放射性炭素による年代の測定

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石器・土器などの形態学的・層位学的研究による考古学の年代編成は、その資料の性格よりして相対年代が確定されるが、比較検討する対比文化に文献資料が認められぬときは、あくまでその年代は推定の域に止まらざるをえない。この欠を補う方法が、自然科学の発達によって開発され、考古学分野に多くの新知見をもたらしてきている。放射性炭素による年代の測定もその一つである。この方法は、近年アメリカにおいて開発されたもので現在多くの資料に対して測定が試みられている。これは空気中に存在する炭酸ガスの構成元素の一つである放射性炭素(C14)の含有量の測定によるものである。生物の死後、生前に蓄積されたC14は一定の速度をもって崩壊していく。その速度は死後五、五七〇年を経て半減し、さらにその後も一定速度で崩壊を続ける。そこで遺跡より出土した生物遺存体に見られるC14の残存数値を逆算することによって、死時の年代が測定されることになる。ただこの方法は、前提仮説が充分に証明されていないことによって問題があり、その測定値について疑義が生じている。

第8表 縄文土器の編年(山内清男氏)
推定年代 型式
(関東地方)
中国文化
C.2500 B.C. 草創期
Jomon Ⅰ
大谷寺 1 隆線文 彩陶
2 浅縄紋
3 斜縄紋
井草・大丸
夏島
稲荷台
花輪台・大浦山
C.2100 B.C. 早期
Jomon Ⅱ
普門寺式等稀縄文型式群 黒陶
三戸式
田戸式 1,2
子母口式
茅山式 1,2,3,4
C.1700 B.C. 前期
Jomon Ⅲ
花積下層式 原史時代
関山式
黒浜式
諸磯式 a,b,c
十三菩提
C.1300 B.C. 中期
Jomon Ⅳ
五領台
阿玉台・勝坂
加曽利E 1,2,3,4
C.900 B.C. 後期
Jomon Ⅴ
称名寺
堀之内 1,2
加曽利B 1,2,3
曽谷
安行 1,2
C.500 B.C. 晩期
Jomon Ⅵ
安行3 a,b,c,d 戦国
手綱/荒海
荒海/女方
C.100 B.C.

 

 この外、カリウム=アルゴン法・フィッション=トラック法・熱残留磁気法など多くの年代測定法が開発され、現在、実験が重ねられているので、近い将来、考古学的資料に絶対年代があたえられることになるであろう。