縄文文化の起源をめぐる問題については、現在対立する二つの見解がある。その第一の見解は、縄文土器の出現が約一万年以前に認められるとする考え方であり、その二は、約五千年以前に縄文土器が現われたとする考え方である。この対照的な二つの見解は、それぞれ提案の根拠があるが、前説は、放射性炭素C14による年代測定の結果にもとづき、後説は、その測定値に疑問をいだき、大陸における文化の状態を念頭に入れて、それと対比検討することによって導き出された考え方である。
この二つの考え方は、さきの先土器時代を把握する考え方とも密接に関係し、前説が、先土器時代の大部分を洪積世に展開した文化、すなわち旧石器文化に相当させているのに対して、後説は、先土器文化のごく一部を除いては沖積世の文化、すなわち新石器時代に展開した文化として把握している。かかる対立する意見は、現在のところ、まだそのいずれが妥当性ある見解であるか、充分に論議が重ねられていないが、C14の測定値に疑問を有しながらも、前説に近い考え方を支持する研究者が多くなってきている。