩宿遺跡の発見以降、土器を伴わぬ文化という観点より〝無土器時代(文化)〟、次階梯の縄文時代以前の文化という視角より〝前(先)縄文文化(時代)〟とよばれてきたが、現在においては、三時期法に立脚して旧石器時代(文化)〟と表現される動きがある。しかし、一方においては、わが国発見の土器を伴わぬ文化のすべてが洪積世に展開したものであるという確証が、まだ必ずしも充分ではない、との立場より、〝先土器時代(文化)〟とすべきであるという主張がある。
また、先史・原史・歴(有)史時代との区分論もある。この時代区分は、文献の存否と多少を基本にしてとくに文献史学者によって慣用されているもので、縄文時代以前を先史、弥生・古墳時代を原史、それ以降を歴(有)史とよんでいる。
さらに原始時代という用語もある。〝原始〟は、本来、〝文明〟と対照される概念であるが、原始時代の概念は、現在、文献史学の立場においては、弥生時代以前を慣用的に概括しているかのようである。
本書においては、原始時代の概念を一応弥生時代以前とし、時代区分は、日本考古学の慣用語である先土器時代→縄文時代→弥生時代とし、古墳時代を大化前代、それ以降を律令時代とすることにした。